著者
長谷川 守 服部 卓 石埼 恵二
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.5-10, 1997-01-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
17

これまで Minnesota Multiphasic Personality Inventory (MMPI) を用いた性格特性の痛みへの影響を検討する研究が数多く行なわれてきた. しかし, 精神病理学的な性格特性を知る目的で作成されたMMPIを痛みの強さの評価に用いることのむずかしさが問題とされている. そこで今回は, 慢性疼痛患者150人を対象に性格傾向がどれくらい痛みの強さに影響をもたらすかを検討した. 治療や診療期間などの影響を最小限にするため, 初診患者のみを選択した. 患者の疼痛持続期間は6カ月以上で, 疼痛部位は腰部, 頸部, 顔・頭, 肩, その他と慢性疼痛のみられる部位全般を含んでいた. 治療前に interview 形式により McGill Pain Questionnaire (MPQ) 日本語版とその他の疼痛計測尺度 (Visual Analogue Scale: VAS, Verbal Rating Scale: VRS, Numerical Rating Scale: NRS) を施行し痛みの強さを評価した. さらに, MMPIを患者に手渡し施行した. 分析の結果, MMPIの各尺度の示す性格傾向は痛みの強さそのものの予測には役立たないことがわかった. しかし, MPQを用いて痛みの強さを質的側面から検討すると, 性格傾向との関連性が示され注目された.
著者
長谷川 守 服部 卓 猿木 信裕 石埼 恵二 木谷 泰治 町山 幸輝 藤田 達士
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.85-91, 1996-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1

McGill Pain Questionnaire (MPQ) は多くの国で標準化された Pain Rating Scale (PRS) であるが, 言語や文化の違いから, わが国では, 標準化されていない. 今回, われわれは慢性疼痛患者105人を対象に Meizack らの方法論に準拠した日本語版MPQ (J-MPQ) (疼痛表現は佐藤らによる) と他のPRSを同時に施行しJ-MPQの信頼性と妥当性を検討した. さらにSTAI (State-Trait Anxiety Inventory: 状態-特性不安尺度) によって状態不安とJ-MPQ得点との関連性を検討した. 検討の結果, J-MPQの信頼性と妥当性は証明されPRSとしての有用性は確認された. 各 subscale 間は比較的高い相関があり, 痛みの構造を評価する尺度としては独立性に問題があることがわかった. そのため, 他のPRSと最も相関が高く, 各 subscale の総得点であるPRI-T (Total score of the Pain Rating Index) をPRSの代表として使用するのが望ましいと考えられた. また, STAIとJ-MPQには低い相関しかみられず不安とJ-MPQ得点との関連性は低いと考えられた.
著者
長谷川 守文
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.547-552, 2017-07-20 (Released:2018-07-20)
参考文献数
47

フィトアレキシンの単離・構造解析に関する研究は20世紀後半に盛んに行われ,非常に多くの成果が蓄積された.21世紀に入ってからのフィトアレキシン研究はその生合成や誘導機構に関するものが中心になってきており,いわゆる「モノ取り」的な研究はやり尽くされた感があった.しかし,近年イネ科やアブラナ科植物の研究で,従来考えられていたよりも多様な化合物がフィトアレキシンとして機能していることがわかってきた.
著者
小原 直美 光原 一朗 瀬尾 茂美 大橋 祐子 長谷川 守文 松浦 雄介
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.94-101, 2007 (Released:2007-07-20)
参考文献数
22
被引用文献数
5 11

アグリボEX(株ビスタ製)は酵母抽出液を原料とする植物活力剤であり,発根促進,徒長抑制などとともに,病害抑制効果もみられる.病害抑制機構としては,この酵母抽出液(アグリボEX)自体に抗菌作用がないことから,本処理が植物が本来有する抵抗性を誘起して効果を発揮するものと考えられた.この酵母抽出液にタバコ葉片を浸漬処理すると,塩基性PR-1, -2および-6遺伝子の発現が誘導された.これら塩基性PR遺伝子群はエチレンで誘導されることが知られているので,エチレン発生剤であるエテホン処理やエチレン作用阻害剤であるチオ硫酸銀錯塩(STS)を処理し,タバコPR-1, -2, -3および-5タンパク質群の増減を調べた.その結果,エテホン処理で誘導される分子種がこの酵母抽出液処理で誘導され,その誘導はSTS処理により阻害されることが分かった.また,この酵母抽出液自身からエチレンが発生すること, およびこの処理により植物からのエチレン発生が促進されることが認められた.これらの結果から,この酵母抽出液はエチレンシグナル伝達経路を介して植物の病害抵抗性誘導に寄与するものと考えられる.