著者
長谷部 育恵 楠見 孝
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.69-79, 2023-02-28 (Released:2023-03-31)
参考文献数
32

自分の脆弱性は低く見積もられる傾向がある.本研究では,脅威遭遇事例の被害者の違いによる受け手のリスク認知への影響を検討した.社会的比較理論の先行研究から,「親友の脅威遭遇事例のほうが見知らぬ一般人の事例よりもリスク認知を高める」(仮説1),「行動に落ち度のない他者の脅威遭遇事例のほうが,落ち度のある他者の事例よりもリスク認知を高める」(仮説2)と仮説を立てた.740名の参加者が食中毒に対するリスク認知を評定した後,脅威遭遇事例を読み,再度リスク認知を評定した.脅威遭遇事例に登場する被害者は,関係の有無(親友・一般人)と落ち度の有無の観点で操作した.その結果,行動に落ち度のない他者の脅威遭遇事例のほうが,落ち度のある他者の事例よりもリスク認知を高めた.さらに,相関分析の結果からは,類似した他者に同化して自己のリスク評定がなされると考えられた.被害者との関係性の有無による差はみられなかった.最後に,社会的比較理論の観点を中心に結果を考察した.
著者
長谷部 育恵 楠見 孝
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S42034, (Released:2018-10-04)
参考文献数
10

本研究では,学習者が学習教材を選択する際に,動機づけの高低によって,どのような特性をもつ教材を求めるのかを検討した.大学生と社会人400名が回答を行い,動機づけが低く動機づけ調整が必要な場面と動機づけが高く動機づけ調整が不要な場面のそれぞれについて,学習教材を構成する各要素をどの程度欲しいかを評定した.その結果,第一に,学習教材選択時の動機づけ調整の特徴とは,内容特性の低い学習教材を選択することであると示された.とりわけ,発展的な内容に対するニーズが低下していた.第二に,ニーズには個人差があり,動機づけの高いときには,動機づけにおける自律性が高い人ほど内容特性の豊かさを求めていることが示された.