著者
阿形 亜子 釘原 直樹
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.108-115, 2014 (Released:2014-03-18)
参考文献数
27

近年,好ましい人物であるとの評判を獲得できることが向社会的行動を引き出すという競争的利他主義(Van Vugt, Roberts, & Hardy, 2007)が,多くの研究で注目を集めている。そこで本研究では,個人の貢献にともない評判が形成されうる状況がパフォーマンスを促進するかどうかを検討した。発展途上国に寄付する物品を作成する場面を用いて,貢献量を他者に呈示できる個人条件と,自己の貢献量が提示できない集団条件を設定し,実験をおこなった。併せて,作業量に伴って参加者自身に金銭報酬が与えられる物質的報酬条件との比較をおこなった。その結果,寄付物品作成場面を用いた潜在的報酬条件において,集団条件よりも個人条件でパフォーマンスが高まり,評判が形成されうる状況が寄付行動を促進することが示された。一方,潜在的報酬条件と物質的報酬条件の間で,パフォーマンスに差はみられなかった。最後に,実験操作の問題点について考察し,向社会的行動の促進要因としての評判の効果について議論をおこなった。
著者
大工 泰裕 阿形 亜子 釘原 直樹 Agata Ako Kugihara Naoki Daiku Yasuhiro ダイク ヤスヒロ クギハラ ナオキ アガタ アコ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.16, pp.21-26, 2016-03

Currently,scams are one of the biggest social problems in Japan.This study investigates whether empathetic observation increases individuals'awareness of their own vulnerability to scams.Moreover, we compared individuals'evaluation of imagined others' vulnerability to that of their own vulnerability.We presented two fraud scenarios (scenarioA and scenarioM)to university students and asked them to rate the victim's responsibility for being defrauded and their own or imagined others'vulnerability to scams. A2×2 between-participants design was used to analyze the relationship between empathetic observation (empathetic,non-empathetic)and the target of vulnerability evaluation(self,others).The results of an ANOVA revealed that empathetic observation did not affect attribution; therefore, the possibility of a failed manipulation was implied. As for vulnerability awareness,the interaction effect was significant in scenario M,which contrasted our expectations. Problems and implications are discussed.詐欺被害が近年大きな社会問題となっており、関係各所が様々な対策を講じているものの一向に問題が解決する気配はみられない。その原因として、詐欺に対する脆弱性認知が十分に向上していないことが考えられる。本研究ではそのような背景を踏まえ、詐欺被害事例を読んだ際に被害者に共感的観察を行うことが、詐欺に対する脆弱性認知を向上させるのかということについて、2種類の詐欺被害事例(事例A, M)を用いた質問紙によって検討した。また、同時に他者に対する脆弱性も評価させ、自己に対する脆弱性認知との比較も試みた。その結果、共感的観察の操作に問題があった可能性が示唆され、事例Aでは脆弱性認知の変化は見られなかった。一方、事例Mでは当初の予測とは異なり、共感的観察が逆効果となる可能性が示唆された。今後は、より統制された状況の設定や、新たな共変量を加えたモデルの開発などさらなる検討が必要とされる。