著者
渡辺 努 青木 浩介 阿部 修人 中嶋 智之 阿部 修人 塩路 悦郎 中嶋 智之 廣瀬 康生 戸村 肇
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2012-05-31

わが国では過去20年にわたって物価下落が進行している。毎年の物価下落率は1%程度と小さく,ゆっくりとしたデフレだが,極めて長い期間続いているというのがその特徴である。この長期デフレの原因は,原価が変化しても価格を据え置くという企業行動にある。先進各国の企業は価格を毎年1-2%引き上げるのがデフォルトなのに対して,日本企業は90年代末以降,価格据え置きがデフォルトになっている。価格や賃金の引き上げに関する社会規範が変化したためと考えられる。一方,家計サイドでは,生まれてこの方デフレしか経験したことのない若年層を中心に,今後もデフレが継続するという予想が根強く,これがデフレ脱却を難しくしている。
著者
渡辺 努 青木 浩介 梶井 厚志 宇井 貴志 上田 晃三 水野 貴之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

家計の物価予想の形成メカニズムに関する研究の一環として約8000の家計を対象にアンケート調査を2018年5月に実施し、家計が将来の物価や景気についてどのように情報を取得しているのか、家計は中央銀行の存在をどの程度認識しているか、中央銀行の政策にどの程度の関心をもっているか、中央銀行からのメッセージはどのような経路で家計に伝わっているかを調べた。また、中央銀行コミュニケーションに関する理論と実証の最近の研究動向を調べるために、渡辺努がジュネーブの国連統計局主催の会議に2018年5月に出席し最近の研究成果(Storable Goods, Chain Drifts, and the Cost of Living Index)を報告したほか、渡辺努と西村はSEM(Society for Economic Measurement)主催の会議に出席し論文報告を行った(渡辺の報告論文"Product Turnover and the Cost of Living Index: Quality vs. Fashion Effects"、西村の報告論文"Incorporating Market Sentiment in Term Structure Model")。また梶井は、市場と予測に関する理論研究に関して欧州で情報収集と討論を行った。ヨーク大学ではゲーム理論の観点からの討論を行い、その後初期の研究成果をセミナー報告したほか、ウォーリック大学、ベニス大学でも研究報告と意見交換を行った。本科研の研究費は上記の研究活動に加えて、データ収集・加工のための作業謝金、英文校閲謝金等に使用した。なお、本研究課題は基盤研究(S)として採択されたため、基盤研究(A)の研究成果を基盤研究(S)に引き継ぐこととした。
著者
藤原 一平 青木 浩介 中嶋 智之 高橋 修平
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

今年度までの主な研究実績は以下の通り。ー 国際的な資金の流出、流入が日常化する経済では、中央銀行は、インフレ率の安定に加えて、金融不均衡(その結果として生じる産出量の大幅変動)の是正、をも考慮して、政策を決めなくてはならない。金融取引がグローバル化するもとで、金融政策、および、マクロ・プルーデンス政策のあり方についての研究を進め、景気に応じて税率などを変化させるマクロ・プルーデンス政策の有効性を確認した。ー 大国の政府債務が国際流動性として需要される背景には、保険市場が完全でないため、政府債務が安全資産として、その保有を通じて、ありうべきリスクから生じる損失が小さいものとなることが考えられる。このため、不完備市場において、どのような財政政策が、リスク・シェアリングを改善するかについての理論的理解にも努めた。また、不完備市場における均衡を求める数値計算能力(すなわち、プログラミング能力)も向上させた。ー 国際的な流動性需要の背景には、高齢化といった構造要因がその背後に存在するため、高齢化が進展する国では、どのようなメカニズムが、その国の貯蓄・投資バランスに影響を与えるのかの理解にも努めた。ー リスクが存在するもとで、実体経済変数と金融資産のポートフォリオを同時に決定する手法の習得にも努めた。ー どのような状況において、政策協調のゲインが存在するかについての知識を深めるとともに、国際的な政策協調、非協調のもとでの均衡を求める手法の習熟にも努めた。