著者
鶴田 歩 藤縄 理 大関 貴弘
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1538, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】足関節の背屈運動には,近位脛腓関節,遠位脛腓関節,距腿関節の3つの関節が関与している。これらの各関節の機能異常により足関節背屈可動域制限が生じ,関節モビライゼーション(Joint Mobilization:JM)によって,可動域制限を改善させるという報告が多い。しかし,背屈可動域制限にこれらの3つの関節が,それぞれどの程度関与しているのかを明らかにした報告はない。本研究の目的は,足関節背屈制限があり,且つ近位脛腓関節の制限がない対象者に対し,遠位脛腓関節と距腿関節にJMを個別に行い,それが足関節背屈角度に及ぼす影響を調査し,背屈制限への関与を検討することである。【方法】対象は,足関節背屈制限がある女子大学生(平均年齢:20.25±1.41歳)の両下肢,計40脚とした。除外基準は,下肢に急性期および亜急性期の整形外科疾患を有している者,進行性の下肢関節疾患を有している者とした。全被験者に対して足関節背屈可動域を測定し,近位脛腓関節,遠位脛腓関節,距腿関節の副運動検査を行った。これらの検査にて,近位脛腓関節に制限がない者を抽出し,グレードIIIの関節包ストレッチを実施する介入群,介入群と同様の手技で接触し,ストレッチを実施しない対照群に分類した。介入群では,遠位脛腓関節と距腿関節に対してJMを個別に実施した。各JM実施直後に,実施前と同様に背屈可動域を測定した。介入群-対照群の分類,各JMを施行する順番はランダムとした。また,背屈角度の測定は,足関節背屈角度測定器を製作し,信頼性を検定後(ICC(1,1):0.692~0.971,ICC(2,1):0.986),JM施行者とは異なる3名の検者によって測定した。分析は,正規性を確認後,全体的な変化量の比較には,介入群と対照群間,JM施行順序の違いの2要因について二元配置分散分析を,各関節の変化量の比較には,Mann-Whitney U-testを用いて検定した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を遵守し,対象者に対して本研究の目的,方法を書面および口頭にて説明し,文書により同意を得た。なお,所属施設の倫理委員会にて承認を得た(第25838号)。【結果】全体の背屈角度の変化量は,JM施行順序の違いによる有意差はなかったが,介入群では有意差に大きかった(介入群:対照群 右4.0±1.70°:0.7±1.16°,左5.3±2.98°:0.1±1.29°,p<0.001)。同様に,距腿関節の変化量は,介入群で有意差に大きかった(介入群:対照群 右1.9±1.29°:0.5±0.70°,左1.9±0.57°:0.3±1.16°,p<0.01)。遠位脛腓関節の変化量は,介入群で有意差に大きかった(介入群:対照群 右2.1±0.74°:0.2±1.14°,左3.4±3.31°:-0.2±0.92°,p<0.001)。全体的な変化量に対する,各関節の変化率を算出すると,距腿関節が約40%,遠位脛腓関節が約60%になった。【考察】一般的に足関節背屈制限に対しては,距腿関節を中心に背屈ストレッチを行うことが多い。しかし,今回の結果では,足関節背屈制限に対して,関節性の因子として距腿関節が約40%,遠位脛腓関節が約60%関与していた。遠位脛腓関節の関与がより大きくなったのは,同結合が線維性連結であり,背屈時に前方が広くなった楔状の距骨滑車が後方に入り込んでいくのを制限していたことが理由として挙げられる。JMによって遠位脛腓関節の副運動が増して背屈時に離解が大きくなり,距骨滑車がより後方へ滑りやすくなったためと推察できる。距腿関節はJMにより同関節の副運動が増して,距骨滑車がさらに後方へ滑走やすくなったと考えられる。このように,足関節背屈における関節性の制限因子としては,遠位脛腓関節の方が,より大きな制限因子であることが判明した。【理学療法学研究としての意義】足関節背屈可動域制限に対して理学療法を実施する場合,遠位脛腓関節と距腿関節の副運動と筋やその他の軟部組織の評価を適切に行う必要がある。その結果,関節性の制限因子がある場合は,筋性因子へのアプローチを行う前に,関節モビライゼーションを実施しなければならないことを示唆している。
著者
福村 浩一 中原 毅 小串 美由紀 倉持 龍彦 関 貴弘 堀井 京子 寺田 紀子 上野 信一 松井 則明
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.137, 2008

【はじめに】近年、携帯電話や電磁調理器具などの急速な普及により、それらから発せられる電磁波による健康への影響を不安視する声が聞かれる。透析装置においても電磁波を発する装置であり、透析患者は4~5時間装置の側での治療を余儀なくされる事から、透析中における装置からの電磁波の発生強度を測定し、その安全性を検討した。<BR>【目的】透析装置から出る電磁波を測定し、その数値からICNIRPの電波防護指針をもとに透析中の安全性を検討する。<BR>【方法】当院で用いられている透析装置(DCS-72、DCS-26、DCS-27、DBB-26、DBG-02、TR-3000M)の待機時(プライミング終了後)と作動時(透析中)に放出される電磁波の強度を、アルファラボ社製トリフィールドメーター100XEを用いて測定し、また患者の透析時における電磁波の暴露量(頭部、腹部、下肢)からその安全性を比較検討した。電磁波の測定方法は透析装置のディスプレイ画面より0cmから10cm間隔で電磁波の強度を測定し、最終的に測定表示が0になるまでの距離を測定した。<BR>【結果】DCS-72では待機時が、0~20cmで100mG以上、30cmで25mG、1.3mで0mGとなった。透析時では0~20cmで100mG以上、30cmで25mG、1.5mで0mGとなった。DCS-26では待機時が0cmで50mG、10cmで6mG、50cmで0mGとなった。透析時では0cmで100mG以上、10cmで50mG、90cmで0mGとなった。DBB-26、DBG-02ともに透析時では0cmで60mGと高い値を示したが、10cmでの測定値は一桁を示し、他の装置では0cmでも待機、透析時ともに低値を示し、待機時で30cm、透析時で40~60cmで0mGとなった。又、患者の頭部、腹部、下肢で透析時に受ける電磁波の強度を測定した結果、頭部で0~2mG、腹部、下肢では0~0.5mGであった。<BR>【考察】測定の結果からICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)の定めた国際ガイドライン値(安全値4mG未満、許容値16mG未満)に当て嵌めると医療従事者が通常の操作をするパネルからの位置では、測定結果から特に問題はないと思われ、透析中における患者についても安全性をクリアしていると思われた。<BR>【まとめ】電磁波については、生体に影響が有る、無いの二極論があるが、実際に「電磁波過敏症」と呼ばれる諸症状がある事も事実であり、長時間装置の側で治療を受ける透析患者の電磁波の暴露量は重要であり、科学的根拠がなくても事前回避の措置を定めるという原則の考えが重要であると考えられた。
著者
関 貴弘
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.145, no.4, pp.206-210, 2015 (Released:2015-04-10)
参考文献数
15

細胞内タンパク質分解系の一つであるオートファジー・リソソーム系にはリソソームに基質を運ぶ経路の違いにより,マクロオートファジー(MA),ミクロオートファジー(mA)およびシャペロン介在性オートファジー(CMA)の3種類が存在している.これら3種類のうち,MAは特異的活性マーカーであるLC3-IIの発見を契機に,研究が爆発的に進展し,生理機能や疾患発症への関与が次々と明らかになっている.一方で,mAは酵母では研究が進んでいるものの,哺乳細胞におけるmAの実態は不明なままである.CMAについてはHsc70やLAMP2Aといった関連する分子は解明されたが,有用な活性マーカーがなく,簡便な活性評価法も存在しないため,MAに比べて研究が遅れを取っている.しかし,CMAは①細胞質タンパク質の30%が基質となる,②他の分解系と異なり哺乳細胞しか存在しない,という特徴を持っておりCMAは哺乳細胞の機能維持に不可欠であり,CMAの破綻が様々な疾患発症に繋がる可能性は高い.我々はCMAの基質として知られているGAPDHに多機能ラベリングシステムであるHaloTagを融合したものをCMAマーカーとし,蛍光顕微鏡で簡便にかつ一細胞レベルで詳細にCMA活性を評価することが可能な新規活性評価法を開発した.この新規CMA活性評価法はCMAの生理機能や疾患発症への関与解明に大きく寄与することが期待される.本稿はこの新規CMA活性評価法の詳細とこれを応用した神経変性疾患モデルにおけるCMA活性評価を行った結果を紹介する.
著者
天野 託 関 貴弘 松林 弘明 笹 征史 酒井 規雄
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.126, no.1, pp.35-42, 2005 (Released:2005-09-01)
参考文献数
17

メタアンフェタミン(MAP)を5日間反復投与し,側坐核ニューロンと腹側被蓋野ドパミンニューロンのドパミンレセプターに対する感受性を検討した.MAP最終投与後5日後では,生体位の実験において,マイクロイオントホレーシスにより投与したドパミンおよびMAP対し,側坐核のニューロンは過感受性を示した.また,スライスパッチクランプ法を用いた実験でも,生体位と同様にD2レセプターに対する感受性の亢進が起こっていた.腹側被蓋野ドパミンニューロンのD1およびD2両レセプターもドパミンに対する感受性亢進が起こっていることが,スライスパッチクランプ法を用いた検討でも明らかになった.さらに,最終投与後5日後において,実験終了後のピペットから回収したmRNAをRT-PCRにより増幅した結果,側坐核ニューロンにはドパミンD1およびD2LレセプターのmRNAが存在していたが,両受容体のmRNAの発現パターンは生食投与群およびMAP投与群で,変化は認められなかった.以上の事から,MAP反復投与により,腹側被蓋野ドパミンおよび側坐核ニューロンにおいてドパミンレセプターの過感受性が起こると考えられる.しかし,ドパミンレセプターサブタイプの分画に変化がなく,おそらく細胞表面で作用するD2レセプター密度の増加か,細胞内伝達系の変化によりD2レセプターの機能が亢進している可能性が考えられる.MAPによるD2レセプターの感受性の変化にプロテインキナーゼC(PKC)が関与しているかをGFP標識PKC(PKC-GFP)のトランスロケーションをコンフォーカルレーザー顕微鏡下に観察し検討した.MAPの急性投与はSHSY-5Y細胞においてPKC-GFPのトランスロケーションを引き起こさなかった.
著者
笠 純華 倉内 祐樹 田中 理紗子 春田 牧人 笹川 清隆 関 貴弘 太田 淳 香月 博志
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学会年会要旨集 第94回日本薬理学会年会 (ISSN:24354953)
巻号頁・発行日
pp.3-P1-07, 2021 (Released:2021-03-21)
被引用文献数
1

Migraine is a common neurovascular disorder characterized by severe headaches and is associated with dysfunction of the autonomic nervous system. Notably, some patients who have migraine seem to be more sensitive to changes in the weather such as atmospheric pressure and humidity. Here, we investigated the effect of Goreisan, a traditional Kampo medicine used to treat headaches, on the cerebral blood flow (CBF) dynamics by using implantable CMOS imaging device for detecting hemodynamic signal in female meteoropathy model mice. Moreover, we evaluated the effect of loxoprofen, an analgesic used to treat headaches, on the CBF changes and compared it to the effect of Goreisan. To reproduce the change of the weather, atmospheric pressure was lowered by 50 hPa and kept this level for 1 h and it was returned to the previous level. We observed the increase in CBF during low atmospheric pressure, which was prevented by Goreisan (1 g/kg, p.o.) as well as loxoprofen (4 mg/kg, p.o.). Although CBF gradually recovered to baseline after returning to normal atmospheric pressure, Goreisan, but not loxoprofen, lowered CBF below baseline. These results suggest that Goreisan is the headache therapeutic drug with a different action profile from loxoprofen in that it has a mechanism to actively reduce cerebral blood flow.