著者
大橋 広和 高橋 裕樹 小原 美琴子 鈴木 知佐子 山本 元久 山本 博幸 牧口 祐介 玉川 光春 嵯峨 賢次 村上 理絵子 今井 浩三
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.407-413, 2004 (Released:2005-02-22)
参考文献数
23
被引用文献数
1 4

症例は40歳,女性.1995年5月頃より下腿浮腫が出現し膜性腎症によるネフローゼ症候群と診断,ステロイド大量投与により不全寛解を得た.また,同時期に頭部から四肢に拡大する角化性紅斑を認めた.1996年当院皮膚科にて毛孔性紅色粃糠疹(以下PRP)と診断されたが,治療抵抗性であった.1999年7月手指関節炎が出現,2000年4月に再び蛋白尿が出現し,同年8月当科入院となった.入院時,両手指遠位指節間(以下DIP)関節と右第4指近位指節間(以下PIP)関節に著明な腫脹を認めた.抗核抗体,リウマトイド因子,HLA-B27は陰性.関節X線上DIP・PIP関節の破壊を認め,関節MRIにて滑膜炎が確認された.加えて骨シンチグラフィーでは両中足趾節関節と左仙腸関節に集積をみた.関節症の特徴が乾癬性関節炎に類似しており,乾癬と同様皮膚の異常角化を主徴とするPRPに伴う関節炎と診断した.膜性腎症に対してステロイド大量投与を施行後,いったん関節症状は改善したが,手指関節の破壊は急速に進行した.2002年4月よりシクロスポリンAを併用し,関節炎の消退傾向を認めている.PRPに合併する関節症の報告例は少なく,その病態解析には今後の症例の蓄積が必要である.
著者
山本 元久 鈴木 知佐子 苗代 康可 山本 博幸 高橋 裕樹 今井 浩三 篠村 恭久
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.36, pp.129, 2008

48歳女性、元看護師。2001年9月より膝関節水腫が出現、仕事や肥満が原因と考えられていたが、2002年2月から発熱・CRP上昇を認め、当科紹介となった。膝関節腫脹と左下腿に結節性紅斑を認め、少量プレドニゾロン(PSL)を開始した。2003年3月より両下腿腫脹、皮膚潰瘍を認め、皮膚生検で血管炎を確認した。末梢神経障害による四肢のしびれ以外、臓器障害はなく、ANCA・抗リン脂質抗体は陰性であり、皮膚型結節性多発動脈炎(cPN)と診断した。PSL増量によりCRP低下や下肢腫脹の消退を認めたが、減量し復職すると、下腿腫脹・疼痛が悪化、潰瘍を形成するため、PSL減量が困難であった。2005年末に離職・自宅療養となったが、下腿腫脹の悪化、皮膚潰瘍の多発・拡大と下肢痛を認め、PSL 40 mgに増量、2006年8月からエンドキサンパルス療法を3回施行した。その後、PSL17.5mgにまで減量したが、発熱・CRP再上昇を呈し、同意を得た上で、2007年10月からエタネルセプト(ETA)の併用を開始したところ、速やかに解熱、炎症反応の陰性化をみた。現在、PSL12.5mgにまで減量しているが、潰瘍形成を含め、再燃は認めていない。ETAが奏効したcPNの一例を経験したので、考察を加えて報告する。
著者
山本 元久 高橋 裕樹 苗代 康可 一色 裕之 小原 美琴子 鈴木 知佐子 山本 博幸 小海 康夫 氷見 徹夫 今井 浩三 篠村 恭久
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1-8, 2008-02-28
被引用文献数
27 39 12

ミクリッツ病は涙腺・唾液腺腫脹を,自己免疫性膵炎は膵のびまん性腫脹を呈し,ともに腺組織中へのIgG4陽性形質細胞浸潤を特徴とする疾患である.私たちは,当科における全身性IgG4関連疾患(systemic IgG4-related plasmacytic syndrome ; SIPS)40例の臨床的特徴(腺分泌機能,血清学的評価,合併症,治療および予後)を解析した.男性は11例,女性は29例で,診断時の平均年齢は58.9歳であった.疾患の内訳は,ミクリッツ病33例,キュッツナー腫瘍3例,IgG4関連涙腺炎4例であった.涙腺・唾液腺分泌低下は,約6割の症例にみられたが,軽度であった.抗核抗体陽性率は15%,抗SS-A抗体陽性は1例のみ,低補体血症は30%に認められた.また自己免疫性膵炎,間質性腎炎,後腹膜線維症,前立腺炎などの合併を認めた.治療は,臓器障害を有する症例で治療開始時のステロイド量が多く,観察期間は最長16年のうち,臓器障害の有無に関わらず3例で再燃を認めた.ミクリッツ病をはじめとするSIPSの現時点における問題点と今後の展望について述べてみたい.<br>
著者
山本 元久 小原 美琴子 鈴木 知佐子 岡 俊州 苗代 康可 山本 博幸 高橋 裕樹 篠村 恭久 今井 浩三
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.349-356, 2005-10-31
参考文献数
44
被引用文献数
9 14

症例は,73歳女性.1998年頃より口渇,両側上眼瞼腫脹が出現,2003年10月には両側顎下部腫脹を認めた.同時期に近医で糖尿病と診断され,経口血糖降下薬の投与が開始された.2004年夏頃より上眼瞼腫脹が増強したため,当科受診,精査加療目的にて10月に入院となった.頭部CT・MRIでは,両側涙腺・顎下腺腫脹を認めた.血清学的に高γグロブリン血症を認めたが,抗核抗体・抗SS-A抗体は陰性であり,乾燥性角結膜炎も認めなかった.さらなる精査で,高IgG4血症及び小唾液腺生検にて著明なIgG4陽性形質細胞浸潤を認めたため,Mikulicz病と診断した.腹部CTではびまん性膵腫大を認め,ERCPで総胆管・主膵管に狭窄を認めた.自己免疫性膵炎の合併と診断し,プレドニゾロン40 mg/日より治療を開始した.その結果,涙腺・顎下腺腫脹は消失,唾液分泌能も回復した.また膵腫大,総胆管・膵管狭窄も改善した.耐糖能障害も回復傾向にある.Mikulicz病と自己免疫性膵炎は共に高IgG4血症を呈し,組織中にIgG4陽性形質細胞浸潤を認めることから,両疾患の関連を考える上で非常に興味深い症例であると思われた.<br>