著者
中嶋 正人 加瀬 康弘
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.65-71, 2010 (Released:2010-09-01)
参考文献数
12

伝染性単核球症の入院加療例で抗菌薬投与群と非投与群を比較し, 投与の必要性を検討した. 入院期間は抗菌薬投与群は平均10.5日, 非投与群は平均7.4日で, 両群において有意差はなかったが投与群で延長傾向にあった. 咽頭痛消失までの期間は抗菌薬投与群は平均5.0日, 非投与群は平均4.3日で, 両群において有意差はなかった. 入院後解熱期間は抗菌薬投与群は平均4.6日, 非投与群は平均3.1日で, 両群において有意差はなかったが, 投与群で延長傾向にあった. 肝逸脱酵素値の入院中上昇は抗菌薬投与群の42%にみられ, 抗菌薬非投与群は0%だった. 皮疹や粘膜疹の出現, 増悪は抗菌薬投与群の17%で, 抗菌薬非投与群は0%だった. 抗菌薬投与群中, 有害事象がみられ抗菌薬の中止が必要と判断された例は58%で, いずれも抗菌薬中止後回復した. 伝染性単核球症は可能なら, 入院での安静にて厳重観察のもとに, 抗菌薬投与をせずに, 扁桃周囲膿瘍の発症など, 明らかな抗菌薬加療が必要な病態がみられたとき, 投与を検討すべきと考えた.
著者
沼倉 茜 吉川 沙耶花 上條 篤 松田 帆 新藤 晋 池園 哲郎 加瀬 康弘 神山 信也 伊藤 彰紀 大澤 威一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.2, pp.134-138, 2018-02-20 (Released:2018-03-07)
参考文献数
15

拍動性耳鳴に対しては, 器質的疾患の存在を疑う必要がある. 今回われわれは, 拍動性耳鳴を主訴に来院し, 横- S 状静脈洞部硬膜動静脈瘻と診断された1例を経験した. 拍動性耳鳴の診断には頸部血管の圧迫による変化と聴診が重要である. 硬膜動静脈瘻のスクリーニングには脳 MRA が優れている. しかし, 脳疾患の MRA 診断においては脳主幹動脈領域のみを関心領域とした MIP 画像が用いられることが多く, 外頸動脈系や静脈洞が関与する硬膜動静脈瘻は見落とされる可能性がある. したがって, 見落としを避けるには, MIP 画像のみならず MRA の元画像を確認することが重要である. 硬膜動静脈瘻は根治が期待できるため見落とさないことが重要である.
著者
中島 正己 和田 伊佐雄 加瀬 康弘
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.147-152, 2014-06-10 (Released:2014-08-20)
参考文献数
18

閉塞型睡眠時無呼吸 (OSAS) における鼻腔開存性を検討するため, ポリソムノグラフィー施行予定の患者48名を対象として, 座位と仰臥位でそれぞれ鼻腔通気度測定法と音響鼻腔計測法 (AR) による測定を行った. AR による比較では, 座位に比べ, 仰臥位のほうが最小鼻腔断面積, 鼻腔容積共に減少する傾向にあった. さらにこの変化は仰臥位になってから5分後にすでに生じていた. 座位から仰臥位に体位変換することにより, 鼻腔抵抗値は増加し, 生理学的な変化を生じると共に, 鼻腔容積や鼻腔最小断面積の減少により鼻腔開存性が変化し, 解剖学的な変化も生じると考えられた. この変化が OSAS 患者の病態に関連することが予想された.
著者
柴崎 修 加瀬 康弘
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.53, no.Supplement2, pp.s79-s84, 2010 (Released:2011-08-15)
参考文献数
1

本邦における外耳道局所への薬液投与方法は, 点耳液の滴下と軟膏剤の塗布に限られている。本研究では, 外耳道への的確で簡便な薬液投与方法として外耳スプレーの可能性を検討した。外耳へスプレーする器具は試作モデルを用いた。点耳液と外耳スプレーそれぞれについて, 円筒状の外耳モデルへの噴霧およびボランティアでの外耳への使用感についてのアンケートを行い, 比較検討した。その結果, 外耳スプレーは点耳液に比較して, 外耳道全周に薬液が噴霧されることが確認された。また, 使用感については, 圧迫感などの回答が得られたが, 利便性のメリットを上回る程の障害ではない点が確認できた。外耳スプレーは外耳への新たな薬液投与方法として, 本邦でも今後十分に臨床応用が検討されるべき手段であると考える。
著者
飯沼 壽孝 加瀬 康弘 塩野 博己 北原 伸郎 広田 佳治 清水 弥生 福田 正弘
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.91, no.9, pp.1358-1365, 1988
被引用文献数
2

1. 小児副鼻腔炎179症例のウォータース法によるX線写真を対象として,画像上の撮影角度,上顎洞の病変,上顎洞骨壁の所見を分析した.<br>2. 撮影実施時の撮影角度が成人に準じて適正であっても画像上の撮影角度は過半数において過剰であり,その傾向は幼少児に強い.<br>3. 画像上での撮影角度の過剰は軽度病変において見掛け上での陰影増強を来しうるが中等度以上の病変の陰影には影響を来さない.<br>4. 小児副鼻腔炎の画像上での病変は約70%で左右対称的であり,その傾向は幼小児に強い.<br>5. 上顎洞壁の不鮮明な所見の出現率は,上顎洞上壁内方で18.4%,同外方で17.3%,頬骨陥凹部で24.6%,頬骨歯槽突起線で1.1%である.<br>6. いずれかの部位で洞壁が不鮮明となる率は軽度病変で16.2%,中等度で47.8%,高度で72.0%となり,画像上での病変が高度になるに従って洞壁の所見は不鮮明となる.<br>7. 小児におけるウォータース法では,成人における撮影角度(耳眼面に対して45度)を修正し,3-4歳では20-25度とし,以降は年齢と小児の個体としての発育に合わせて,10歳以降ではじめて成人なみとする.<br>8. 小児副鼻腔炎のX線診断では,合併症や悪性腫瘍の疑いがない場合は,4-6歳まではウォータース法のみでもよく,7-9歳以降は症例に応じてコールドウェル法を併用する.<br>9. 他の画像診断として,上顎洞内の貯留液の有無に関してはAモード超音波検査法が有用である.<br>10. 小児副鼻腔炎の画像診断にはX線診断法に超音波診断法を組み合わせることで経過観察と治療効果の判定がより簡単となろう.
著者
和田 伊佐雄 加瀬 康弘 飯沼 壽孝
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.106, no.6, pp.678-684, 2003-06-20 (Released:2008-03-19)
参考文献数
26
被引用文献数
10 9

外耳道異物は,日常外来でしばしば遭遇する疾患である.病態が単純であり診断も容易であるためか臨床像の分析あるいは多数例に基づく臨床統計的な検討についての報告が少ない.本研究では,1986年1月から2001年12月までの16年間に埼玉医科大学•耳鼻咽喉科を初診し病歴の記載が明らかで診断が確定した外耳道異物509症例の臨床像につき検討し.臨床統計的検討を行った.16年間の外耳道異物症例は,509症例でこの間の新患患者数は68,579名であり,外耳道異物が新患患者に対して占める割合は,0.74%であった.異物症例の受診時間帯をみると時間内を受診したのは161症例(31.6%),時間外は,348症例(68.4%)であった.性別では,男性307症例(60.3%),女性202症例(39.7%)であった.左右別では,右側251症例(49.3%)左側241症例(47.3%),両側4症例(0.8%)であった.受診月別にみると月平均42.4症例で,7月,8月と気温の高い時期に多く認めた.年齢分布では,平均年齢25.4歳で生後1カ月の乳児から90歳までの各年齢層に認めた.年代別でみると9歳以下の小児が182症例(35.8%)で最も多かった.種類別にみると,有生物206症例(40.5%),無生物は288症例(56.6%)であった.また,受診月別平均気温と有生物の症例数の間には極めて強い相関関係が認められた.
著者
中島 正己 原 睦子 沼倉 茜 加瀬 康弘
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.201-206, 2016-06-10 (Released:2016-09-27)
参考文献数
14

アメリカ睡眠学会により2014年に睡眠障害国際分類第3版が公表され, 閉塞性睡眠時無呼吸症 (Obstructive sleep apnea, OSA) の診断基準が変更された. 大きな変更点としては, 簡易モニターによる無呼吸低呼吸指数 (Apnea hypopnea index, AHI) でもポリソムノグラフィー (Polysomnograpy, PSG) と同等の基準で診断できること, AHI が5回/時以上かつ無症状であっても, 高血圧や, 糖尿病などの合併症が存在すれば OSA と診断されることの2点である. そこで, 以前に行われた PSG と簡易モニターの検査結果を retrospective に検討し, 診断結果の影響について考察した. 本邦では診断機器の選択について, 医療従事者の判断に委ねられている現状にあるため, 本邦の現状に即した診断機器選択のガイドラインを早急に作成する必要性がある.
著者
加瀬 康弘
出版者
Japan Rhinologic Society
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.303-312, 2000-12-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
36
被引用文献数
2 3

To detect factors that may affect the prognosis of diplopia caused by orbital wall fractures, retrospectibely evaluated 82 cases were seen at the Saitama Medical School between January 1995 and July 1999. Of these, 44 (54%) reporting diplopia were divided into 2 groups. One in which diplopia lasted more than 1 month and one in which recovery occurred within 1 month. To study diplopia quantatively, the area within 15 degrees on the Hess chart was calculated and the ratio of area of affected side against that of normal side was obtained. Statistically, in patients in there low teens, cases with positive symptoms in the forced duction test and abnormalities in CT or MRI imaging tended to have a poor prognosis, indicating the need for early surgery. The absence of these factors suggested that a wait-and-see policy would produce a better prognosis.