著者
飯沼 壽孝 加瀬 康弘 塩野 博己 北原 伸郎 広田 佳治 清水 弥生 福田 正弘
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.91, no.9, pp.1358-1365, 1988
被引用文献数
2

1. 小児副鼻腔炎179症例のウォータース法によるX線写真を対象として,画像上の撮影角度,上顎洞の病変,上顎洞骨壁の所見を分析した.<br>2. 撮影実施時の撮影角度が成人に準じて適正であっても画像上の撮影角度は過半数において過剰であり,その傾向は幼少児に強い.<br>3. 画像上での撮影角度の過剰は軽度病変において見掛け上での陰影増強を来しうるが中等度以上の病変の陰影には影響を来さない.<br>4. 小児副鼻腔炎の画像上での病変は約70%で左右対称的であり,その傾向は幼小児に強い.<br>5. 上顎洞壁の不鮮明な所見の出現率は,上顎洞上壁内方で18.4%,同外方で17.3%,頬骨陥凹部で24.6%,頬骨歯槽突起線で1.1%である.<br>6. いずれかの部位で洞壁が不鮮明となる率は軽度病変で16.2%,中等度で47.8%,高度で72.0%となり,画像上での病変が高度になるに従って洞壁の所見は不鮮明となる.<br>7. 小児におけるウォータース法では,成人における撮影角度(耳眼面に対して45度)を修正し,3-4歳では20-25度とし,以降は年齢と小児の個体としての発育に合わせて,10歳以降ではじめて成人なみとする.<br>8. 小児副鼻腔炎のX線診断では,合併症や悪性腫瘍の疑いがない場合は,4-6歳まではウォータース法のみでもよく,7-9歳以降は症例に応じてコールドウェル法を併用する.<br>9. 他の画像診断として,上顎洞内の貯留液の有無に関してはAモード超音波検査法が有用である.<br>10. 小児副鼻腔炎の画像診断にはX線診断法に超音波診断法を組み合わせることで経過観察と治療効果の判定がより簡単となろう.
著者
和田 伊佐雄 加瀬 康弘 飯沼 壽孝
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.106, no.6, pp.678-684, 2003-06-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
26
被引用文献数
10 9

外耳道異物は,日常外来でしばしば遭遇する疾患である.病態が単純であり診断も容易であるためか臨床像の分析あるいは多数例に基づく臨床統計的な検討についての報告が少ない.本研究では,1986年1月から2001年12月までの16年間に埼玉医科大学•耳鼻咽喉科を初診し病歴の記載が明らかで診断が確定した外耳道異物509症例の臨床像につき検討し.臨床統計的検討を行った.16年間の外耳道異物症例は,509症例でこの間の新患患者数は68,579名であり,外耳道異物が新患患者に対して占める割合は,0.74%であった.異物症例の受診時間帯をみると時間内を受診したのは161症例(31.6%),時間外は,348症例(68.4%)であった.性別では,男性307症例(60.3%),女性202症例(39.7%)であった.左右別では,右側251症例(49.3%)左側241症例(47.3%),両側4症例(0.8%)であった.受診月別にみると月平均42.4症例で,7月,8月と気温の高い時期に多く認めた.年齢分布では,平均年齢25.4歳で生後1カ月の乳児から90歳までの各年齢層に認めた.年代別でみると9歳以下の小児が182症例(35.8%)で最も多かった.種類別にみると,有生物206症例(40.5%),無生物は288症例(56.6%)であった.また,受診月別平均気温と有生物の症例数の間には極めて強い相関関係が認められた.