著者
千葉 雅俊
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.410-413, 2007-09-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
13

下顎歯槽部に発症した神経因性疼痛と考えられた症例に対して, 桂枝加市附湯とノイロトロピン®の併用療法が奏効したので報告する. 症例は36歳の女性で, 2年7カ月前に右下顎第一大臼歯の抜髄後に新たな痛みが右下顎歯槽部に発現し, 持続したので当科を紹介された. 右下顎歯槽部に持続的な自発痛があり, 触刺激によりアロディニアを生じていたので, 下歯槽神経損傷に起因する下顎歯槽部の神経因性疼痛と診断した. 漢方医学的には表寒虚証であったので桂枝加市附湯を投与し, ノイロトロピン®を併用した. 約8カ月後に軽度の歯槽部の違和感と歯肉の錯感覚が残存していたが, 痛みは消失した. 抜髄後の神経因性疼痛には, 桂枝加朮附湯とノイロトロピン®の併用を治療の選択肢の一つとして考慮してもよいと考えられた.
著者
小佐井 和子 宇野 武司 小金丸 美桂子 高崎 眞弓
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.26-30, 1999-01-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
15

目的: 神経因性疼痛患者に0.05%カプサイシン軟膏を塗布し, カプサイシン軟膏の鎮痛効果と副作用を検討した. 対象と方法: 従来の治療法で除痛困難であった患者12名, 帯状疱疹後神経痛 (PHN) 群6名と神経外傷後疼痛 (外傷後疼痛) 群6名を対象とした. 塗布前, 塗布中, 中止後の痛みの強さを, 0~100の Visual Analogue Scale (VAS: 0=痛みなし, 100=耐えがたい痛み) で比較した. さらに睡眠, 気分, 日常動作の変化, および塗布中の副作用を調べた. 結果: VASの中央値はPHN群で塗布前45, 塗布中10, 中止後10であり, 外傷群で塗布前80, 塗布中40, 中止後50で, 両群とも塗布中および中止後は塗布前に比較して有意に低下した (p<0.05). 睡眠, 気分, 日常動作の改善がそれぞれ42%, 75%, 58%で認められた. 軽度の皮膚剥離を1名に認めた以外, 重篤な合併症は認めなかった. 中止後, PHN群では痛みは変化しなかったが, 外傷群では痛みは少し増強した. 結論: 0.05%カプサイシン軟膏は, PHNおよび外傷後疼痛の治療に有効であることがわかった.
著者
田中 明美 津田 喬子 竹内 昭憲 笹野 寛 前田 光信
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.26-32, 2003-01-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
23

慢性難治性疼痛に, 他の要因による疼痛や心的外傷が加わったことを契機にして薬物依存に陥った2症例の治療を経験した. 症例1は38歳男性, 指の再接着術後の断端痛による慢性疼痛を抱えていたが, 転院を契機に右上肢の痙攣を伴う疼痛性障害が増悪して薬物依存になった. 症例2は56歳男性, 椎間板ヘルニアの手術後の failed back syndrome として慢性疼痛を治療していたところ, 交通事故による頸椎挫傷後に上下肢の痙攣を伴う疼痛性障害を発症して薬物依存になった. 両症例とも過去の他院麻酔科治療歴から, 神経ブロック治療による除痛が困難であると判断して薬物依存を絶つことに治療目標をすえ, 交感神経ブロック療法に加えて心理療法により病状の理解と疼痛の認知を行い, 定期的に通院治療を続ける適正な痛み行動へと導いた. その結果, 両症例は慢性疼痛を受容して, 薬物に依存する行動がみられなくなった. 慢性疼痛患者の疼痛制御には, 心理テストの結果を踏まえた心理療法が適切に行われるべきである.
著者
吉田 明子 加藤 正人 谷内 一彦
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.387-396, 2004-10-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
41

痛みの受容には多くの分子が影響を与えるが, ヒスタミンもその一つである. その作用点は, 一次性求心性神経線維と中枢ヒスタミン神経であるが, H1受容体はおもに一次性求心性神経線維上にあり, 末梢からの情報を脊髄や上位中枢へ効率よく伝達する役目を担っている. また脊髄や上位中枢にはH1受容体やH2受容体が存在して興奮性の作用を共同して担っている. とくに中枢ではH1, H2受容体ともに大脳皮質の機能賦活作用として覚醒や認知機能亢進に関与している. 最近, ヒスタミン関連遺伝子のノックアウトマウスが開発され小動物における生理学的・病態生理学的研究の新たな展開が進んでいる. 本総説では, 抗ヒスタミン薬を用いた薬物研究, 近年開発されたヒスタミン関連遺伝子ノックアウトマウス (H1, H2受容体ノックアウトマウス, ヒスタミン合成酵素ノックアウトマウス) を用いた研究, モルヒネなどのオピオイドと併用した疼痛研究の結果をもとに, 痛みの受容とヒスタミンの関与について概説する.
著者
裏辻 悠子 入江 潤 森川 修 伊福 弥生 末原 知美
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
The journal of the Japan Society of Pain Clinicians = 日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.361-366, 2011-09-25

各種有痛疾患(n=456)にトラマド-ルをシロップ製剤として経口投与し,鎮痛効果,至適維持量,副作用,安全性を検討した.痛みの程度が5段階の言語式評価スケール(verbal rating scale:VRS)で3以上の症例を検討の対象とした.トラマドールを0.5-2 mg/kg/日(分2-4)で服用を開始し,2日から84日後まで服用量を調節した.トラマドールの服用量は20-450 mg/日であった.全体の50%の症例で,痛みはVRSで2以下になった(38.2%は痛みが軽快し,トラマドールの服用が不要になり,11.8%ではトラマドールを服用し,痛みが軽減していた).トラマドールは,帯状疱疹,帯状疱疹後神経痛で有効例が多く,複合性局所疼痛症候群,血管病変,がん性痛では,他の薬剤や治療法へと変更した症例が多い傾向であった.トラマドールの服用後に,嘔気・嘔吐,ふらつき,便秘が生じたのは全体平均で2-12%であったが,重篤な副作用はなかった.トラマドールでは,侵害受容痛,神経障害痛ともに良好な鎮痛効果が得られたので,各種難治性の痛みの治療法の一つとして,幅広い臨床応用が期待される.
著者
滝本 佳予 西島 薫 森 梓 金 史信 小野 まゆ
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
2016

全身の痛みを中心とする多彩な症状を訴え心因性多飲を合併する患者に対し,薬物療法・認知行動療法と併せて行った,患者の語りの傾聴と対話を重視した診療が有用であった1例を報告する.症例は68歳の女性,全身の痛みを訴えて当科を紹介受診した.併存合併症として心因性多飲による低ナトリウム血症と意識混濁,むずむず脚症候群,過敏性腸症候群,睡眠障害,失立失歩があり,ドクターショッピングを長年続けた後の受診であった.患者の語りの傾聴と対話により,まず心因性多飲が改善した.次いで痛みの訴えを線維筋痛症・中枢感作性症候群と診断し薬物療法・認知行動療法を実施したところ,ドクターショッピングをやめ症状も軽減した."説明不能な"痛みの訴えはペインクリニックではたびたび遭遇する.器質的原因が明確ではない疾患の症状を一元的にとらえ,診断治療を行う役目を果たすためには,患者との語り合いにも問題解決への可能性があることが示唆された.
著者
森脇 克行 Syafruddin GAUS 須山 豪通 弓削 孟文
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.127-136, 2003-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
51

複合性局所疼痛症候群 (CRPS) では, 疼痛, 温度上昇, 浮腫, 関節可動域制限などの症状に伴って骨関節病変がしばしば認められる. 組織損傷後の骨病変として歴史的には Sudeck の骨萎縮と Charcot 関節が知られているが, これらの骨病変はCRPSの骨病変と同一の発生メカニズムによる可能性がある. 近年, 骨代謝の分子生物学が進歩し, CRPSの骨病変を分子生物学的に解明する糸口が見えてきた. 本稿では, 新しい知見をもとに, 骨病変と感覚神経から神経原性に放出されるニューロペプチド, 交感神経活動, 組織障害後に放出されるサイトカインや不動化との関係について考察した. 骨病変のメカニズムの解明はCRPSの病態生理学の理解と治療法の開発に有用と思われる.
著者
長谷川 守 服部 卓 猿木 信裕 石埼 恵二 木谷 泰治 町山 幸輝 藤田 達士
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.85-91, 1996-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1

McGill Pain Questionnaire (MPQ) は多くの国で標準化された Pain Rating Scale (PRS) であるが, 言語や文化の違いから, わが国では, 標準化されていない. 今回, われわれは慢性疼痛患者105人を対象に Meizack らの方法論に準拠した日本語版MPQ (J-MPQ) (疼痛表現は佐藤らによる) と他のPRSを同時に施行しJ-MPQの信頼性と妥当性を検討した. さらにSTAI (State-Trait Anxiety Inventory: 状態-特性不安尺度) によって状態不安とJ-MPQ得点との関連性を検討した. 検討の結果, J-MPQの信頼性と妥当性は証明されPRSとしての有用性は確認された. 各 subscale 間は比較的高い相関があり, 痛みの構造を評価する尺度としては独立性に問題があることがわかった. そのため, 他のPRSと最も相関が高く, 各 subscale の総得点であるPRI-T (Total score of the Pain Rating Index) をPRSの代表として使用するのが望ましいと考えられた. また, STAIとJ-MPQには低い相関しかみられず不安とJ-MPQ得点との関連性は低いと考えられた.
著者
清水 直子 田代 雅文 須加原 一博
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.138-141, 1998-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
8

異型狭心症の治療中に, 腹痛や腹部膨満などイレウス症状を繰り返し, 腹部症状が狭心症発作を誘発する症例を経験した. 持続硬膜外ブロックによって腹痛や腹部膨満などのイレウス症状はもちろん, 狭心症症状も著明に改善した. しかし, 硬膜外注入を停止するとイレウス症状の増悪だけでなく狭心症発作が頻発するため, 2カ月以上にわたって持続硬膜外ブロックによる管理を必要とした. 入院が長期にわたるため, 外泊および外来通院による管理を余儀なくされた. 硬膜外カテーテルの長期留置による効果の減少, 注入時の背部痛などが生じ, カテーテルを抜去せざるをえなくなった. 保存的治療にて症状が改善せず, 最終的に手術が施行された.
著者
大野 健次 延原 弘明 有村 聡美 唐澤 秀武 多久島 匡登 塩谷 正弘 井関 明生 森下 孝仁
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.92-96, 1996-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
16

目的: 三叉神経痛に対する小柴胡湯・桂枝加芍薬湯併用療法の有効性を調べるために visual analogue scale (VAS) と4段階評価を用いて prospective study を行った. 対象と方法: 特発性三叉神経痛患者13名を対象とした. 対象患者には朝夕の食前に, 小柴胡湯と桂枝加芍薬湯のエキス顆粒をそれぞれ1包ずつ服用させた. 投与前と2週間後に発作痛の強さをVASで評価し, 痛みの頻度および自覚症状の総合的な強さについて服用開始前を10とする numerical score で回答を求めた. また食事と洗顔について, (1)全く痛まない/(2)軽く痛むが支障なし/(3)痛いがなんとか可能/(3)痛くて不可能/の4段階評価を投与前と2週間後の時点で行った. 結果: 2週間後のVASは有意に低下した (p=0.0030). 食事・洗顔に際しての4段階評価も有意に改善した (それぞれp=0.0158, p=0.0021). 2週間後, 痛みの頻度は平均2.8に, 自覚症状の総合的な強さは平均3.6に低下した. 結論: 小柴胡湯と桂枝加芍薬湯の併用療法は発作痛の強さを軽滅し, その頻度を減少させた. また食事・洗顔に際しての痛みも軽減し, 自覚症状を全体として改善した. 本療法は三叉神経痛の薬物療法として有用であると思われた.
著者
岩倉 健夫 大城 宜哲 宮内 哲 時本 康紘 福永 智栄 柴田 政彦 柳田 敏雄 真下 節
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.46-50, 2003

右中足骨骨折後3週間のギプス固定により右足背部に allodynia を示した患者1名を対象として, allodynia 発現時の患側および健側への非侵害刺激, allodynia 消失後の患側への非侵害刺激に対する脳賦活領域を functional MRIを用いて比較検討した. 健側への刺激では第一次体性感覚野と頭頂連合野が, allodynia 消失後の患側への非侵害刺激では第一, 第二次体性感覚野が反応したのに対し, allodynia 発現時の患側への非侵害刺激では第一, 第二次体性感覚野, 島, 頭頂連合野, 前頭前野内側部, 前帯状回, 補足運動野など広い領域で信号の増強がみられた. allodynia は, 神経損傷後や組織障害後にみられる徴候の一つであるが, その痛覚認知機能はまだ明らかではない. 本症例でみられた腫脹, 皮膚温の上昇, allodynia などのCRPS type Iの症状は自然治癒したが, 初期にはCRPS type Iの症状がそろっており, 本症例でみられた allodynia はCRPS type Iと病態は共通している. 本研究によりCRPS type Iにみられた allodynia の痛覚認知機能を知るうえでの重要な知見が得られた.
著者
上野 博司 細川 豊史 山下 智充 廣瀬 宗孝 水野 省司
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.446-450, 2002

Epiduroscopy 施行時では, 癒着剥離のために比較的大量の生理食塩液 (以下: 生食) を硬膜外腔に注入するため, 脳脊髄圧が上昇し頭痛などの合併症が起こるとされている. われわれの施設ではこの合併症を予防するため, 頸部硬膜外カテーテルを挿入し硬膜外腔圧と頭痛発症との相関について検討を行っている. Epiduroscopy 施行中に頭痛を訴えた2症例につき, この頸部硬膜外腔圧変化曲線を解析, 検討した結果, 特に癒着剥離時の痛みに伴う体動, 癒着剥離後の生食の急速注入によって圧が過剰に上昇し, 80mmHg以上になると頭頸部の圧迫感や疼痛を訴えること, 生食の注入を一時的に停止すると1~2分以内に圧は元のレベルまで回復することなどが明らかになった. Epiduroscopy 施行時に頸部硬膜外腔圧をモニターしながら処置を行うことは, 脳脊髄圧元進に伴う合併症の発現とそのメカニズムの解明に有用と考えられた.
著者
水上 奈穂美 新谷 知久 山内 正憲 橘 信子 高橋 三佳 山蔭 道明
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
The journal of the Japan Society of Pain Clinicians = 日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.111-114, 2012-06-25

上腕骨悪性腫瘍に対して肩甲帯離断術を施行した患者における,術後の幻肢痛ならびに幻肢感覚に対してガバペンチンが奏効した3症例を経験したので報告する.症例1は切断後5日目にnumerical rating scale(NRS)で2-3/10の幻肢痛が出現し,オキシコドン(10 mg,分2)で対応したが,14日目より幻肢痛がNRSで8/10と増悪したためガバペンチン300 mg/日を開始したところ,痛みはNRSで0-1/10に改善した.症例2は切断前から腫瘍による神経障害痛が出現しており,ガバペンチン300 mg/日の投与によりNRSで5/10から3/10になり痛みの程度の改善を認めた.切断後9日目より生じた右上腕全体の幻肢感覚に対しても,同量のガバペンチンが奏効し幻肢感覚は消失した.症例3は切断後2日目より重量感を伴う幻肢痛が出現したが,ガバペンチン600 mg/日で痛みはNRSで6/10から2/10に改善した.四肢切断後の幻肢痛や幻肢感覚に対して,ガバペンチンは有効であることが示唆された.