著者
新井 良一 鍾 俊生 楊 君興 劉 煥章 伍 漢霖 解 玉浩 陳 宜ゆー 赤井 裕 鈴木 伸洋 大嶋 雄治 館田 英典 上田 高嘉 YANG Junxing LIU Huanzhang WU Hanling XIE Yuhao CHEN Yiyu ZHON Junsheng 陳 宣瑜 鐘 俊生 植田 徹
出版者
東京大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

中国大陸におけるコイ目タナゴ亜科魚類の系統分類と生物地理学的研究(平成7年度〜平成8年度)のため、平成7年度は、新井、赤井および研究協力者の石鍋は平成7年6月7日から7月12日まで、また大嶋は平成7年6月8日から6月27日まで、研究協力者の木村は平成7年6月8日から7月13日まで訪中し、上海市、浙江省奉化市、湖北省武漢市、雲南省昆明市で、それぞれタナゴ類の採集を行い、形態学的研究、核型およびDNA実験の一部を行った。また、武漢市の中国科学院水生生物研究所および昆明市の中国科学院動物研究所で中国各地のタナゴ類の保存標本を観察した。平成8年度は、新井、赤井および研究協力者の石鍋は平成8年9月3日から10月11日まで、また上田および研究協力者の滝沢は平成8年10月1日から10月11日まで、研究協力者の松井は平成8年9月3日から9月25日まで訪中し、山東省済南市、遼寧省遼陽市、湖北省武漢市、上海市、浙江省金華市で、それぞれタナゴ類の採集を行い、形態学的研究、核型およびDNA実験の一部をおこなった。また、天津市の自然史博物館および武漢市の中国科学院水生生物研究所で中国各地のタナゴ類の保存標本を観察した。平成7〜8年度の主な成果を以下に示す。1.浙江省で採集され、形態的特徴からRhodeus atremiusと同定された標本の染色体がn=23であることが判明した。n=23のタナゴ類は中国では初記録であり、核型からも、従来、九州特産とみなされていたカゼトゲタナゴが中国にも分布することが支持された(Ueda et al.,in press)。2.n=23と考えられるタナゴ類が山東省、遼寧省、湖北省でも採集された。3.Rhodeus lightiおよびTanakia himantegusの核型が詳しく調べられた(Ueda et al.,in press)。4.従来、中国の固有種と考えられていたRhodeus lightiおよび朝鮮半島の固有種と考えられていたR.uyekiiが中国産のR.sinensisと同一種であり、命名の古さから、R.sinensisが本種の有効名であることが判明した(Akai and Arai,in press)。5.Acheilo-gnathus meridianusのシノニムが整理された。A.meridianusの総基準標本は2種からなるので、後基準標本を指定し、急いで発表する必要がある。6.中国で無視され、これまで日本と朝鮮半島にのみ分布すると考えられていたヤリタナゴが遼寧省から再発見された(Arai and Akai,1995)。7.上海市から初めてアブラボテ属のタナゴ類が採集された。8.中国産のAcheilognathus tabiro(=A.tabira)を日本産のA.tabiraと比較研究した結果、中国産のA.tabiroは未記載種であることが判明した。9.中国で初めて秋に産卵するタナゴ類が発見された。10.中国産9種・亜種、日本産15種・亜種、朝鮮半島1種、ヨーロッパ産1種の成魚の頭部感覚管及び眼下骨の比較解剖を行い、頭部感覚管で9分析形質、眼下骨で6分析形質を識別することができた。バラタナゴ属では、幼魚の特徴を維持している種がみられることから、幼形成熟と種分化の関係が示唆された。11.頭部感覚管について、日本産より特殊化の進んだ種が中国産にみられた。なお、今回採集したタナゴ類のDNAおよび核型の分析を続行中である。
著者
鐘 俊生 木下 泉 久保 美佳 杉山 さやか
出版者
水産海洋学会
雑誌
水産海洋研究 (ISSN:03889149)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.65-77, 2003-05-31
被引用文献数
1

浦ノ内湾は土佐湾のほぼ中央部に位置し、東西に細長く伸びたリアス式の奥行き約12kmの内湾である。湾内には顕著な流入河川がなく、淡水は主として降雨によってもたらされる。潮位差は平均1mで、約400mの湾口幅で平均流速は1ktに達することから、毎秒500tの海水が潮汐によって湾口で流出入する。本湾では集魚灯と汀線付近の採集により、135種以上の仔稚魚が確認され、サッパSardinella zunasi、クロサギGerres equulusなど広塩性魚類だけではなく、カタクチイワシEngraulis japonicus、マイワシSardinops melanostictusおよびイソギンポ科Blenniidaeなどの狭塩性魚類も湾内に一定期間生息していることが確認された。そこで、これら湾内に多く生息していた仔稚魚が、どのような機構で進入するかを明らかにするために本湾口部で浮游期仔稚魚の調査を行った。今回、その一部である夏季調査について明らかになったことを報告する。