著者
茂木 伸之 鈴木 一弥 山本 崇之 岸 一晃 浅田 晴之
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.94, no.2, pp.27-38, 2018 (Released:2019-12-10)
参考文献数
21

近年,長時間の座位姿勢の継続による健康リスク対策として,立位姿勢で作業を挿入する方法(sit-stand workstation)が提案されている。本研究は立位姿勢を挿入する適切な時間範囲を導くために,2時間のコンピュータ(文章入力)作業を(1)10分立位と50分座位の繰り返し,(2)40分立位と20分座位の繰り返し,(3)座位条件で比較した。測定項目は下腿周囲長,主観的疲労感,身体違和感,反応時間課題であった。その結果,10分立位条件は有効であった。一方,40分の立位姿勢の継続は下肢の負担が生じる条件となった。立位姿勢の適切な挿入時間は10分から30分になった。作業パフォーマンスは男性の10分立位条件の姿勢転換後にリフレッシュ効果が示唆された。(図6 表1)
著者
鈴木 一弥 吉川 徹 高橋 正也
出版者
独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.23-35, 2022-02-28 (Released:2022-02-28)
参考文献数
52

目的:過労死等の防止のために職場で行う自主的・組織的対策を支援する方法あるいはツールを検討するための文献・資料調査を実施する.調査結果に基づいて既存の成果と今後の課題を整理する.方法:長時間労働による心身の健康障害の予防のためにこれまでに開発されたツールの事例(対策支援のチ ェックリスト, ガイドライン等)を学術文献データベース(MEDLINE,PubMed,JMEDPlus)の検索で収集し た.検索キーワードはツール等を示す用語(チェックリスト,ガイドライン,マネジメントシステム,ツールキ ット)と労働時間との論理積とした.2000~2019年の英語および日本語の学術論文を対象とした.公的または 公益的機関が提供しているツールに関して,インターネットによる探索的な検索も実施した.結果:学術文献データベースで72件(英文)および67件(日本語)がヒットした.タイトルと抄録の内容 により,対策を支援するツールの開発・提案や言及がなされた文献を選択した結果,労働時間の長い労働者に対する面接指導の実施を定めた「総合対策」への組織的な対応方法を改善するアクションチェックリストの開発が 1編,面接指導を支援する実務的ツールに関する研究が2編,交代勤務に関するチェックリストの開発が1編,航空安全を主目的としたFRMS(Fatigue risk management system)に関する研究が2編あった.インターネットの 検索の結果では,省庁と公益的な組織によって,いくつかの特定の業種・職種を対象としたツールの公開があった.医療労働のコンプライアンス支援ツール,交代制勤務に関するガイドライン,職場環境の自主的改善を支援するアクションチェックリスト,運送業における業務の内容や建設業における商慣行の改善のためのガイドライン,医療と運送業の対策好事例の提供等があった.交代勤務に関するガイドラインは,その予防的・包括的な内 容が特に参考になると思われたので,4種のガイドラインの内容を整理して表に示した.収集されたすべてのツ ールを,包括性,直接の使用者,改善の対象,介入の方法等に基づいて分類した.考察:長時間労働にかかわる自主的な取り組みを支援するツールの開発は現状では少数であった.組織体制の改善,参加型の人間工学的改善の支援,ストレスに関わる心理社会的要因の改善,職種・業種に特有の業務の改善を支援するものがあり,それぞれに特徴があった.過労死等を予防する包括的な対策ツールの要件に関する参考資料の収集ができた.
著者
小山 秀紀 鈴木 一弥 茂木 伸之 斉藤 進 酒井 一博
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.95, no.2, pp.56-67, 2019 (Released:2020-04-10)
参考文献数
33

本研究では昼寝を想定した椅子での短時間仮眠が睡眠の質,パフォーマンス,眠気に及ぼす影響を調べた。仮眠は昼食後の20分間とし,ベッドでの仮眠を比較対照とした。測定項目は睡眠ポリグラフ,パフォーマンス(選択反応課題,論理課題),精神的作業負担とした。分析対象は夜間睡眠統制に成功した6名(20.8 ± 1.6歳)であった。ベッド条件に比べ,椅子条件では中途覚醒数が有意に多く(p < 0.05),徐波睡眠が少ない傾向にあった。両条件で仮眠後に眠気スコアは有意に低下した(p < 0.001)。パフォーマンスは条件間で有意差はなかった。昼寝椅子における短時間仮眠は睡眠が深くなりにくく,ベッドとほぼ同様の眠気の軽減効果が得られることが示された。(図5,表8)
著者
鈴木 一弥 落合 信寿 茂木 伸之 山本 崇之 岸 一晃 浅田 晴之
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.117-129, 2014 (Released:2016-03-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

高さが可変できるデスクを使用した立位の挿入がデスクの作業者の下腿周径,主観的疲労感,作業パフォーマンスに及ぼす影響を検討した。12名(男性6名,女性6名)の被検者が実験に参加した。2時間のパソコン作業(文章転写)を(1)座位条件,(2)20分間の立位と40分間の座位の繰り返し(転換条件),(3)立位条件,の3条件で実施した。左足の下腿周径,主観的疲労感,身体違和感,反応時間課題が作業開始前,作業開始後20分,60分,80分,120分に測定された。左足・足首および膝・下腿の違和感は立位と比較して座位および転換条件で有意に低下した。臀部の違和感は座位条件と比較して立位および転換で低下した。眠気の平均評定値は,座位>転換の傾向差を示した。下腿周径は,座位と比較して転換条件で有意に低下した。(図8)
著者
小山 秀紀 鈴木 一弥 茂木 伸之 斉藤 進 酒井 一博
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.95, no.2, pp.56-67, 2019

<p>本研究では昼寝を想定した椅子での短時間仮眠が睡眠の質,パフォーマンス,眠気に及ぼす影響を調べた。仮眠は昼食後の20分間とし,ベッドでの仮眠を比較対照とした。測定項目は睡眠ポリグラフ,パフォーマンス(選択反応課題,論理課題),精神的作業負担とした。分析対象は夜間睡眠統制に成功した6名(20.8 ± 1.6歳)であった。ベッド条件に比べ,椅子条件では中途覚醒数が有意に多く(p < 0.05),徐波睡眠が少ない傾向にあった。両条件で仮眠後に眠気スコアは有意に低下した(p < 0.001)。パフォーマンスは条件間で有意差はなかった。昼寝椅子における短時間仮眠は睡眠が深くなりにくく,ベッドとほぼ同様の眠気の軽減効果が得られることが示された。(図5,表8)</p>
著者
小山 秀紀 鈴木 一弥 茂木 伸之 酒井 一博
出版者
公益財団法人大原記念労働科学研究所
雑誌
労働科学 (ISSN:0022443X)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.49-70, 2012 (Released:2013-11-25)
参考文献数
9

中小運送会社の異なるパターンの運行5事例(4泊5日運行,3泊4日運行,1泊2運行,日勤)と大手運送会社の2泊3日運行3事例について,調査者がトラック助手席に添乗して,疲労や眠気の主観評定,ビデオ画像,活動量および生理反応(心拍数,眼電図)の記録を実施した。中小の長距離輸送では,長時間運転,短時間睡眠,眠気が強くなるまで少しでも走り続けて睡眠を分割して取得するパターンが多かった。大手では,夜間走行-昼間睡眠という同一のパターンでの定期的な運行であった。全事例で車内のベッドやシートで睡眠が取得されていた。運送事業主と荷主との協力関係,休息期間を確保できる運行計画,長時間運転と休憩不足の回避,トラックキャビンでの睡眠への配慮,高速道路や付随する休憩・宿泊施設の充実などの多方面における改善が必要とされていることが示された。(表3,図12)