- 著者
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立堀 道昭
鈴村 豊太郎
小野寺 民也
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, no.4, pp.1-12, 2009-08-28
ウェブ・アプリケーション開発では,通常 HTML テンプレートを用いてウェブページの表現部を背後にあるビジネスロジックやオブジェクトから分離するのが事実上の標準プログラミングモデルとなりつつある.本稿では,このテンプレートに基づくプログラミングにおける典型的な慣習に着目し,従来の実装形態とは大きく異なる実装を施したサーバ側テンプレート・エンジンである FlyingTemplate について述べる.FlyingTemplate では,既存のウェブ・アプリケーションのテンプレート・エンジンを置き換えることにより,ウェブサーバの負荷を,自動的に,かつ従来の自動分散機構より安全にクライアントに分担させることができる.FlyingTemplate では,HTML 文書をまるまる生成する代わりに,テンプレートのパラメータ値とクライアント側で動作するブートストラップのコードのみを含む骨子文書を生成する.ブートストラップコードはクライアント側用のテンプレート・エンジンとウェブページのテンプレートをそれぞれサーバから取り寄せることにより,ウェブブラウザのキャッシュを有効利用できる.実験として,SPECweb2005 の Banking アプリケーションをそのまま,テンプレート・エンジンのみ FlyingTemplate で置き換えたところ,キャッシュがよく当たるケースでは,1.6 倍から 2 倍のスループット向上がみられた.