- 著者
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征矢野 清
中村 將
長江 真樹
玄 浩一郎
- 出版者
- 長崎大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2006
カンモンハタは月周期と完全に同調した成熟産卵サイクルを持ち、満月大潮直後に生息場である珊瑚礁池から外洋へ移動して産卵する。このような月周期の影響を受けた生殖腺の生理変化及び産卵のための行動は、多くの水生生物で観察されているが、その詳細は明らかにされていない。本研究では、月周期と同調したカンモンハタの成熟・産卵のメカニズムを解明する事を目的に、これまで観察を続けてきた沖縄県本部町瀬底島のフィールドと西表島のフィールドを利用して、本種の成熟過程を産卵場への移動及び産卵行動と関連づけて調べることとした。本研究により得られた主な成果は以下の通りである。1)沖縄県南部の西表島と北部の瀬底島に生息するカンモンハタの生殖特性を比較したところ、本種は共通して月周産卵をすることが確認されたが、成熟サイズ・性転換時期・産卵回数が両地域で異なることがわかった。2)生殖腺刺激ホルモン遺伝子(FSHβとLHβ)の発現を測定するリアルタイムPCR法を確立し、脳下垂体における両遺伝子の測定を可能とした。その結果、LHが本種の生殖腺発達に深く関わることが分かった。3)バイオテレメトリー法により満月大潮前後の産卵関連行動を沖縄県瀬底島と西表島のフィールドを用いて観察したところ、いずれの地域でも産卵に適した場所に移動することが分かった。また、この移動は産卵期にのみ起こることが分かった。4)飼育環境下の個体を用いて月周期と同調した卵成熟の過程を観察し、成熟のタイミングを明らかにすることができた。本研究の成果はカンモンハタの生殖腺発達を理解するだけでなく、種苗生産対象魚として注目されている他のハタ科魚類の生殖腺発達を理解する上でも貴重な情報となる。また、南方系海産魚に多く見られる月周産卵の機構解明にも役立つことが期待される。