著者
青木 京子
出版者
佛教大学大学院
雑誌
仏教大学大学院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
no.29, pp.41-51, 2001-03

「魚服記」の素材は、伝説「甲賀三郎」も重要な役割を果たしている。まず、「魚服記」には〈蛇〉の表記が四回も認められ、滝や渕の主とされる〈水神〉との関わりは深い。この〈水神〉を辿っていくと、大森郁之助氏の指摘による「八郎大明神」が想起され、そこから「甲賀三郎」があぶり出される。この題名から、「三郎と八郎のきこりの兄弟」の〈三郎〉が踏襲されているように思われる。「甲賀三郎窟物語」には、〈諏訪〉という表記が見え、母と夫の伯父の〈不義密通〉が描出される。〈諏訪〉は主人公の呼称〈スワ〉に、〈不義密通〉は、〈スワ〉と父との〈近親相姦〉に踏襲されている可能性は強い。〈スワ〉が滝に飛び込むシーン等は、伝説「龍になった甲賀三郎」に借材しているように思われる。大蛇甲賀三郎諏訪甲賀三郎窟物語龍になった甲賀三郎(伝説)
著者
山崎 寛 青木 京子 服部 保 武田 義明
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.481-484, 1999-03-30 (Released:2011-07-19)
参考文献数
21
被引用文献数
22 22

里山の高林化と種多様性の増加を目指して, アカマツやコナラなどの高木優占種を残し。照葉低木類, ササ類の伐採等の植生管理を行った。植生調査は, 兵庫県の里山林整備事業地9ケ所に定置調査区12区を設置し, 管理前から管理後最長3年目までの追跡調査を行った。その結果, 管理前後の植生を比較すると, 管理後種数の明瞭な増加が認められた。特に, 日本海側のアカマツーユキグニミツバツツジ群集とコナラーオクチョウジザクラ群集で著しい種数の増加が見られた。また, 植生管理後増加した種は, 里山の主要構成種であるブナクラスの種が中心であった。したがって, このような植生管理手法は, 里山の種多様性を維持・増加させるのに有効であると考えられた。
著者
青木 京子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.67-81, 2003-03-01

『人間失格』の「コキュ」の問題については、志賀直哉の『暗夜行路』を想定した作品だと指摘されている。「コキュ」そのものを追及した論文もみられ、示唆的ではある。しかし、『人間失格』と『暗夜行路』の詳細な比較を通し、その根拠を提示した論文は見られない。『人間失格』の草稿には、「コキュ」の場面に「暗夜行路」の記述が見られ、『暗夜行路』を想定した作品であることは明確である。が、「コキュ」の問題だけではなく、母の欠落、醜い女や淫売婦の造形、代理母のような年上の女性との接触等、双方には多くの共通点が見られる。従って、『人間失格』は『暗夜行路』をかなり意識した作品であるといえる。『暗夜行路』は多くの女性と接触することにより、「暗夜」を乗り越え、「明るい」世界へと向かう作品であるが、『人間失格』は、徐々に女給や淫売婦との深みにはまり、全幅の信頼を寄せた内縁のヨシ子にも裏切られ、破滅してゆく。太宰は晩年には志賀直哉を辛辣に批判しているが(「如是我聞」)、志賀直哉の作品をかなり視野に入れ、作品を構築している(「懶惰の歌留多」、『津軽』等)。太宰は『人間失格』を構築するのに、志賀直哉の集大成ともいえる『暗夜行路』をかなり意識していたのではなかろうか。