6 0 0 0 制度設計工学:新たな領域の確立をめざして
理論構築と共に実験・調査などを通じて実際の使用に耐える制度の設計を目指すのが「制度設計工学」である.新たな制度設計の枠組みとして,セキュア遂行概念を提案している.従来の制度設計の理論においては,人々の取る行動原理は理論研究者が選ぶ.一方,支配戦略の存在する制度においてたとえナッシュ型の行動を取るとしても,社会の目標を達成することが可能であることを保証するのがセキュア遂行である.公共財供給における制度設計の代表例であるピボタル・メカニズムはセキュアではない.これを実験室において確認すると,セキュアなメカニズムとセキュアでないメカニズム(たとえばピボタル・メカニズム)ではパフォーマンスに顕著な差があることを発見している.従来の利己的個人の枠組みにとらわれず,「日本人はいじわるがお好き?」プロジェクトもこの研究の一環である.公共財の非排除性を満たす環境では,人々が自発的にメカニズムには参加するインセンティブを付与するのは不可能であるという理論結果に基づき,その環境で被験者実験をしたところ,自己が損をしてまで相手の足を引っ張るというスパイト行動を発見した.この行動は,中国,アメリカの被験者と比して,日本人のほうが取りやすいことも発見している.さらには,fMRIを用い,被験者の脳活動を観測することによって,被験者の脳がスパイト行動には反応しにくいものの,利他的な行動には反応しやすいことも発見している.この研究は,日本における最初ニューロエコノミックスの研究だと思われる.さらには,スパイト動機がヒトの行動の根本的な原理であるという予想の検証を開始している.温暖化対策の制度設計を例にとり,実際に被験者の意識調査も実施している.上海における調査では,年齢の高い人々ほど環境意識が高いという従来とは異なる結果を得ている.さらには,繰り返しゲームにおいてどのような戦略のもとで協力の創発が起こるのか関わる理論および実験研究も実施している.
3 0 0 0 OA 無限平面市場における空間競争モデルの均衡解
- 著者
- 青柳 真樹
- 出版者
- 日本地域学会
- 雑誌
- 地域学研究 (ISSN:02876256)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, pp.57-74, 1988-10-31 (Released:2008-10-10)
- 参考文献数
- 17
This paper analytically investigates the validity of Eaton and Lipsey's (1976) conjecture that there exist more than one equilibrium configurations in an infinite two-dimensional market. The competition considered here is under the assumptions of (i) an infinite two-dimensional market, (ii) fixed and identical mill price for all firms, (iii) evenly spreading consumers endowed with inelastic demand functions, (iv) firm's zero conjectural variation. etc.It is scrutinized whether or not several configurations of the firms in a two-dimensional market are in Nash equilibrium, and among which regular hexagonal configuration and regular square configuration are proved to be in equilibrium.Comparison between equilibrium configurations of one-dimensional and two-dimensional markets shows that they are qualitatively different in terms of “strength of equilibrium” and “social optimality”.