- 著者
-
鍋山 祥子
- 出版者
- 山口大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2005
今年は、「遠距離介護とコミュニティの関連」を明らかにする研究計画の最終年次にあたり、特に山口市内に居住し、別居子を持つ高齢者に対する聞き取り調査をおこなった。そのなかから、地域の人的資源(近隣住民とのつながり)に生きがいを見いだしながらも、別居家族(特に子ども)に精神的な拠り所を求めている老親の姿が明らかになった。これまで、遠距離介護に関するインタビュー調査の傾向として、遠距離介護をおこなっている別居子に対する調査が中心であった。そこで、本研究において、別居子を持ちながら、地域で生活を続ける高齢者へのインタビュー調査が実施できたことは、遠距離介護を多角的に考えるうえで、非常に意義のあるものとなった。そして、初年度の別居子に対する質問紙調査と、次年度の遠距離介護を実践している別居子へのインタビュー調査、さらに今年度の老親へのインタビュー調査の結果から、老親の住む地域が遠距離介護支援のためにできることと、望ましいサービス体制、並びに地域が遠距離介護支援に取り組むことのメリットなどを明らかにした。本研究によって達成した、老親の住む地域における遠距離介護支援の望ましいあり方とその必要性についての認識を基盤として、今後は、別居子のワーク・ライフ・バランスと遠距離介護との関係に焦点をあてる。そして、地域における遠距離介護支援が別居子のワーク・ライフ・バランスにどう影響するのかという分析をおこない、超高齢社会における労働政策と地域福祉政策を考察していきたい。