著者
木村 栄一 斧田 太公望 宮原 光夫 金沢 知博 新谷 博一 水野 康 早瀬 正二 高安 正夫 戸山 靖一 木村 登 奥村 英正
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.347-358, 1974

新しく開発された抗不整脈薬prajmalium(propylajmaline)の経口投与による効果を,群問比較による二重盲検法を用いてajmalineおよびinactiveplacebo のそれと比較した.1分間数個以上の期外収縮を有する78例に上記薬剤を1週間投与し,来院時における期外収縮数の減少度を目標として,3薬間の比較を行なったが,有意の差はえられなかった.しかし分析の結果,1分間10個以上の期外収縮を有する例を対象とするならば,prajmaliumがajmalineおよびinactiveplaceboより有効だという成績がえられるであろうとの推定がなされた.一方,主治医の評価による総合判断を用いた時には,3群間に有意の差のあること,さらにprajごnaliumがi捻activeplac¢boより有意の差をもってすぐれていることが知られた.また多変量解析により分析を行なうに,期外収縮数の消艮,心拍不整感およびめまいが主治医の総合判断に強く影響していることが知られた.なお,本剤は発作性心頻拍や発作性心房細動の予防にも有効であることが期待されるが,症例数が少ないため参考データとするに止めた.本剤の副作用として最も重大なのは肝機能障害の発生であるが,分析の結果,心胸比の大きな例でS-GOTの上昇をきたしやすいことがわかった,したがって心臓の大きなもの,始めからS-GOTや3GPTの高いものには,投薬にさいし注意することが必要である.
著者
大久保 正 阿部 忠昭 栗林 良正 佐藤 護 贄田 茂雄 高橋 昌規 金沢 知博 田沢 勝雄
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.73-78, 1976-01-31 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

肺動脈狭窄症状を示した29歳男子の右心室粘液腫の一治験例を報告するとともに文献的考察を加えた.患者は運動時呼吸困難を主訴とし,第2肋間胸骨左縁に3/6度程度の収縮期駆出性雑音を聴取したが,体位により変動するのが特徴的であった。心カテーテル検査では肺動脈一右室聞に85m磁H墓の収縮期圧較差を認め,右室造影で右室流出路から肺動脈主幹部にかけての陰影欠損を認めたため右心室内腫瘍と診断し,腫瘍摘出術を施行した.右心室内粘液腫は現在まで本症例を含めて15例の報告がみられる。腫瘍摘出術を受けた11例中9例は術後全く良好だった一方,肺動脈閉塞による突然死も報告されており早期手術が望ましい.