著者
後藤 崇志 石橋 優也 梶村 昇吾 岡 隆之介 楠見 孝
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
2015

We developed a free will and determinism scale in Japanese (FAD-J) to assess lay beliefs in free will, scientific determinism, fatalistic determinism, and unpredictability. In Study 1, we translated a free will and determinism scale (FAD-Plus) into Japanese and verified its reliability and validity. In Study 2, we examined the relationship between the FAD-J and eight other scales. Results suggested that lay beliefs in free will and determinism were related to self-regulation, critical thinking, other-oriented empathy, self-esteem, and regret and maximization in decision makings. We discuss the usefulness of the FAD-J for studying the psychological functions of lay beliefs in free will and determinism.
著者
森本 裕子 渡部 幹 楠見 孝
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.108-119, 2008

We investigated how differently people punish a free-rider in three experiments. Experiment 1 was conducted to examine how individual levels of trust and self-fairness influence their punishing behavior in a 5-person social dilemma. The results showed that trustful and unfair people, as well as distrustful and fair people, punish a free-rider more. To account for these results, we carried out a vignette-type study in Experiment 2, in which participants rated how likely they were to engage in a variety of punishing behaviors that typically happen in the real world. A factor analysis indicated that people usually assign two different types of meanings to punishing behaviors. One is "Vengeance," which unfair people, regardless of their levels of trust, tend to inflict; the other is "Warning," which tends to be favored by fair people. The results of Experiment 3, another vignette study, showed that observers also consider Vengeance as unfair and Warning fair. These findings imply that participants assigned one of the two meanings to their punishments in Experiment 1 depending on their levels of trust.
著者
三浦 麻子 楠見 孝 小倉 加奈代
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.10-21, 2016-08-25 (Released:2016-08-25)
参考文献数
23

This study examined chronological changes in attitudes towards foodstuffs from the areas contaminated by the Fukushima Daiichi nuclear disaster, using citizens’ data (n=1,752) from the panel surveys conducted in 4 waves between September 2011 and March 2014. Using the dual process theory of decision-making, the study attempts an empirical examination that includes the interaction of two factors: (1) anxiety regarding the radiation risks of the nuclear accident, which is hypothesized to lead to negative emotional decision-making following the formation of relevant attitudes, and (2) knowledge, higher-order literacy, and critical thinking, which are hypothesized to promote logical decision-making. Until three years after the nuclear accident, there was no large chronological variation in either anxiety regarding the radiation risks of the nuclear accident or attitudes toward foodstuffs from affected areas. The tendency regarding the latter was particularly strong in areas far from the location of the disaster. Negative attitudes regarding foodstuffs from affected areas were reduced through the possession of appropriate knowledge regarding the effects of radiation on the human body. However, the belief of possessing such knowledge may, conversely, hinder careful consideration with appropriate understanding.
著者
楠見 孝 子安 増生 道田 泰司 Manalo Emmanuel 林 創 平山 るみ 信原 幸弘 坂上 雅道 原 塑 三浦 麻子 小倉 加奈代 乾 健太郎 田中 優子 沖林 洋平
巻号頁・発行日
2011-04-01 (Released:2011-04-06)

本年度は最終年度として,以下の3つの課題を実施し,市民のための高次リテラシーと批判的思考の観点からその成果を統合的に考察した。そして,5年間の成果を研究書『市民リテラシーと批判的思考』として出版した。課題1「市民リテラシーと批判的思考」は2テーマに分かれる。 課題1-1「市民リテラシーと批判的思考のアセスメント」では,メディア,統計,リスク,人口学,健康等の分野における市民リテラシーが批判的思考態度に支えられていることを,市民対象の調査によって明らかにした。あわせて,これらの高次リテラシーのアセスメントツールを開発した。課題1-2「批判的思考育成のための教育プログラム作成と授業実践」では,小学校の音楽,高校の探究学習,大学(教養,専門,外国語,教職教育)において,批判的思考向上のための学習者間インタラクションを重視した教育実践をおこないその効果を分析した。課題2「神経科学リテラシーと科学コミュニケーション」では,批判的思考を支える推論と情動について、哲学研究と神経生理学実験に基づいて検討した。また,市民を主体とする科学コミュニケーション活動の意義を,福島原発事故後の放射能リスクをトピックとして検討した。課題3「ネットリテラシーと情報信頼性評価」では,第一に,福島原発事故後の放射能リスクに関する情報源の信頼性評価とネットリテラシーの関連を,5年間のパネル調査に基づいて,時系列的に明らかにした。第二に,対人コミュニケーション場面での信頼感形成過程を長期にわたるコミュニティのテキストコミュニケーションから明らかにした。第三に,批判的思考を,情報通信技術を通じて行われる群衆の知性に基づいて検討するとともに,情報信頼性判断支援のための日本語文の事実性情報を自動解析する技術を開発した。
著者
後藤 崇志 楠見 孝
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.125-136, 2013

The purpose of this research was to investigate whether a decrement in self-control resources caused burnout among employees with different degrees of autonomy. We conducted a panel survey among 424 employees. The results revealed that 1) autonomy affected the relationship between controlling emotional sensations and burnout. Controlling emotional sensations increased burnout among employees with low autonomy, but not among those with high autonomy. Moreover, the results revealed that 2) autonomy did not affect the relationship between other self-control behaviors and burnout. We discussed why a decrement in self-control resources caused burnout and how autonomy affected it, by referring to the process of self-control based on the Limited Resource Model, cognitive control, and physiological underpinnings.
著者
小山内 秀和 楠見 孝
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.50-61, 2016-07-01 (Released:2016-06-04)
参考文献数
35

物語を読むときに読者が体験する「物語に入り込む」現象を示す概念として,近年「物語への移入」が注目されている。本研究では,Green & Brock(2000)が作成した物語への移入尺度と,さらにそれを元にAppel, Gnambs, Richter, & Green(2015)の提案した短縮版の日本語版をそれぞれ作成し,信頼性と妥当性の検討を行った。調査1(920名)および調査2(275名)の結果,日本語版移入尺度は高い信頼性を持つことが示され,並行して測定したイメージへの没頭尺度や文学反応質問紙(LRQ)との間に正の相関を示し,基準関連妥当性を有することが示唆された。しかしながら,予測された1因子モデルによって確証的因子分析を行った結果,オリジナルの移入尺度の適合度は低いものとなる一方,短縮版尺度の適合度は許容できる結果となった。二つの日本語版尺度は,因子構造についてさらに検討する余地があるものの,今後の心理学,文学研究への応用が期待できるツールと考えられる。
著者
栗田 季佳 楠見 孝
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.129-139, 2010-06-30

本研究では,近年用いられるようになった「障がい者」表記に注目し,ひらがな及び漢字の表記形態が身体障害者に対する態度に及ぼす影響について,接触経験との関連から検討することを目的とした。身体障害者に対する態度については,イメージと交流態度の2つの態度次元に着目した。SD法及び交流態度尺度を用いて,大学生・大学院生348名を対象に調査を行った。その結果,身体障害者イメージは身体障害学生との交流に対する当惑感を媒介として身体障害学生と交友関係を持つことや自己主張することに対する抵抗感に影響を与えることが示された。そして,ひらがな表記は接触経験者が持つ身体障害者に対する「尊敬」に関わるポジティブなイメージを促進させるが,接触経験の無い者が持つ尊敬イメージや,身体障害学生との交流に対する態度の改善には直接影響を及ぼすほどの効果を持たないことがわかった。身体障害学生との交流の改善には「社会的不利」「尊敬」「同情」を検討することが重要であることが本研究から示唆された。特に,身体障害者に対する「尊敬」のイメージの上昇は,接触経験の有無にかかわらず,交流態度の改善に影響を与えることが考えられる。
著者
米田 英嗣 仁平 義明 楠見 孝
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.479-486, 2005-02-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
15
被引用文献数
6 or 0

This study examined the cross-domain, anticipatory, and self-referential roles of affect (Miall, 1989) in reading short mystery novels. In Experiment 1, undergraduate students either read an entire story once or read the same story twice. During the first reading, these participants read only the first part of the story, and during the second reading, they read the entire story. They rated the importance of each sentence. Then they either described a prediction or their impression of the story. Finally, they created a title. In Experiment 2, the first group rated the importance of each sentence. The second group rated the feelings of understanding: forefeel, empathy, and a sense of strangeness. The results of both experiments showed that the relative importance of sentences shifted between first reading and second reading. As they read the end of the story, empathy increased but a sense of strangeness decreased. The results of description showed that the readers updated their interpretations in order to understand the story correctly.
著者
楠見 孝 米田 英嗣
出版者
日本認知心理学会
巻号頁・発行日
2017 (Released:2017-10-16)

日本全国の18歳から79歳の800人に対象にweb調査で、作品舞台を旅する「聖地巡礼」行動における作品世界への没入感を検討した.質問項目としては、物語理解における没頭尺度,移入尺度を旅行行動に対応するように改良し、あわせて、懐かしさ傾向、旅行行動などを測定した.その結果、アニメの作品舞台の旅行者は、小説舞台の旅行者に比べて,場面既知感が高いこと,場面既知感と作品世界への没入は相関が高いことが明らかになった。
著者
小山内 秀和 楠見 孝
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.50-61, 2016

物語を読むときに読者が体験する「物語に入り込む」現象を示す概念として,近年「物語への移入」が注目されている。本研究では,Green & Brock(2000)が作成した物語への移入尺度と,さらにそれを元にAppel, Gnambs, Richter, & Green(2015)の提案した短縮版の日本語版をそれぞれ作成し,信頼性と妥当性の検討を行った。調査1(920名)および調査2(275名)の結果,日本語版移入尺度は高い信頼性を持つことが示され,並行して測定したイメージへの没頭尺度や文学反応質問紙(LRQ)との間に正の相関を示し,基準関連妥当性を有することが示唆された。しかしながら,予測された1因子モデルによって確証的因子分析を行った結果,オリジナルの移入尺度の適合度は低いものとなる一方,短縮版尺度の適合度は許容できる結果となった。二つの日本語版尺度は,因子構造についてさらに検討する余地があるものの,今後の心理学,文学研究への応用が期待できるツールと考えられる。
著者
楠見 孝
出版者
日本サイエンスコミュニケーション協会
雑誌
サイエンスコミュニケーション : 日本サイエンスコミュニケーション協会誌 (ISSN:21874204)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.66-71, 2013-09

本論文では,心理学とサイエンスコミュニケーションの関係を2つの観点から論じた。第1の観点,サイエンスコミュニケーションへの心理学からのアプローチである。リテラシーを5つの階層に分け,科学リテラシーを,基礎的リテラシーと機能的リテラシーの2層を土台とする3層に位置づけた。これらは,教育によって順次形成される。さらに,科学リテラシーは,市民のための市民リテラシー,専門家のためのリサーチリテラシーという2層を支えている。サイエンスコミュニケーションにおいては,批判的思考の4つのステップ(情報の明確化,推論の土台の検討,推論,意思決定)が重要である。科学リテラシーと批判的思考を育成するためには,科学教育,博物館,科学ジャーナリズム,コミュニティさらにネットコミュニティの役割が大きい。そして,サイエンスコミュニケーションの研究のために心理学的研究法を適用することについて述べた。第2の観点,科学としての心理学におけるサイエンスコミュニケーションである。日本において,心理学が科学として扱われていない現状や,アカデミックな心理学とポピュラー心理学の乖離について市民を対象とした調査データに基づいて検討した。とくに,心理学は,市民が経験に基づいて豊富な素人理論をもっている。そのため,無知な市民に,科学的知識を提供するという欠如モデル的な考え方ではうまくいかないことを述べた。さらに,日本の博物館における心理学展示が少ない現状と,英国と米国の事例について紹介した。最後に,心理学とサイエンスコミュニケーションの両領域の共同による研究や実践の可能性について論じた。
著者
平山 るみ 田中 優子 河崎 美保 楠見 孝
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.441-448, 2010
参考文献数
27
被引用文献数
2 or 0

本研究では,批判的思考を支える能力を測定するための尺度としてコーネル批判的思考テスト・レベルZ(ENNIS et al.1985)を用いて,日本語版批判的思考能力尺度を構成した.まず,コーネル批判的思考テスト(ENNIS et al.1985)を日本語に翻訳し,その内的整合性および難易度を検討した.さらに,批判的思考態度尺度,および認知能力としての知能を測定する京大SXとの関係性を検討した.大学生43名に対し,批判的思考能力尺度,批判的思考態度尺度,認知能力尺度を実施した.そして,批判的思考能力尺度について検討した結果,尺度の内的整合性が得られ,課題の難易度は適切であることが確認された.また,批判的思考能力尺度得点と言語性の認知能力尺度得点との間には正の相関がみられ,この尺度には言語能力が関わることが示された.そして,批判的思考能力尺度と情意的側面を測定する批判的思考態度尺度とは,関係性がみられず,それぞれ独立した尺度であることが示された.
著者
楠見 孝
出版者
一般社団法人日本リスク研究学会
雑誌
日本リスク研究学会誌 (ISSN:09155465)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.29-36, 2013 (Released:2013-07-04)
参考文献数
25
被引用文献数
2 or 0

This paper discusses a general framework for examining the structure and the function of scientific literacy, which is an important element of risk literacy. There are five layers of literacy: (1) basic literacy for communication in documents; (2) functional literacy in everyday life and the workplace; (3) scientific and mathematical literacy, and media and Internet literacy for students and citizens; (4) civil literacy for citizenship; and (5) academic and research literacies for professionals and researchers. This paper focuses on the concept of scientific literacy as informed by Baltes’s five criteria of wisdom (Baltes & Smith, 2008): factual knowledge, procedural knowledge, contextualization, value-goal relativism, and recognition and management of uncertainty. In addition, scientific, media, and mathematical literacies are basic elements of risk literacy, as civil literacy is for citizenship. Risk-literate citizens can understand risk information and manage their risk. Four methods for improving the scientific and risk literacies of the public are discussed: science education, science communication by mass media, and practices of local and Internet communities.
著者
栗田 季佳 楠見 孝
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.129-139, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
44
被引用文献数
3 or 0

本研究では, 近年用いられるようになった「障がい者」表記に注目し, ひらがな及び漢字の表記形態が身体障害者に対する態度に及ぼす影響について, 接触経験との関連から検討することを目的とした。身体障害者に対する態度については, イメージと交流態度の2つの態度次元に着目した。SD法及び交流態度尺度を用いて, 大学生・大学院生348名を対象に調査を行った。その結果, 身体障害者イメージは身体障害学生との交流に対する当惑感を媒介として身体障害学生と交友関係を持つことや自己主張することに対する抵抗感に影響を与えることが示された。そして, ひらがな表記は接触経験者が持つ身体障害者に対する「尊敬」に関わるポジティブなイメージを促進させるが, 接触経験の無い者が持つ尊敬イメージや, 身体障害学生との交流に対する態度の改善には直接影響を及ぼすほどの効果を持たないことがわかった。身体障害学生との交流の改善には「社会的不利」「尊敬」「同情」を検討することが重要であることが本研究から示唆された。特に, 身体障害者に対する「尊敬」のイメージの上昇は, 接触経験の有無にかかわらず, 交流態度の改善に影響を与えることが考えられる。
著者
楠見 孝 田中 優子 平山 るみ
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.69-82, 2012 (Released:2013-12-27)
参考文献数
26
被引用文献数
5 or 0

This study reports the results of a learning program especially designed to improve critical thinking abilities of freshman undergraduate students. In this learning program, a variety of 90-minute activities was carried out with the help of worksheets that were used for(a) critical reading and discussion,(b) solving problems in three textbooks, (c) short presentation and small group discussion of controversial issues, (d) cooperative textbook reading by pairs, and (e) reflection about one’s own activities in a discussion. Two experimental class studies (Ns =20,18) examining the changes in students’ critical thinking ability, attitude, and knowledge due to this learning program over the period of one semester were carried out. The results of these two studies revealed that the scores of self-rated scales of critical thinking attitude, skills, knowledge, and perception of effectiveness, media literacy signi.cantly improved from the begin-ning to the end of the program. Although mean scores of the Watson-Glaser critical thinking appraisal did not significantly improve in Study 1, signi.cant improvement was observed in the scores of a new cognitive skill-based critical thinking ability scale in Study 2. Finally, the implications of this new learning program of critical thinking are discussed.
著者
楠見 孝 米田 英嗣 小島 隆次
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.415-424, 2008
被引用文献数
2 or 0

本研究は,教育用の3次元仮想空間オンラインチャットコミュニケーション・システムにアバターの表情機能を導入して,ユーザの会話に対する動機づけや相手の感情理解の精度に及ぼす効果とユーザビリティの評価に基づくシステムの改良を検討した.実験1では,15組の大学生ペアが,スマイリー入力表情システムと表情なしシステムの両方を用いて英語でチャットを行い,ユーザビリティを評価した.その結果,大学生のユーザビリティ評価においては,スマイリー入力表情システムの表情なしシステムに対する優位性を示すことはできなかった.そこでこのユーザビリティ評価に基づいて,スマイリー入力表情システムをアイコン入力表情システムに改良した.実験2では,16組の大学生ペアが,アイコン入力表情システムと表情なしシステムの両方を用いて日本語でチャットを行い,相手の感情を推測した.参加者の感情の推測はアイコン入力表情システムの方がより正確であった.最後にコミュニケーション・システムの改良に関する今後の課題を検討した.
著者
猪原 敬介 楠見 孝
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.100-121, 2012 (Released:2013-12-27)
参考文献数
45
被引用文献数
1 or 0

In the area of educational psychology, much research has suggested that habitual reading of texts improves people’s vocabulary (e.g., Stanovich, Cunningham, & West, 1998). However, there are few cognitive approaches addressing why reading texts changes readers’ vocabulary. Our study examined this issue by word association task and simulations through Latent Semantic Analysis (LSA; Landauer & Dumais, 1997). One thousand, one hundred and eighty-nine Japanese adults participated in our research through an internet website. Participants answered two questions about their reading habits of newspapers and novels, and then performed the word association task. We constructed three LSA semantic spaces drawn from corpora of newspapers, novels, and a corpus that includes both newspapers and novels. Participants were divided into four groups according to their reading habits-newspaper and novel readers, newspaper and novelonly readers, and non-readers. In each group, from each stimulus and associated word pair that participants generated, an association strength value, a newspaper-based LSA similarity value, a novel-based LSA similarity value, and newspaper/novel-based LSA similarity value were derived. We conducted two analyses: one between stimulus words and all associated words, and another between stimulus words and most frequently associated words. In both analyses, association strength value in the novelonly reading group was predicted best by the novel-corpora-constructed LSA. In addition, especially in the latter analysis, association strength value in the group who often read both newspapers and novels was predicted best by the LSA constructed from the newspaper/novel corpora. This data suggests that one reason why reading text affects readers’ vocabulary is that readers acquire knowledge by usage-based learning processes, such as LSA.
著者
後藤 崇志 楠見 孝
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.125-136, 2013-03-31 (Released:2017-03-03)

The purpose of this research was to investigate whether a decrement in self-control resources caused burnout among employees with different degrees of autonomy. We conducted a panel survey among 424 employees. The results revealed that 1) autonomy affected the relationship between controlling emotional sensations and burnout. Controlling emotional sensations increased burnout among employees with low autonomy, but not among those with high autonomy. Moreover, the results revealed that 2) autonomy did not affect the relationship between other self-control behaviors and burnout. We discussed why a decrement in self-control resources caused burnout and how autonomy affected it, by referring to the process of self-control based on the Limited Resource Model, cognitive control, and physiological underpinnings.
著者
栗田 季佳 楠見 孝
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.64-80, 2014

ノーマライゼーションや平等主義的規範が行き渡った今日においても, 障害者に対する偏見や差別の問題は未だ社会に残っており, これらの背景となる態度について調べることが重要である。従来の障害者に対する態度研究は, 質問紙による自己報告式の測定方法が主流であった。しかしながら, これらの顕在的態度測定は, 社会的望ましさに影響されやすく, 無意識的・非言語的な態度を捉えることができない。偏見や差別のような, 表明が避けられる態度を捉えるためには間接測定による潜在指標が有効だと考えられる。本論文は, 潜在指標を用いて障害者に対する態度を調べた研究についてレビューを行った。障害者に対する潜在指標として, 主に, 投影法, 生理学・神経科学的手法, さらに近年では反応時間指標が頻繁に用いられるようになってきており, 多くの研究において障害者に対するネガティブな態度が示されていることがわかった。潜在的態度と顕在的態度の関連性について, 潜在指標の有用性と今後の課題について議論した。