著者
吉住 正和 小池 幹義 高橋 奈緒美 田仲 久人 木暮 政惠 岡田 正敏 津久井 智 猿木 信裕 高橋 篤
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.23-31, 2017-02-01 (Released:2017-04-05)
参考文献数
11
被引用文献数
1

背景と目的:アカツツガムシを媒介としたつつが虫病は旧来より知られていたが, 1950年代から新型 (タテツツガムシあるいはフトゲツツガムシが媒介) が出現して全国的に拡がり, 群馬県でも1980年代から北部山間部を中心に散見されるようになった. 一方, 最近の群馬県におけるつつが虫病の発生状況は明らかとは言えない. 本研究では, 群馬県, 特に利根沼田2次保健医療圏における最近のつつが虫病の発生動向とその変遷などの特徴を明らかにすることを目的とする.方 法:群馬県統計年鑑・Infectious Agent Surveillance Report報告・利根沼田と吾妻地域の4類感染症発生届を用い, (1) 全国/群馬県/県内各2次保健医療圏におけるつつが虫病発生数と頻度の推移, (2) 利根沼田と吾妻地域における地域総人口/農業人口/60歳以上人口とそれらの発生頻度の推移・月別平均気温の推移 (3) 利根沼田地域のつつが虫病患者の年齢/職業/発生月/推定感染場所/血清タイプを検討した.結 果:(1) 全国と群馬県のつつが虫病発生頻度は2002年まで減少傾向にあったが, 群馬県の発生頻度は2007年以後上昇した. (2) 県内各地域の発生頻度は検討全期間を通して吾妻地域の占める割合が高く, 利根沼田地域では1995年を境に発生数が増加し, 2007年以後の利根沼田地域の発生数は群馬県の発生数の20~50%を占めていた. (3) 農業人口に対する発生頻度は各地域とも地域総人口に対する発生頻度と比べ有意に高く, 経時的に上昇していた. 一方, 60歳以上人口に対する発生頻度は地域総人口に対する発生頻度と比べ差異がなかった. (4) 利根沼田地域では最近の10年間で平均気温の上昇が認められた. (5) 群馬県及び利根沼田地域の発生時期は10月~11月, 推定感染場所は河岸段丘の農地が大半であった. (6) 利根沼田地域では感染地域の拡大が認められ, 血清タイプは標準型 (Karp・Gilliam型など) が70%と多かったが, Kawasaki型などの新しいタイプも認められた.結 語:近年の群馬県ではつつが虫病の発生が増加しており, その主因に利根沼田地域の発生増加が考えられる. 利根沼田地域の発生増加には河岸段丘農業地域における感染の拡大と感染率 (発生頻度) の増加, 気温上昇の影響が示唆される. 群馬県の有毒ツツガムシは血清タイプや発生月の推移から, フトゲツツガムシ (Karp・Gilliam型) によるものが主体で, 関東南部や九州に多いKawasaki型などを含むタイプとの混在も示唆される. 今後, 好発地域, 好発時期における地域住民に対する感染予防啓発が重要と考える.
著者
松崎 良美 猿木 信裕 松田 智大
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.247-260, 2020-04-15 (Released:2020-05-08)
参考文献数
31

目的 2013年に「がん登録等の推進に関する法律」(以下,「がん登録推進法」)が成立し,2016年1月に施行され,医療機関においてのがんの診断・治療に際して届出が義務付けられた。都道府県で同一患者に関する複数の届出を処理し,がんの罹患数を高い精度で把握するためには,名寄せが必要なため,個人情報の収集が欠かせない。がん登録の遂行をめぐり,財政的基盤が不足していたことに加え,「がん登録推進法」の成立過程では,個人情報保護が主論点となったが,国民のがん登録に対する関心の持ち方にも変化がみられた可能性がある。新聞メディアにおいて,がん登録に触れた記事の本数の推移を把握し,その内容がどのように変化したか記述し,検討を行う。方法 がん登録の標準化や精度向上が進捗したと考えられる第3次対がん10か年総合戦略が開始された2004年から2013年に発刊された主要紙5紙と地方紙50紙を対象に,株式会社ELNETが取り扱う新聞記事クリッピングサービスを用いて1)「がん and 登録」2)「がん and 統計」3)「がん and 対策」4)「がん and 情報」のキーワードを見出しまたは本文に含む記事を抽出したところ,960件が該当した。そのうち「がん登録」の文言を含む記事441件を分析対象とし,2004年から2008年に掲載された「前期」記事,2009年から2013年の「後期」に分け,新聞記事本文の計量テキスト分析を実施した。ソフトはKH Coderを用いた。結果 「がん登録」の文言を含む記事が最も多くみられたのは2006年で68件あり,次いで2011年の60件であった。とくに,がん登録2006年に多くみられた記事の多くは,法律制定にむけた動きの他に,がん登録データを用いた疫学調査の結果の公開と関連して,2011年については東日本大震災で発生した原発事故と関連してみられた。結論 「がん登録」の文言を含む記事数増加の背景には,がん登録を用いたデータ分析結果の公表,国民の不安や健康意識を高めるようなイベントの発生があった。例えば,地域や施設別生存率の提示や,がん発症が懸念されるイベントが挙げられる。これらのイベント発生ががん登録の重要性の認識に繋がったとも考えられる。
著者
長谷川 守 服部 卓 猿木 信裕 石埼 恵二 木谷 泰治 町山 幸輝 藤田 達士
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.85-91, 1996-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1

McGill Pain Questionnaire (MPQ) は多くの国で標準化された Pain Rating Scale (PRS) であるが, 言語や文化の違いから, わが国では, 標準化されていない. 今回, われわれは慢性疼痛患者105人を対象に Meizack らの方法論に準拠した日本語版MPQ (J-MPQ) (疼痛表現は佐藤らによる) と他のPRSを同時に施行しJ-MPQの信頼性と妥当性を検討した. さらにSTAI (State-Trait Anxiety Inventory: 状態-特性不安尺度) によって状態不安とJ-MPQ得点との関連性を検討した. 検討の結果, J-MPQの信頼性と妥当性は証明されPRSとしての有用性は確認された. 各 subscale 間は比較的高い相関があり, 痛みの構造を評価する尺度としては独立性に問題があることがわかった. そのため, 他のPRSと最も相関が高く, 各 subscale の総得点であるPRI-T (Total score of the Pain Rating Index) をPRSの代表として使用するのが望ましいと考えられた. また, STAIとJ-MPQには低い相関しかみられず不安とJ-MPQ得点との関連性は低いと考えられた.
著者
宮城 悦子 沼崎 令子 中西 透 片岡 史夫 猿木 信裕 井畑 穰 伊藤 則雄 吉田 憲生 新原 温子 村松 孝彦 今泉 明 山本 浩史 高須 万里子 光島 徹 杤久保 修 山門 實 青木 大輔 平原 史樹
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.749-755, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
17

目的:血漿中アミノ酸濃度はがんを含む各種疾患により変化する.血漿中アミノ酸プロファイルから健康状態や疾病の可能性を把握する「アミノインデックス技術」は複数がんのスクリーニング法として臨床実用化されている.本研究は多施設共同試験により3種の婦人科がん(子宮頸がん,子宮体がん,卵巣がん)の判別を行う指標式を「アミノインデックス技術」を用いて導出し,その有用性を検討することを目的とした.方法:複数施設で子宮頸がん患者208例,子宮体がん患者186例,卵巣がん患者102例,婦人科良性疾患患者305例,健康人1,631例を対象として採血し,血漿中アミノ酸濃度をLC-MSにより測定した.結果:3種の婦人科がん患者の血漿中アミノ酸濃度変化は共通性が高く,婦人科がんのいずれかに罹患している可能性を判別する一つの指標式を「アミノインデックス技術」を用いて導出し,その判別性能評価を行った.導出された指標式の特異度95%での感度は子宮頸がん52%,子宮体がん58%,卵巣がん77%であり,いずれもⅠ期症例から高い感度を示した.また,子宮頸がんでは腺癌も高い感度を示す,子宮体がんではCA125より有意に感度が高い,卵巣がんではCA125と同程度の感度を示すなどの特徴を有していた.結論:「アミノインデックス技術」により導出された,3種の婦人科がんのいずれかに罹患している可能性を評価する一つの指標式は,3種の婦人科がんの簡便な血液検査のスクリーニング法として有用であることが示唆された.