著者
門平 睦代 織田 銑一 酒井 健夫
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

2年間の研究期間中の研究対象地域は、1)愛知県(名古屋大学農学部付属農場周辺)、2)千葉県(農業共済家畜診療部門管轄地域、3)北海道(十勝支庁周辺)の3箇所であった。研究最終目的は、生産から販売までの「食の安全」の輪を、農家(生産者)レベルで確実なものとするための家畜飼養管理基準の構築である。しかし、農家毎に問題の種類も程度も異なるので、一律な家畜飼養管理基準での現場への対応は実践的ではない。そこで、この課題では、パイロット研究として、生産者のニーズを的確に把握し、その解決策を家畜保健所などの公共機関の職員(外部者)と農家が一緒になって探る過程が、問題の解決、ひいては生産性の向上へとつながることを提示することが重要な役割を持つ。共同研究者である堀北氏が所属する千葉県農業共済家畜診療部門との連携が十分に機能し、数々の事例を分析することができた。具体的には、2年目の後半に取り組んだ家畜保健所・コンサルタント事業を利用した活動では、参加型手法を使い、従業員全員で問題点を明確にし、解決策を提案し実践したところ、2ヶ月間という短期間に、搾乳頭数が増加し乳量が目的に達成したのに搾乳時間,は短くなり、乳房炎などの疾病発生数が減少し、仕事の連携が改善したという事例を生み出した。薬などの有害物質や資金を使わずに、農場内のコミュニケーション不足、獣医学的知見の一方的な指導、関係機関間の不十分な連携という問題点を改善したことによる成果である。つまり、「食の安全」に関連した健康的な管理飼養問題の解決方法の一例が提示できたわけである。千葉農業共済では上記の活動を平成18年度より正式な業務と認めた。今後は、堀北氏を中心にさらなる事例研究を全国レベルに拡大する。「ポジテイブ制度」など規制が増える昨今、生産者との協力関係を軸とした飼養管理基準の構築が急がれる。