著者
関谷 隆夫
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.44, no.7, pp.867-874, 1992
被引用文献数
1

当科不妊外来を受診し機能性不妊と診断された38例について, 治療前の子宮内膜の厚さと質を超音波経膣走査法で経日的に観察し, 同時に最大卵胞径, 血中estradiol, progesterone値を測定して, 不妊治療の予後との関連を検討した. 内膜の厚さは子宮の正中縦断像の最大前後径とし, 内膜の質は増殖期後期では均一低輝度型(P_1)と混合型(P_2), 分泌期中期では均一高輝度型(S_1)と混合型(S_2)の, 計4型に分類した. また分泌期中期に混合型内膜像を呈した症例について組織学的検討を行つた. 1. 子宮内膜の厚さ, 最大卵胞径, 血中estradiol, progesterone値と不妊治療の予後 1) 子宮内膜の厚さは, 妊娠群では増殖期中期から分泌期中期にかけて9.7±1.4mm (mean±SD)から13.9±1.7mmに, また非妊娠群では同じく6.7±1.8mmから10.1±2.2mmと, 次第に厚くなるものの, 後者は前者に比して有意に薄い内膜を有していた (p<0.05). 2) 血中estradiol, progesterone値および最大卵胞径は, 両群の間に有意の差がなかった. 2. 子宮内膜の質と不妊治療の予後 1) 増殖期では内膜の質と不妊治療の予後に差がなかつた. 2) 分泌期中期内膜像がS_1であった群とS_2であった群を比較すると後者で有意に非妊娠群が多かった (p<0.05). 3) 血中estradiol, progesterone値は各内膜パターン群の間で有意の差がなかつた. 3. 分泌期中期内膜像が混合型(S_2)を呈した症例の組織学的検討 3例中2例において組織学的所見と超音波学的所見が平行してみられた. つまり, 超音波学的にhyperechoicに描写される部位では腺管の拡大と迂曲が高度に認められ, hypoechoicに描写される部位では逆に腺管の拡大と迂曲が乏しい所見が認められた. 以上の結果より, 正常に比して薄い内膜を有する症例や, 分泌期中期に混合型内膜像を呈する症例は, 血中estradiolやprogesterone値にかかわらず妊卵着床には不適当と考えられた. 超音波経膣走査法は非侵襲的で簡便な検査法であり, 子宮内膜を評価し不妊治療の予後を推定するのに大変有用と考えられた.
著者
田中 正俊 和田 直久 関谷 隆夫 大野 真也
出版者
横浜国立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本年度の研究計画に従って、原子層単位で酸化したSi(001)表面や表面修飾により仕事関数を変化させたSi(001)表面上にGFP、ルシフェラーゼ極薄膜を作成して蛍光、生物発光の測定を試みたが,共に変化は確認されなかった.しかし,下記のような系においては,分子の荷電状態により発光色が変化する現象を見出すことができた.1.caged ATPを用いてルシフェリン-ルシフェラーゼ反応による生物発光を起こさせると,caged ATPから放出された2-ニトロアセトフェノンによりルシフェラーゼの活性部位の荷電状態が異なり,通常の黄緑色ではなく赤色の発光を放出する.2.GFPに静水超高圧を印加すると分子の圧縮効果により蛍光ピーク波長が短波長側へシフトするが,IGPa付近では発色団から周囲のアミノ酸残基へ電荷が移動することにより,このシフトが相殺される.3.より単純なa-sexithiophene分子を様々に表面修飾したSi(001)表面上に供給すると,仕事関数の変化に呼応して分子から表面への電荷移動量が,そしてその結果としてπ→π*遷移のエネルギーが変化する.以上の結果は,もっと多量な分子を表面修飾したSi(001)表面上に供給できれば発光色の変化を観測できることを示しており,本研究の目的であった「荷電状態をチューニングすることにより光スペクトルを制御し、新規なバイオ光デバイスを開発できる」可能性を初めて明らかにしたものである.