著者
鈴村 正勝 三井 武 菊池 三郎 佐治 正敬 市橋 進
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.305-310, 1965-04

我々はパルトグラムを用いて分娩経過を分析し2, 3の知見を得たので報告する. 即ち分娩第1期の所要時間については初産婦では従来の成書とほゞ一致しているが経産婦はやや長時間を要した. 分娩第2期の所要時間について我々の症例では初経産婦共に著しく短縮されている. 子宮口開大度についてみると斜めJ型が描かれている. 児頭下降時の子宮口は全開大より早い時期, 即ち子宮口4~5cm開大時に開始する. 破水は子宮口全開大後行われると記載されているが, 今回の調査では子宮口開大平均7.0~8.7cmに於いて破水する. 娩出期は従来分娩第2期と同意語で子宮口全開大より児娩出迄の時期とされているが, パルトグラムによる観察では児頭下降開始が子宮口4~5cmで行われており, 児に及ぼす影響と云う点から考えると, 実際に重要なのは胎児が産道の抵抗を排除しつつ下降して娩出する迄の時間であって, これを娩出期と定義したい. この新しい定義の娩出期においては胎児先進部下降開始から子宮口全開大までの時間が分娩第1期, 即ち開口期と重なるわけである. このように定義した娩出期は胎児にとってその長短が予後決定上極めて重要なものと考えられる.
著者
松尾 健志 石原 楷輔 菊池 三郎
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.603-610, 1991-06-01
被引用文献数
1

妊娠中期に超音波検査で前置胎盤と診断される症例の頻度が分娩時に比し異常に高いといわれ, その理由はいまだ不明な点も多い. そこで経腹・経直腸および経腔の各走査法で本症診断の基本となる頚管像検出能を比較検討し, さらに妊娠中期に前置胎盤と診断された症例の超音波所見について経時的検討を行ない上記理由の解明を試みた. 1. 各走査法による頚管像検出能 : 1) 頚管像の検出率は, 妊娠12〜23週では経腹走査法52.0〜62.5%に比し経直腸・経腔走査法ではそれぞれ85.7〜87.5%, 100%であつた. 2) 経腹走査法では子宮峡部を同定できなかつた. 2. 前置胎盤と診断された症例における超音波所見の経時的変化 : 1)経直腸走査法による観察 (1) 妊娠16〜20週において, 経腹走査法で胎盤位置を診断した965例のうち低置, 前置とされた64例, 12例は, 経直腸走査法では低置43例 (4.5%), 前置4例 (0.4%)と診断された. (2) 前置と診断された4例は以後分娩時までその位置診断に変更がなく帝切時に前置胎盤と確認された. (3) 低置から正常位へ診断が変更された症例の頻度は妊娠32週未満では79.1%で, それ以後の11.1%に比し有意に高かつた (P<0.05). 2)経腔走査法による観察 (1) 妊娠13〜20週において胎盤位置を診断し, 261症例のうち低置および前置はそれぞれ18例 (6.9%), 13例 (5.0%)で前置は全例に峡部像を認めた. (2) 峡部が全例消失した妊娠22週までには前置は2例 (0.8%)のみとなり, 以後分娩時までその位置診断に変更はなく帝切時に前置胎盤が確認された.(3) 低置18例のうち分娩時までに診断が変更された症例の頻度は88.9%であつた. 以上より, 妊娠中期に前置胎盤と診断される症例の多くは, 頚管像検出能が低い経腹走査法により, 子宮下節伸展に伴い内子宮口との位置関係が変化しやすい低置胎盤を前置胎盤と誤認した症例であり, 一部に子宮峡部消失前の診断例も含まれていたと考えられた.