著者
面田 真孝 大鹿 泰造 酒井 潤一 石川 雄一
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.358-365, 2008-08-15 (Released:2009-03-17)
参考文献数
24
被引用文献数
1 3

加硫ゴムから放出される硫黄ガス種による銀の微小硫化腐食に影響を与える腐食要因をQCM法,定電流カソード還元法を用いて調べた.同定できた腐食生成物は,Ag2Sのみであった.また,腐食は時間と共に線形で進行し,腐食速度は温度,ゴムの体積には依存するが,相対湿度には依存しなかった.さらに腐食速度は,ゴムの種類により異なる上,同一のクロロプレンゴム間で比較しても製品により異なることを明らかにした.これらから,加硫ゴムによる銀の腐食挙動は,ゴム中の遊離硫黄を発生源とする硫黄ガスにより決定されるものと考えられる.そして,硫黄ガスのアウトガスはゴム中の遊離硫黄分子Sx(x=2~8)の拡散が支配し,この拡散過程が銀の腐食速度を決定しているものと推察される.
著者
青木 里紗 大坂 圭新 面田 真孝 酒井 潤一 石川 雄一
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.56-63, 2009 (Released:2009-09-05)
参考文献数
29
被引用文献数
1 3

水晶振動子微小天秤(QCM)を,硫黄華から発生する硫黄蒸気による銀の非常に微少な腐食質量増加を温度,相対湿度,硫黄華-銀間距離の関数として,連続的に検出する手段として適用した.すべての試験において腐食は試験時間とともに直線的に進行した.腐食速度は温度の上昇につれて大きく増加したが,相対湿度にはほとんど依存しなかった.また腐食速度は硫黄華-銀間距離の増加につれて著しく減少した.これは硫黄蒸気の銀表面への拡散が銀の硫化物形成の初期過程を支配しているためと考えられる.これらの結果から本試験を電子機器に用いる銀の屋内腐食を模擬する簡単な腐食試験として提案するに至った.硫黄華を用いる本試験の二つの特徴は,第一に温度とともに硫黄の蒸気圧が大きく増加し,広範囲の硫黄蒸気濃度環境を創成できること,第二に銀の腐食速度を硫黄華と銀との距離で制御できることである.本試験での銀の腐食速度則(直線則)が実際のフィールドでの速度則と一致すること,そして生成する主要腐食生成物Ag2Sの化学組成,形態も一致することから,本試験がH2Sを含有する多成分流動混合ガス試験に比べて扱いやすく,再現性のよい,そして使いやすい試験であることを提案する.