著者
釘原 直樹 Kugihara Naoki クギハラ ナオキ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.14, pp.1-15, 2014-03

スケープゴーティングとは、何らかのネカティブな事象が生起、あるいは生起が予見されている際に、事態発生や拡大・悪化に関する因果関係・責任主体が不明確な段階で、原因や責任をある対象に帰属したり、その対象を非難することが、一定の集合的広がりをもって行われることである。また因果関係の枠外にある対象に対する責任帰属や非難、そしてそのような認知や行為が共有化されていくプロセスもスケープゴーティングに含める。このスケープゴーティングにおいて、対象となるものをスケープゴートと呼ぶ。ここでは、スケープゴーテイングの発生プロセスに関するモデルを構成し、さらにスケープゴーティングを促進するマスメディアの報道特性やスケーフゴートの時間経過による変遷プロセス(波紋モデル)について述べる。The scapegoating was typical kinds of collective attribution of causes and responsibility and blaming a certain targets when people perceive that negative events occurred in past or will occur in the future. The targets of scapegoating may be selected on the basis of ambiguous or no causal relationship to the negative event. Here I proposed a total scapegoating model and discussed characteristics of mass media publicity. And finally, a scapegoat transition model (the ripple widening model) was presented.
著者
今村 夕貴 釘原 直樹 イマムラ ユキ クギハラ ナオキ Imamura Yuki kugihara naoki
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.16, pp.47-52, 2016-03

本研究は、Bem(2011)の予知的恐怖回避実験の結果を再検討することを目的とした。Bem(2011)の研究については、これまで多くの追試が行われている。しかしながら、一貫した結果は得られていない。Galak, Leboueuf,Nelson&Simmons(2012)は、Bem(2011)による実験の結果は参加者数の過多による帰無仮説の誤棄却であると主張している。したがって本研究では、実験参加者数を減らし、Bem(2011)の主張を再検討した。加えて、山羊・羊効果(Schmeidler,1945)から、超心理現象を信奉する程度が実験結果に影響すると考えられる。そのため、超自然現象信奉尺度(中島・佐藤・渡邊,1993)得点と参加者が予知能力の信奉する程度を分析に用い、Bem(2010)の主張を詳細に検討した。結果、実験条件間に有意な差は認められず、Bem(2011)の研究は再現されなかった。The purpose of the study was to reexamine the experiment of precognitive avoidance of negative stimuli (Bem,2011).Although, several researchers have attempted to replicate the results of Bem's study,they have had inconsistent results.Galak,Leboueuf,Nelson&Simmons(2012)criticized that the result of Bem's study was derived from large sample size and false rejection of null hypothesis. Therefore, we reexamined Bem's study by assembling adequate number of participants. In addition,because the degree of believing in psi is said to have effects on precognitive ability(sheep-goat effect(Schmeidler,1945)),we me asured the score of Paranormal Belief Scale(Nakajima,Sato&Watanabe,1993)and compared the performance of participants who have different level of believing in psi.Our results did not match those reported by Bem;thus,we were not able to replicate the 2011 precognitive ability study.
著者
釘原 直樹 クギハラ ナオキ Kugihara Naoki
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.1-15, 2014

スケープゴーティングとは、何らかのネカティブな事象が生起、あるいは生起が予見されている際に、事態発生や拡大・悪化に関する因果関係・責任主体が不明確な段階で、原因や責任をある対象に帰属したり、その対象を非難することが、一定の集合的広がりをもって行われることである。また因果関係の枠外にある対象に対する責任帰属や非難、そしてそのような認知や行為が共有化されていくプロセスもスケープゴーティングに含める。このスケープゴーティングにおいて、対象となるものをスケープゴートと呼ぶ。ここでは、スケープゴーテイングの発生プロセスに関するモデルを構成し、さらにスケープゴーティングを促進するマスメディアの報道特性やスケーフゴートの時間経過による変遷プロセス(波紋モデル)について述べる。
著者
武藤 麻美 釘原 直樹 Muto Mami Kugihara Naoki ムトウ マミ クギハラ ナオキ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.12, pp.173-181, 2012

本研究は、(1)異なる価値観を有する内・外集団ターゲットへの心理的距離の延伸と、印象評価の切り下げとが連関するか否かについての検証、(2)その連関は、認知者が保有するターゲットに対する期待値と、現実値との乖離が大きい場合に、顕著に出現することの検証、を目的とした。実験デザインは、2(戦争反対意見, 戦争賛成意見) × 2(内集団: 日本人, 外集団: 米国人)の参加者間計画とした。結果は次のとおりである。(1)戦争反対条件で、ターゲットに対する距離の短縮化と印象評価の上昇がみられた、(2)戦争賛成反対の両条件とも、外集団ターゲットよりも内集団ターゲットで、距離の延伸と印象評価の低下がみられた、(3)心理的距離と印象評価の変動は類似の傾向を示した。これらの結果について考察を行う。
著者
釘原 直樹 Kugihara Naoki クギハラ ナオキ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.15, pp.1-6, 2015

災害や緊急事態の人間行動に関する研究結果は人々の一般的イメージ(パニックや反社会的行動の発生)とは異なる。実証的研究データの多くが、人は緊急事態では人間関係や社会規範に基づいた順社会的行動をすることを示している。ここでは、実証的研究の結果に基づき危機事態の行動や意思決定について述べることにする
著者
正高 杜夫 釘原 直樹 Masataka Morio Kugihara Naoki マサタカ モリオ クギハラ ナオキ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.15, pp.95-99, 2015-03

本研究は、集団形成の過程の違いが、内集団バイアスに与える効果について吟味する。具体的には、実験室において形成された最小条件集団から、同様の手続きを用いてさらに集団を分割する事により、集団の形成過程を再現した。実験の結果、内集団バイアスにおける否定的認知傾向(外集団蔑視)が集団形成の過程で生起することは示されなかった。一方、集団形成の過程において、内集団への好意的行動傾向(内集団ひいき)が変化することが明らかになった。以上の結果より、集団間の境界の明確さが内集団ひいき行動に影響を与えることが示唆された。
著者
釘原 直樹 クギハラ ナオキ Kugihara Naoki
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-6, 2015-03-31

災害や緊急事態の人間行動に関する研究結果は人々の一般的イメージ(パニックや反社会的行動の発生)とは異なる。実証的研究データの多くが、人は緊急事態では人間関係や社会規範に基づいた順社会的行動をすることを示している。ここでは、実証的研究の結果に基づき危機事態の行動や意思決定について述べることにする。
著者
竹内 穂乃佳 釘原 直樹 Takeuchi Honoka Kugihara Naoki タケウチ ホノカ クギハラ ナオキ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.16, pp.27-32, 2016-03

Previous studies have revealed that observer's tendencies to attribute to unfortunate victims is affected by the victims'environments and by their willingness to resist disaster. A number of scholars tackle this issue in America, after 9.11,however, this topic has not been very thoroughly studied in Japan. In this study, we used 3 terms ("fault","carelessness"and"responsibility")to study, whether blame attribution differed between case of murder and terrorism.A2×2×2 mixed design (will vs. no will)×(high risk vs.low risk of encountering disaster)×(murder vs.terrorism)was used.The results revealed that in concerning"fault",observers attribute more blame to the victims in both the will and high risk conditions.Furthermore,in the case of the term"careless",observers attribute more blame to victims in the low risk and murder conditions. However, concerning"responsibility", observers'attributions did not differ between any of the conditions. These results suggest observers'blame attribution was influenced by the attaching of labels (fault, carelessness, and responsibility) to the victims'behaviors.従来、第三者の災害被害者に対する責任帰属は本人の抵抗の意思や周りの環境によって変化するといわれてきた。この問題に関してアメリカでは9.11テロ事件以降研究が増加した一方で、日本での研究はほとんど行われていないのが現状である。そこで、本研究では帰属ラベルに「落ち度」、「隙」、「責任」を用い、さらにテロと殺人によって責任帰属が異なるのか否か検討をした。本研究の実験デザインは(被害者の意思(事件現場に自発的に行ったか否か):有条件・無条件)×(災害に遭遇する可能性:高条件・低条件)×(災害の種類:殺人条件・テロ条件)の3要因混合計画であった。その結果、被害者の自発的意思有条件の方が無条件よりも、災害に遭遇する可能性高条件の方が低条件よりも被害者に「落ち度」があるとされた。さらに災害に遭遇する可能性が低い場合には殺人条件の方がテロ条件よりも「隙」があるとされた。一方、帰属ラベルが「責任」の場合は条件間の差異は見出されなかった。以上から、帰属ラベルがテロ被害者への責任帰属に影響を与えることが示唆された。
著者
大工 泰裕 阿形 亜子 釘原 直樹 Agata Ako Kugihara Naoki Daiku Yasuhiro ダイク ヤスヒロ クギハラ ナオキ アガタ アコ
出版者
大阪大学大学院人間科学研究科対人社会心理学研究室
雑誌
対人社会心理学研究 = Japanese journal of interpersonal and social psychology (ISSN:13462857)
巻号頁・発行日
no.16, pp.21-26, 2016-03

Currently,scams are one of the biggest social problems in Japan.This study investigates whether empathetic observation increases individuals'awareness of their own vulnerability to scams.Moreover, we compared individuals'evaluation of imagined others' vulnerability to that of their own vulnerability.We presented two fraud scenarios (scenarioA and scenarioM)to university students and asked them to rate the victim's responsibility for being defrauded and their own or imagined others'vulnerability to scams. A2×2 between-participants design was used to analyze the relationship between empathetic observation (empathetic,non-empathetic)and the target of vulnerability evaluation(self,others).The results of an ANOVA revealed that empathetic observation did not affect attribution; therefore, the possibility of a failed manipulation was implied. As for vulnerability awareness,the interaction effect was significant in scenario M,which contrasted our expectations. Problems and implications are discussed.詐欺被害が近年大きな社会問題となっており、関係各所が様々な対策を講じているものの一向に問題が解決する気配はみられない。その原因として、詐欺に対する脆弱性認知が十分に向上していないことが考えられる。本研究ではそのような背景を踏まえ、詐欺被害事例を読んだ際に被害者に共感的観察を行うことが、詐欺に対する脆弱性認知を向上させるのかということについて、2種類の詐欺被害事例(事例A, M)を用いた質問紙によって検討した。また、同時に他者に対する脆弱性も評価させ、自己に対する脆弱性認知との比較も試みた。その結果、共感的観察の操作に問題があった可能性が示唆され、事例Aでは脆弱性認知の変化は見られなかった。一方、事例Mでは当初の予測とは異なり、共感的観察が逆効果となる可能性が示唆された。今後は、より統制された状況の設定や、新たな共変量を加えたモデルの開発などさらなる検討が必要とされる。