- 著者
-
長江 貞彦
富岡 洋子
- 出版者
- 近畿大学
- 雑誌
- 近畿大学生物理工学部紀要 = Memoirs of the School of Biology-Oriented Science and Technology of Kinki University (ISSN:13427202)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, pp.35-45, 2004-02-28
近年,俳句は海外でも親しまれるようになり,欧米を中心に英語で詠まれる機会も増えてきた.一方,日本では昔から俳句を色紙や短冊に毛筆で書き,作品とする風習がある.そこで英語の俳句も筆文字で表現することにより,趣ある作品を作成することが可能だと考えられる.しかし,一般に英語圏の人々は筆文字に親しみがなく,実際に毛筆で文字を書くことは困難である.そこで本研究では,英語圏の人々が作成した俳句を容易に筆文字で表現するためのソフトウェアを試作した.表示する英文字には実際に筆で書かれた文字を使用し,文字間をスプライン曲線で補間することにより筆記体を表現した.補間する曲線は線幅を変えることで筆圧の変化を表現し,曲線を描画させる位置をユーザが自由に変更できるようにした.また,毛筆の特徴である"掠(かす)れ"を補間曲線上に表現していくことを可能にした.掠れは常に同じ形状で発生しないため,ランダム関数を用いて文字列を表示させるごとに違う掠れを表現した.本研究により,英文で書かれた俳句を筆文字で表現し,趣ある作品として作成することが可能となった.これにより,国境を越えた文化交流が俳句を通じて,より盛んになるものと期待できる.