著者
鈴木 康裕 中田 由夫 清水 如代 田邉 裕基 新井 良輔 羽田 康司
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.38-46, 2019-03-31 (Released:2019-06-14)
参考文献数
25
被引用文献数
2

目的:本研究は,ボートレーサーの競技成績(勝率)をアウトカムとし,年齢,性別,体重および動的バランス能力との関連性を横断的に検討することを目的とした。方法:研究対象者は日本モーターボート選手会に所属する137名のボートレーサー(年齢24~69歳,平均40.2±8.2歳,BMI 19.5±1.0 kg/m2)である。2016年5月~2017年4月に行われたレース結果の勝率をアウトカムとした。2016年6~10月に動的バランス能力の指標として,閉眼片脚立位時間と重心動揺計を用いた姿勢安定度(modified index of postural stability; mIPS)を評価した。勝率と年齢,性別,体重および動的バランス能力との関連については,強制投入法による重回帰分析を行った。結果:重回帰分析の結果,勝率は体重およびmIPSと有意に関連していた(p < 0.001)。一方,年齢,性別,閉眼片脚立位時間については,関連因子としての有意性は認められなかった。結論:ボートレーサーの競技成績は,年齢,性別,閉眼片脚立位時間とは関連せず,体重と動的バランス能力と関連することが示唆された。
著者
鈴木 康裕 田島 敬之 村上 史明 高野 大 亀沢 和史 青木 航大 羽田 康司
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.57-69, 2021-03-31 (Released:2021-05-09)
参考文献数
25

目的:本研究の目的は,男性勤労者を対象に我々の作成したボード・ゲーム教材を用いた介入を行うことで,身体活動量が増加するかどうか,また介入終了後に維持されるかどうかについて予備的に検討することである。方法:筑波大学芸術系と共同開発した本教材は,プレーヤーが身体活動量を増やすことで有利に進めることができる。本研究の対象者は,地域の大学および大学附属病院にて勤務する男性職員11名[年齢24~48歳,中央値(四分位範囲)34.0(33.5,39.5)歳]であった。介入期間は6週間,全4回(1回/2週間,30分間/1回)のゲームを行った。介入開始前に2週間,介入終了後に12週間を設定し,最初の2週間をベースライン期間,介入終了後の12週間を介入効果の持越し観察期間とした。対象者は,介入群と対照群の2群に無作為に割り付けた。対照群は日常生活における身体活動量の増減をゲームのインセンティブとして与えなかった。身体活動量は対象者全員に3軸型加速度計を配布し測定を行った。結果:中高強度活動時間(中央値)の群間比較において,介入期間中の変化量は,対照群+0.2分/日に対し介入群+1.6分/日であった。経時的変化については,ベースライン期間と比べた介入12週間後の変化率は,介入群+48%,対照群+10%であった。結論:男性勤労者の身体活動量は,我々の作成した教材を用いた介入を行うことで増加し,また介入後も中期的に維持される可能性がある。
著者
岩渕 慎也 鈴木 康裕 加藤 秀典 田邉 裕基 遠藤 悠介 石川 公久 羽田 康司
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11206, (Released:2017-02-06)
参考文献数
25
被引用文献数
4

【目的】姿勢安定度評価指標(index of postural stability:以下,IPS),修正IPS(modified index of postural stability:以下,MIPS)を測定し,MIPS,MIPS/IPS の再現性,MIPS の有用性を検討すること。【方法】若年健常者80 名を対象にMIPS,MIPS/IPS の再現性を系統誤差,偶然誤差より検討した。MIPS の有用性はShapiro-Wilk 検定にて閉眼片脚立位検査との比較を行った。【結果】再現性についてMIPS,MIPS/IPS は加算誤差を認めた。MIPS,MIPS/IPS のICC(1.1)は0.725,0.616 であった。また,有用性についてMIPS はp = 0.859 であり,有意に正規分布にしたがう結果となった。【考察】MIPS は臨床応用可能な評価指標であり,幅広い対象者の動的バランス評価に有効な手段であると考える。
著者
丸山 剛 鈴木 康裕 石川 公久 江口 清 正田 純一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Db0578, 2012 (Released:2012-08-10)

【目的】 近年、肥満や運動不足に伴い非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が増加しており肝硬変から肝細胞がんへと進展し得ることが指摘されている。NAFLDに対する有効治療のひとつとして運動療法の効果はすでに実証されているが随意収縮と電気刺激を組み合わせたハイブリッド訓練法による治療効果も報告されている。治療効果の検証としてインスリン抵抗性(HOMA-R)の改善が肝機能の改善にもつながりえることが明らかになっている。一方、インスリン分泌能(HOMA-β)を指標とした検証はあまりみられていない。本研究の目的はNAFLD患者を対象としたハイブリッド訓練法の介入をHOMA-βを指標として検証することである。【方法】 対象は当院消化器内科に通院するNAFLD患者の中から空腹時血糖値130mg/dl以下で就労していない患者6名(男性1名、女性5名)、BMI 28.7±1.9、平均年齢59.3±10.3歳、HbA1c6.07±0.89である。電気刺激装置はハイブリッド訓練器(アクティブリンク株式会社)を使用し、両大腿前後面に各2枚電極を貼付し椅子座位で膝関節屈伸運動を実施。通電時間は1分間で拮抗筋に電気刺激を与え膝関節屈伸運動を休憩することなく15回(伸展2秒、屈曲2秒)、セット間の休憩は1分とする。一側ずつ3セットごとに左右交代し左右各6セット、計23分の訓練を週2回の頻度で計30回(15週間)の訓練を行った。電気刺激強度は耐えうる限りの最大電圧(訓練器最大電位50V)とした。評価項目はBIODEX system3(酒井医療株式会社製)で膝関節60度屈曲位での5秒間の最大等尺性筋力:最大トルク平均/体重(%)で大腿四頭筋、ハムストリングスそれぞれ左右の平均を採用。血液生化学検査はAST、ALT、HOMA-R:空腹時インスリン値×空腹時血糖値/405、HOMA-β:空腹時インスリン値×360/(空腹時血糖値-63)、HbA1cの5項目とし運動介入前後で比較を行った。介入前後の比較にはWilcoxonの符号付順位検定を用い、また有意差を認めた項目に関してはHOMA-βを従属変数とし各パラメータとの単相関をSpearmanの順位相関係数を用いて統計解析を行った。使用統計ソフトはSPSS(ver19)を用い、すべての統計的有意判定基準は5%未満とした。【説明と同意】 充分なインフォームド・コンセントを施行し文章にて同意が得られた症例のみを本研究の検討対象とする。【結果】 介入前後において生化学はAST(57.3±16.1vs 42.0±8.5,p<0.027)、ALT(64.2±21.7vs47.0±16.5,p<0.028)、HOMA-R(4.12 ±1.12vs3.15±0.69,p<0.046)、HOMA-β(120.71±43.08vs96.81±29.26,p<0.046)でいずれも有意に低下を認めた。HbA1cに関しては有意な差は認めなかった。一方、下肢筋力は大腿四頭筋(159.3±50.8vs186.4±55.5,p<0.028)は有意な改善を認めたがハムストリングスでは有意な差を認めなかった。またHOMA-βとALTの変化率の間には有意な相関(r=0.829、p=0.042)を認めた。【考察】 今回のハイブリッド訓練法の介入により肝機能(AST、ALT)、HOMA-R、HOMA-βにおいて有意な減少、大腿四頭筋で有意な改善が認められた。このことはハイブリッド訓練法による筋力トレーニングが有酸素運動で得られる効果と同等の効果が得られたものと考え、結果的にインスリン感受性が改善したことでインスリン分泌、すなわちHOMA-βの抑制が図られたと考えられた。また、HOMA-βとALTの変化率の間には有意に相関があることでインスリン分泌量が脂肪肝に影響を与えることが示唆された。一方、糖代謝の改善がみられるのにもかかわらずHbA1cに変化がみられなかったことに関しては、HOMA-R、HOMA-βの改善では食後血糖上昇に影響を与えず耐糖能の効果に対する限界を示唆するものであった。【理学療法学研究としての意義】 NAFLDに対する運動療法はジョギング・水中運動といった有酸素運動が代表的であるが肥満による関節負荷や運動時間を考えると長期的かつ継続的に行うには努力を要す。今回のハイブリッド訓練法では有酸素運動で得られる効果を座位で得られ、運動時間・頻度についての検討が必要と思われるが予防・改善の観点で有効な運動療法として有用である可能性が考えられる。
著者
鈴木 康裕 清水 如代 岩渕 慎也 遠藤 悠介 田邉 裕基 加藤 秀典 羽田 康司
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】バランス能力の定義は,静的と動的に大別できるが,アスリートの競技パフォーマンスと関連するのは,動的バランスと考えられている。我々は,重心動揺計を用いた姿勢安定度評価指標(以下IPS),その修正版である修正IPS(以下MIPS),また片脚立ちを,動的バランスと定義しているが,MIPSの測定方法である閉眼および軟面上立位で行う2重課題に注目している。MIPSは視覚および感覚の負荷が同時にかかる難度の高いバランス検査であり,より高度なバランス能力を要求されるアスリートに適合する可能性がある。我々は,MIPSを含めた複数の動的バランス能力の評価指標を用いて,健常者を対照とし,様々な競技群との比較を行うことで,競技毎のバランス特性が明らかになるものと考えた。</p><p></p><p>【方法】動的バランス評価として,IPS,MIPSを測定し,また閉眼片脚立ち検査を行った。身体機能評価として,体性感覚は,振動覚,二点識別覚,足底触圧覚,下肢筋力は,膝伸展筋力,膝伸展筋持久力,足関節背屈筋力,足趾筋力を測定し,また体組成は,体脂肪量および除脂肪量を算出した。バランス特性を検討するため,IPS,MIPS,閉眼片脚立ちについて,10名以上の被検者が確保できた競技群と健常者による対照群との比較を,対応のないt検定を用いて行った。またMIPSとの関連要因を検討するため,欠損データのない対象競技者において,MIPSと各身体機能をPearsonの積率相関関係を用いて相関関係の検討を行った。使用統計ソフトはSPSS(ver21)を用い,全ての統計有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p>【結果】対象は179名(男性119名,女性60名),平均年齢は20.7±2.2歳(19~29歳)であった。対象となった競技は,全11種目(154名)であったが,対照群(25名)と比較を行ったのは,5種目の競技群(水泳33名,野球27名,競艇26名,サッカー30名,体操15名)であった。対照群と各競技群の動的バランス評価を比較した結果,IPSは全ての競技群において有意に優れておらず,MIPSは競艇群(p<0.05)および体操群(p<0.01)が優れ,水泳群が劣っていた(p<0.01)。閉眼片脚立ちは,サッカー群および体操群が優れていた(p<0.05)。すなわちMIPSおよび閉眼片脚立ちの双方が優れていたのは体操群のみであった。全11種目の対象者に,MIPSとの関連要因の検討を行った結果,身長,体重,足底触圧覚,足関節背屈筋力に有意な関連性が認められた。</p><p></p><p>【結論】健常者を対照とし,各競技群との動的バランス評価の比較を行った結果,競艇・水泳・サッカー・体操・野球のバランス特性が明らかとなった。</p>
著者
鈴木 康裕 田邉 裕基 船越 香苗 塩見 耕平 石川 公久 江口 清
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】バランスとは支持基底面内に重心を投影するために必要な平衡にかかわる機能がその重要な要素の一つと考えられており,定量的なバランス能力や姿勢の安定性の評価には重心(足圧中心)動揺計を用いた測定(以下重心動揺検査)が多用されている。望月らは重心動揺検査を用いた評価として,身体の揺らぎの程度を表す重心動揺の大きさ,および一定の支持基底面内で重心線を随意的に動かせる程度である安定域の大きさの2つの変数に着目し姿勢安定度評価指標(Index of Postural Stability:以下IPS)を考案しその有用性を提唱している。IPSは,重心動揺測定値を多角的に組み合わせることで,より臨床的なバランス能力の評価といえる。一方IPSは,評価自体の難易度は高くなく広い対象者に行える長所はあるが,潜在的な軽度のバランス不良の抽出には難しい側面もある。そこで我々は,従来から用いられているIPSに加え閉眼および軟面での立位環境面からもバランスタスクをかけ,難易度を上げた筑波大式修正IPS(以下修正IPS)を考案した。本研究の目的は,修正IPSの信頼性を確認し,またその有用性を従来から用いられているIPSとの比較を行うことで検討することである。【方法】対象は健常者52名(男性29名,女性23名,年齢26.6±5.9歳),測定には重心動揺計(アニマ社製グラビコーダGS-10)およびバランスパッド・エリート(エアレックス社製:横47cm×縦38cm,厚さ6cm:以下軟面)を用いて行った。本研究の一連の検査手順を被験者に対して,以下の通り行った。①両側でそれぞれ閉眼片足立ち検査を2回実施し,長い時間を代表値とする。②十分な休息を与えた後に,通常の重心動揺計の検査台上にて,IPSを行う。③一度検査台から降ろし,検査台上に軟面をセットする。被検者に十分な休息を与えた後に,検査台上の軟面上にて閉眼・直立させ修正IPSを行う。それぞれの計測は初回1回のみとする。④日時を変え,①②③同様の検査を実施する。閉眼片足立ち検査を行うことで,どちらか片側が10秒未満である場合をバランス不良とし,それ以外をバランス非不良と定義し,2群に分類した。IPSは,望月による報告に則り実施した。修正IPSの測定方法については,望月による報告に準じて実施した。通常の重心動揺検査の検査台の上に軟面を敷き,被検者の立ち位置については,足底内側を平行に10cm離した軽度開脚立位の足位とした。被検者には測定内容を説明し,測定台上で前後・左右への重心移動を行わせ,足底の要領を得た後に測定を開始した。統計解析は,修正IPSの信頼性について級内相関係数ICC(1.1)を用いて算出した。また修正IPSの有用性を確認するため,バランス非不良群と不良群をIPSおよび修正IPSの2指標にてMann-Whitney U検定を用いて比較を行い,検討を行った。同様に両群の属性についても検定を用いて比較を行った。使用統計ソフトはSPSS(ver21)を用い,全ての統計的有意判定基準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】対象者には,研究の内容と目的を説明し,同意を得た後に測定を実施した。【結果】修正IPSの測定値は1回目0.77±0.38,2回目0.84±0.17であり,ICC(1.1)は0.619であった。バランス非不良群(39名)と不良群(13名)両群の属性に有意な差は認められず,両群のバランス能力の比較ではIPSでは有意な差を示さなかったが(2.13±0.19vs2.01±0.19,p=0.062),修正IPSでは有意な差を示した(0.82±0.17vs0.66±0.19,p=0.007)。【考察】今回の結果において,修正IPSはICC(1.1)=0.619と中等度の信頼性が認められ,臨床応用は可能と考えられた。また修正IPSは,従来のIPSでは困難であったバランス不良を抽出できる可能性が示された。直立姿勢における身体の平衡は,視覚・前庭・下肢の体性感覚からの入力が中枢神経系で処理され,四肢体幹の骨格筋に出力されることで維持される。本研究の対象は,前庭感覚に問題のない若年健常者であり,閉眼・軟面上での立位では視覚情報が遮断され下肢の深部知覚からの入力が制限されてしまうため,バランスを維持するため僅かな深部知覚からの情報に依存した可能性がある。さらに修正IPSは,随意的に最大限に重心を移動するタスクがかけられるため,さらに鋭敏な深部知覚を必要とする。これらのことから若年健常者を対象とした本研究の結果として,IPSでは現れず修正IPSに反映されたバランス能力の差は,深部知覚の感度差が鋭敏に反映された可能性が考えられた。【理学療法学研究としての意義】修正IPSは一定の信頼性を認め,また従来のIPSでは困難であったバランス不良を抽出できる可能性が示された。修正IPSは有効なバランス評価の方法になりうると考えられた。