著者
田中 美智子 長坂 猛 矢野 智子 小林 敏生 榊原 吉一
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.4_59-4_65, 2008-09-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
18

健康成人女性11名を対象とし,腹式呼吸を行っている間に,循環反応や自律神経系がどのような反応をするのかに加え,ストレス時に見られるホルモンの分泌が抑制されるか,また,覚醒感に関与しているセロトニンの分泌は促進するのかという点を検討する目的で行った。腹式呼吸時の循環反応は通常の呼吸と同様の経過を辿った。実際の心拍数は経過とともに減少し,血圧の上昇を示したが,有意な変化ではなかった。RR間隔の時系列データを周波数解析すると,腹式呼吸時は副交感神経優位となった。尿中セロトニン濃度は腹式呼吸及び通常の呼吸で変化が認められなかったが,腹式呼吸では尿中のノルアドレナリン濃度,アドレナリン濃度及びコルチゾール濃度の有意な低下が認められた。腹式呼吸はコントロール実験として行った通常の呼吸と同様,生体に対してストレッサーにはなっておらず,リラックスした状態を維持できる呼吸法であると考えられた。
著者
長坂 猛 田中 美智子
出版者
宮崎県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

目もとへの温罨法がスムーズな入眠に与える影響を日常生活の実験で調べた。実験には20代の22名に参加してもらい、睡眠中の心拍変動と体の動きを記録した。目覚めてからのアンケートにも答えてもらった。就寝前の10分間に、暖かいアイマスクを装着する条件と、何も装着しない(対照)の2条件を設定し、それぞれ別の日に参加者の自宅で実験した。入眠直後の心拍数は、どの条件でも減少した。交感神経活性は、暖かいアイマスクを装着したときに減少した。アンケートによる主観評価の一部に差が見られたのみで、入眠までの時間に統計的に有意な差は見られず、今回の結果からは、目もとの温罨法が入眠に効果があるとは言えない。
著者
長坂 猛 田中 美智子
出版者
宮崎県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

健常な成人(20-40代)を対象として、入眠前の10分間に眼部もしくは後頸部に40℃の温罨法を施し、その後の睡眠に与える効果を評価した。測定した項目は、心拍変動、体動であり、起床時にアンケートにも答えてもらった。睡眠前に温罨法を適用する条件に、何も適用しない対照条件を加え、計3条件で実験した。いずれの条件でも入眠時に顕著な心拍数の減少が認められた。心拍変動から見積もることができる自律神経活性については、どの条件でも睡眠中に副交感神経活性の上昇が見られたが、3つの条件による有意な差はなかった。入眠までの時間と睡眠調査票による主観的な評価にも、眼部と後頸部による明らかな差は見られなかった。
著者
田中 美智子 長坂 猛 矢野 智子 小林 敏生 榊原 吉一
出版者
コ・メディカル形態機能学会
雑誌
形態・機能 (ISSN:13477145)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.8-16, 2011 (Released:2015-08-28)
参考文献数
32
被引用文献数
2

高齢者14名(男性7名、女性7名)を対象とし、腹式呼吸を行なっている間の、循環や自律神経の反応に加え、ストレスホルモンへの影響について検討した。対象者が通常の呼吸条件と意識的腹式呼吸条件を行っている時にRR間隔と血圧を持続的に測定し、実験前後の唾液もしくは尿のサンプルからストレスホルモンを採取し、分析した。RR間隔から心拍数を算出するとともに、心拍変動を解析することで、自律神経系の指標を算出した。意識的腹式呼吸条件中には、通常の呼吸条件と同様に心拍数の減少を認め、さらに、収縮期血圧及び拡張期血圧ともに低下した。自律神経系の反応では、意識的腹式呼吸条件中に副交感神経系の指標であるlog(L×T)の増加が見られた。実験後に両条件でストレスホルモンの減少が認められたが、意識的腹式呼吸条件では有意な減少であった。以上のことより、意識的腹式呼吸は高齢者にはストレッサーにはなっておらず、リラックスした状態を維持できる呼吸法と考えられる。
著者
長坂 猛 田中 美智子
出版者
宮崎県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

睡眠の内容と、翌日のパフォーマンスに関するデータ(情報の処理能力、疲労度、眠気)の相関を調べることによって、睡眠と翌日の活動についての評価を試みる。日常的な生活の中で測定を実施し、心拍や唾液中のホルモン物質の変動から、翌日のパフォーマンスを推測することをめざす。
著者
田中 美智子 楠田 (竹下) 真央 安部 浩太郎 長坂 猛
出版者
コ・メディカル形態機能学会
雑誌
形態・機能 (ISSN:13477145)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.67-75, 2009-03-20 (Released:2010-09-09)
参考文献数
20

鉄欠乏性貧血が成長にどのような影響をもたらすかを明らかにするために、ラットを用いて、2つの実験を行った。実験1では、303ppmの鉄含有のエサ (コントロール食) を6週間摂取したコントロール群、3.6ppmの低鉄条件のエサ (鉄欠乏食) を6週間摂取した鉄欠乏群、そして、この鉄欠乏群と同量のコントロール食を6週間摂取したPair-fed群の3群に無作為に分けた。実験2では、コントロール食を8週間摂取のコントロール (C) 群、鉄欠乏食を8週間摂取した鉄欠乏 (ID) 群と5週間は鉄欠乏食を摂取し、その後、3週間はコントロール食を摂取した鉄欠乏―コントロール (IDC) 群の3群に無作為に分けた。実験1ではコントロール群に比べ、鉄欠乏群及びPair-fed群の成長とエサ摂取量は有意に低下していた。しかしながら、コントロール群の体重増加分に対するエサ摂取量の割合は他群に比べると少なかった。鉄欠乏群の血漿レプチン濃度はpair-fed群に比べると有意に低下していた。実験2では、鉄欠乏で見られた成長の抑制、高脂血症及び貧血は、IDC群では認められなかった。C、ID、IDC群の血漿レプチン濃度 (ng/mL) は、それぞれ1.37±0.27、0.90±0.14、2.12±0.53であった。CとID群のレプチン濃度は腹腔内脂肪量と有意な正の相関が認められたが、鉄欠乏ではその関係は認められなかった。我々の結果は鉄欠乏により生じた成長抑制は鉄欠乏の栄養障害によるものだけでなく、体温調節に関係する熱産生が増加したことが関与している可能性を示唆する。また、鉄欠乏のラットはレプチン濃度が低下しており、腹腔内脂肪とレプチン濃度の関係は認められなかった。この関係の欠如は鉄欠乏状態で成長を維持するために必要な生体反応であると考えられる。