著者
高橋 征仁
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
no.32, pp.60-75, 2007-10-20

中学から高校,大学へと進むにつれ,日本の青少年は,一部の周縁的な規範に対して否定的反応を示すようになる.しかしそれは,規範意識の<低下>傾向を意味するのではない.むしろこの現象は,規範を分類するまなざしが高次化することで生じている.このことを明らかにするために,本稿では,規範どうしの類縁性やその精緻化プロセスに焦点を当てて道徳的社会化を捉える「類縁化アプローチ」を提唱したい.青少年の道徳的社会化とは,社会的経験が広がるなかで,幼児期以来の様々な禁止の意味を問い,自分の手で規範として分類し直すことで,道徳意識を再組織化するプロセスである.この類縁化アプローチにもとついて,山口県青少年調査(1992〜2004年)の非行観データを再分析したところ,対象者の非行観が,単純な善悪二元論(白黒2値)から,6つの規範モジュールの複合(6階調のグレースケール)へと高次化していくことが確認された.ヤンキー型規範を基準とした場合,最初に消費恋愛型や性規範型のモジュールが分化し,次に生活規律型が分化し,さらにタバコ型が分化し,最後にズル型が分化していた.他方,1990年代以降の時代的変容をみると,タバコ型と性規範型の類縁性が溶解し,喫煙や飲酒は,不健康型へとその意味を変質させていた.
著者
高橋 征仁
出版者
山口大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、災害時の緊急避難行動にみられるヒューマン・エラーを進化心理学の観点から捉え直すことで、その基本特性および制御方法を解明することを目的とした。東日本大震災にかんする国交省の避難行動調査の2次分析を行ったところ、情報収集や家族保護、職務遂行などの社会的行動が避難行動の遅延要因であることがわかった。また、「田んぼを見に行く」ようなスカウティング行動は、30歳代と60歳代の男性に典型的にみられ、性選択と血縁選択が2重に影響していることが示唆された。
著者
高橋 征仁
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

「若者の政治的無関心」は、これまで戦後日本における私生活主義の産物として考えられてきた。しかし、こうした時代的観点だけでは、政治的関心の加齢効果という単純な発達的傾向をうまく説明することができない。そこで、本研究では、国際比較調査などを用いてよりグローバルな観点から、政治的関心をめぐる齢間分業の普遍性と多様性について検討を行った。その結果、①政治的関心の加齢効果、②政治的関心のモジュール性、③リスクと齢間分業の関係を明らかにした。
著者
辻 正二 中村 彰治 原田 規章 坪郷 英彦 松野 浩嗣 石田 成則 高野 和良 速水 聖子 鍋山 祥子 林 寛子 高橋 征仁
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

現在の高度産業社会には、これまで人類の歴史が経験したことのない新しい時間問題が生まれている。これまで人類は、進化の中で身につけた生命的時間と人間が自ら形成した社会的時間をうまく調和させてきたが、今日のグローバル化と情報通信技術の進展によって生じたハイスピード化社会は、社会的時間を大きく変化させて、人類の時間構造に歪みを増幅させて、生命的時間に慢性的時差ボケを生みつつある。今回の時間意識の調査研究ではハイスピード化によって社会的時間の変化が生じており、これが生命的時間との間でズレを生んでいることがある程度明らかになった。調査データの分析からは、ハイスピード化が生命的時間に負の影響をもたらし、青年や高齢者に身体の不調(疲労やイライラ度や不眠や生理不順など)や社会病理の原因を生んでいることが明らかになった。