著者
鎌倉 真音 大石 岳史 高松 淳 池内 克史
雑誌
じんもんこん2005論文集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.55-61, 2005-12-16

歴史的な建造物や文化遺産から取得した3次元モデルは,現状を永久に保存できること,修復作業のガイドラインに使用できることなど非常に有用性が高い,また,このような3次元モデルを用いた形状の比較や様々な手法による分類などは考古学にとても有益であるとされている,大小52の塔からなるバイヨン寺院は,カンボジアアンコール遺跡群の代表的な寺院のひとつであり,塔の東西南北に尊顔が刻まれているというユニークな特徴を有する.日本国政府アンコール遺跡救済チーム(JSA)の調査によると,尊顔は全部で173現存し,デーヴァ(男神),デヴァター(女神),アシュラ(悪魔)の3種類に分類できると言われている.また,多数の職人で形成されたグループが複数存在し,同一のグループによって制作された尊顔は類似していると言われている.本論文では,レーザレンジセンサを用いた計測により取得した尊顔の3次元形状モデルを用いて,定量的な尊顔の分類・分析を行う,そして,この分析から尊顔の制作背景を考察する,
著者
池内 克史 大石 岳史 小野 晋太郎 岡本 泰英 鎌倉 真音
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.123-126, 2016-03-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
13

東日本大震災による被災前後の状況や震災遺構などをデジタルデータとして記録し,仮想化空間で再現することで防災啓発などを目指した取り組みについて紹介する.宮城県山元町~青森県八戸市の沿岸道路では,震災翌月から車載カメラにより360°映像を連続的・定期的に撮影・蓄積している.また岩手県大槌町では,被災した旧役場庁舎の精細な三次元CGを実測に基づいて構築するとともに,収集した写真等から震災前の街並みを擬似的に再現した.更に2015年2月には,同町内で震災前後の様子を移動しながら仮想的に体験するデモを行った.
著者
鎌倉 真音
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究は、有形文化資源の3次元デジタルアーカイブデータの利活用について、データの計測作業と取得データを用いた解析と考察を通して、その有効な方法や今後の展開、可能性について3ヶ年で考察、検討するものである。最終年度である本年度も昨年度に引き続き、特に有形文化資源のデジタルデータの利活用に関して、考古学、美術史学、建築史学、など多分野にわたって具体的な解析や活動を通して研究を遂行した。主に、以下の2点に着目して研究を行った。(1)カンボジア、アンコール遺跡バイヨン寺院の大きな特徴である尊顔に関して、3次元デジタルアーカイブデータを用いた解析による考古学的考察を行った。12世紀に寺院を建立したとされる王(ジャヤヴァルマンVII)の坐像顔面デジタルデータと寺院尊顔の類似度等を検証する解析、アンコール遺跡群の中でもバイヨン期の寺院にだけ存在する尊顔の制作背景について考察を行った。解析、考察の結果は、バイヨン期の寺院建立の歴史等を明らかにし、多分野横断型研究の結果としても極めて重要なものとなる。(2)3次元デジタルアーカイブデータを用いた具体的事例をもとに、従来では文化資源そのものに対して行ってきた利活用活動を、デジタルデータの特長に着目し、広く文化資源全般にわたってデータとして利活用していく、プロセスデザインを行っている。サーバなどに蓄積されるばかりの文化資源デジタルアーカイブデータを有効に利活用するために、(1)のように具体的な対象を用いた解析、考察を行い、同様に様々な対象に対しても適用していくことは有意義である。本研究の成果は、国内外を問わず文化資源における保存・デジタルデータ化・利活用に関する俯瞰的な考察を可能にし、文化資源を基軸とする多分野にわたる研究領域での具体的研究プロセスモデルの提案につながる。とりわけ国土も狭く、資源にも乏しい日本国において、あらゆる文化資源を有効な手段で保護、保全、保存、そして活用していくことは極めて重要である。