著者
原田 和弘 田島 敬之 小熊 祐子 澤田 亨
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.103-114, 2022-05-31 (Released:2022-06-10)
参考文献数
35

目的:本研究では,ヘルスリテラシーがアクティブガイドの認知と関連しているかどうかと,ヘルスリテラシーの程度によって,アクティブガイドの認知と身体活動との関連性が異なるかどうかを検証した.方法:この横断研究では,社会調査会社の全国の調査モニター7,000名にインターネットによる質問紙調査を行い,アクティブガイドの認知,身体活動(中強度以上の身体活動量,身体活動レベル),ヘルスリテラシー,および基本属性の関連性を評価した.結果:アクティブガイドの認知を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果,ヘルスリテラシー得点が有意に正の関連をしていた.身体活動の両指標を従属変数とした重回帰分析とロジスティック回帰分析の結果,アクティブガイドの認知とヘルスリテラシーとの交互作用項が有意に負の関連をしていた.ヘルスリテラシーの程度で層化した分析を行った結果,ヘルスリテラシー低群でもヘルスリテラシー高群でも,アクティブガイドの認知は身体活動の両指標と有意に正の関連をしていた.ただし,偏回帰係数やオッズ比は,ヘルスリテラシー高群よりもヘルスリテラシー低群のほうが大きかった.結論:本研究により,ヘルスリテラシーが高い人々のほうがアクティブガイドを認知している傾向にあること,および,ヘルスリテラシーが低い人々においてアクティブガイドの認知と身体活動との正の関連性が顕著な傾向にあることが明らかとなった.
著者
鈴木 康裕 田島 敬之 村上 史明 高野 大 亀沢 和史 青木 航大 羽田 康司
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.57-69, 2021-03-31 (Released:2021-05-09)
参考文献数
25

目的:本研究の目的は,男性勤労者を対象に我々の作成したボード・ゲーム教材を用いた介入を行うことで,身体活動量が増加するかどうか,また介入終了後に維持されるかどうかについて予備的に検討することである。方法:筑波大学芸術系と共同開発した本教材は,プレーヤーが身体活動量を増やすことで有利に進めることができる。本研究の対象者は,地域の大学および大学附属病院にて勤務する男性職員11名[年齢24~48歳,中央値(四分位範囲)34.0(33.5,39.5)歳]であった。介入期間は6週間,全4回(1回/2週間,30分間/1回)のゲームを行った。介入開始前に2週間,介入終了後に12週間を設定し,最初の2週間をベースライン期間,介入終了後の12週間を介入効果の持越し観察期間とした。対象者は,介入群と対照群の2群に無作為に割り付けた。対照群は日常生活における身体活動量の増減をゲームのインセンティブとして与えなかった。身体活動量は対象者全員に3軸型加速度計を配布し測定を行った。結果:中高強度活動時間(中央値)の群間比較において,介入期間中の変化量は,対照群+0.2分/日に対し介入群+1.6分/日であった。経時的変化については,ベースライン期間と比べた介入12週間後の変化率は,介入群+48%,対照群+10%であった。結論:男性勤労者の身体活動量は,我々の作成した教材を用いた介入を行うことで増加し,また介入後も中期的に維持される可能性がある。
著者
天笠 志保 松下 宗洋 田島 敬之 香村 恵介 中田 由夫 小熊 祐子 井上 茂 岡 浩一朗
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
pp.2102, (Released:2021-02-10)

2020年11月に国際身体活動健康学会(International Society for Physical Activity and Health: ISPAH)は「身体活動を支える8つの投資(Eight Investments That Work for Physical Activity)」を出版した。これは,2010年に同学会が発表した「身体活動のトロント憲章」と2011年の「非感染性疾患予防:身体活動への有効な投資」のうち,後者を最新化するもので,世界保健機関(World Health Organization: WHO)の「身体活動に関する世界行動計画2018-2030」とともに身体活動促進のガイダンスとして有益である。身体活動の促進は人々の健康増進のみならず,より良い社会の実現,国連が定める「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)」の達成に資するとされている。その戦略としてはシステムズアプローチが重要であり,その考えに基づいて8つの領域にわたる対策を推奨している。8つとは,①「学校ぐるみ」のプログラム(whole-of-school programmes),②アクティブな移動・交通手段(active transport),③アクティブな都市デザイン(active urban design),④保健・医療(healthcare),⑤マスメディアを含む一般社会に向けた啓発(public education, including mass media),⑥みんなのためのスポーツとレクリエーション(sport and recreation for all),⑦職場(workplaces),⑧コミュニティ全体のプログラム(community-wide programmes)である。本稿ではその内容を概説するとともに,英語原本およびその日本語訳を要約し,紹介する。
著者
新村 直子 田島 敬之 齋藤 義信 於 タオ 吉田 奈都子 阿部 由紀子 新井 康通 小熊 祐子
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
pp.2205, (Released:2023-04-21)

目的:85–89歳の地域在住高齢者の座位行動を客観的に評価し,テレビ視聴時間を含む関連要因について多面的に検討する。 方法:The Kawasaki Aging and Wellbeing Project(KAWP)のベースライン(2017–18年)調査の参加者1,026名に連続7日間の加速度計装着を依頼し,有効データ914名(女性473名)の座位行動を客観的に評価した。重回帰分析を男女別に行い,座位行動との関連要因を3領域(身体状況,社会経済状況,生活習慣)の24因子と年齢,計25因子から検討した。 結果:総座位時間・装着時間に占める座位時間の割合は男性1日平均(標準偏差)9.4(1.9)時間・67%,女性8.6(1.8)時間・59%と男性が女性より長く座っており,30分以上継続する座位時間の割合も女性より高かった。重回帰分析により座位行動と関連が認められた要因は,関連が強い順に,男性ではテレビ視聴時間・BMI(正),家事時間・園芸スコア・運動時間・歩行速度・握力・ADL(負),女性ではBMI・テレビ視聴時間(正),家事時間・睡眠時間・運動時間・ADL・外出スコア(負)であった。 結論:80歳台後半の地域在住高齢者の座位行動にはテレビ視聴以外に,BMI・歩行速度・握力・ADLなどの身体状況要因,家事・園芸・運動・睡眠・外出などの生活習慣要因が多面的に関連していた。
著者
田島 敬之 原田 和弘 小熊 祐子 澤田 亨
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.790-804, 2022-10-15 (Released:2022-10-01)
参考文献数
42

目的 本研究では,アクティブガイドの認知・知識・信念・行動意図の現状と,身体活動・座位行動,個人属性との関連を明らかにする。方法 オンライン調査会社に登録する20~69歳のモニター7,000人を対象に,横断的調査を実施した。アクティブガイドの認知は,純粋想起法と助成想起法により,知識は「1日の推奨活動時間(18~64歳/65歳以上)」と「今から増やすべき身体活動時間(プラス・テン)」を数値回答で調査した。信念と行動意図はアクティブガイドに対応する形で新たに尺度を作成し,信念の合計得点と行動意図を有する者の割合を算出した。身体活動は多目的コホート研究(JPHC study)の身体活動質問票から中高強度身体活動量を,特定健診・保健指導の標準的な質問票から活動レベルを算出した。座位行動は国際標準化身体活動質問表(IPAQ)日本語版を使用した。記述的要約を実施した後,従属変数を認知・知識・信念・行動意図のそれぞれの項目,独立変数を身体活動量,座位行動,個人属性(性別,年代,BMI,配偶者の有無,教育歴,仕事の有無,世帯収入)とし,ロジスティック回帰分析でこれらの関連を検討した。結果 アクティブガイドの認知率は純粋想起法で1.7%,助成想起法で5.3~13.4%であった。知識の正答率は,「1日の推奨活動時間(18~64歳)」で37.2%,「1日の身体活動時間(65歳以上)」で7.0%,「プラス・テン」で24.8%,3項目すべて正答で2.6%だった。信念の中央値(四分位範囲)は21(16~25)点であった(32点満点)。行動意図を有する者は,「1日の推奨活動量」で51.4%,「プラス・テン」で66.9%だった。ロジスティック回帰分析の結果,認知・知識・信念・行動意図は中高強度身体活動量や活動レベルでいずれも正の関連が観察された一方で,座位行動では一貫した関連は観察されなかった。個人属性は,評価項目によって異なるが,主に年代や教育歴,仕事の有無,世帯年収との関連を認めた。結論 本研究より,アクティブガイドの認知や知識を有する者は未だ少ない現状が明らかとなった。さらにアクティブガイドの認知・知識・信念・行動意図を有する者は身体活動量が多いことが明らかとなったが,座位行動は一貫した関連が観察されず,この点はさらなる調査が必要である。さらに,今後は経時的な定点調査も求められる。
著者
田島 敬之 原田 和弘 小熊 祐子 澤田 亨
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-150, (Released:2022-06-30)
参考文献数
42

目的 本研究では,アクティブガイドの認知・知識・信念・行動意図の現状と,身体活動・座位行動,個人属性との関連を明らかにする。方法 オンライン調査会社に登録する20~69歳のモニター7,000人を対象に,横断的調査を実施した。アクティブガイドの認知は,純粋想起法と助成想起法により,知識は「1日の推奨活動時間(18~64歳/65歳以上)」と「今から増やすべき身体活動時間(プラス・テン)」を数値回答で調査した。信念と行動意図はアクティブガイドに対応する形で新たに尺度を作成し,信念の合計得点と行動意図を有する者の割合を算出した。身体活動は多目的コホート研究(JPHC study)の身体活動質問票から中高強度身体活動量を,特定健診・保健指導の標準的な質問票から活動レベルを算出した。座位行動は国際標準化身体活動質問表(IPAQ)日本語版を使用した。記述的要約を実施した後,従属変数を認知・知識・信念・行動意図のそれぞれの項目,独立変数を身体活動量,座位行動,個人属性(性別,年代,BMI,配偶者の有無,教育歴,仕事の有無,世帯収入)とし,ロジスティック回帰分析でこれらの関連を検討した。結果 アクティブガイドの認知率は純粋想起法で1.7%,助成想起法で5.3~13.4%であった。知識の正答率は,「1日の推奨活動時間(18~64歳)」で37.2%,「1日の身体活動時間(65歳以上)」で7.0%,「プラス・テン」で24.8%,3項目すべて正答で2.6%だった。信念の中央値(四分位範囲)は21(16~25)点であった(32点満点)。行動意図を有する者は,「1日の推奨活動量」で51.4%,「プラス・テン」で66.9%だった。ロジスティック回帰分析の結果,認知・知識・信念・行動意図は中高強度身体活動量や活動レベルでいずれも正の関連が観察された一方で,座位行動では一貫した関連は観察されなかった。個人属性は,評価項目によって異なるが,主に年代や教育歴,仕事の有無,世帯年収との関連を認めた。結論 本研究より,アクティブガイドの認知や知識を有する者は未だ少ない現状が明らかとなった。さらにアクティブガイドの認知・知識・信念・行動意図を有する者は身体活動量が多いことが明らかとなったが,座位行動は一貫した関連が観察されず,この点はさらなる調査が必要である。さらに,今後は経時的な定点調査も求められる。