著者
仲谷 健吾 平山 裕 飯沼 泰史 倉八 朋宏 中原 啓智 岡崎 英人
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.1149-1154, 2017-10-20 (Released:2017-10-20)
参考文献数
13

【目的】今回著者らは,ロタウイルスワクチン接種(RV)後の腸重積症(本症)における臨床的特徴をもとに,その治療方針を検討したので報告する.【方法】2008年1月から2016年12月の間に本症と診断し,治療を行った生後6か月以下の18例を対象とした.これらをRV歴の有無,手術の有無をもとにRV/OP群(2例),RV/non-OP群(3例),non-RV/OP群(5例),non-RV/non-OP群(8例)の4群に分類し,①発症時の日齢,②発症から初回の高圧注腸整復法開始までに要した時間,③高圧注腸整復法の最大整復圧,④初診時の血中尿素窒素値(BUN),⑤RV/OP群とnon-RV/OP群の術中所見の違いについて検討を行った.【結果】RV/OP群では他群よりも発症時の日齢が低く,高圧注腸整復までの時間が短い傾向があった.また,最大整復圧はnon-RV/non-OP群で低い傾向があった.BUNについてはRV歴の有無にかかわらず手術群で高く,非手術群で低い傾向を認めた.RV/OP群に共通した術中所見として,最大径18~20 mmの回盲部リンパ節(LN)腫大を認めたが,non-RV/OP群では10 mmを超えたLN腫大は1例のみであった.なお,RV/OP群では2例とも初回接種後おおよそ2週間以内(4日後・15日後)の発症であった.一方,RV/non-OP群は全例2回目以降の接種後発症であった.【結論】初回RV後2週間以内の発症例は,急激に生じるLN腫大が整復を物理的に妨げる可能性があるため,手術治療を積極的に考慮すべきである.また,2回目以降の接種例においては非観血的整復法が比較的有用であると考えられた.
著者
内山 昌則 岩渕 眞 大沢 義弘 松田 由紀夫 内藤 万砂文 広川 恵子 八木 実 飯沼 泰史
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.952-961, 1993-08-20 (Released:2017-01-01)

小児奇形腫群腫瘍の54症例中,未熟奇形腫は8例,悪性奇形腫は10例で,その発生部位は卵巣21例中未熟3例,悪性5例であり,精巣1例中悪性1例,仙尾部18例中未熟4例,悪性3例で,後腹膜9例中未熟1例,縦隔3例中悪性1例であった.悪性の組織型は未分化胚芽腫4例,胎児性癌3例,卵黄嚢癌3例であった.これらのうち小児腹部腫瘍で鑑別を要する卵巣,仙尾部,後腹膜の奇形腫群腫瘍,特に未熟,悪性奇形腫につき診断と治療方針および成績を検討した.卵巣未分化胚芽腫症例は腫瘍および同側卵巣卵管摘除術を行い,さらに術後療法として,Stage III症例の1例にCPA大量療法,もう1例に照射療法を行い, Stage IV 症例の1例に縦隔リンパ節転移巣の切除とCPA大量および照射療法を併用し,全例再発なく生存中である.卵巣未熟奇形腫の腹腔内再発を来した1例は摘除とVAC療法を行い,成熟神経線維からなる腹膜播種は経過観察し,腫瘍付属器摘除術後2年で両側肺転移を来した1例は肺転移巣を切除し,両例とも以後再発はない.また胎児性癌の1例は術後T2療法を行い再発はない.全例11歳以降には月経も発来し,経過良好である.仙尾部未熟奇形腫の3例は完全摘除後化学療法は行わず,仙尾部卵黄嚢癌のStage III の1例はPVB療法後完全摘除術を行い,術後PVBとHigh dose VAC療法で再発の徴候はない.後腹膜の成熟奇形腫の腹膜播〓例は術後経過観察で,また未熟奇形腫の1例は腫瘍摘除術後化学療法を行わず,経過良好である.
著者
仲谷 健吾 飯沼 泰史 平山 裕 靏久 士保利
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.1098-1102, 2016-08-20 (Released:2016-08-20)
参考文献数
17

症例は1 歳女児.急性大腸閉塞の診断で当科に紹介され,腹部膨満と代償性ショックを呈していた.腹部CT では中等量の腹水,直腸とS 状結腸の壁肥厚,下行結腸から回腸の拡張,及びS 状結腸下行結腸移行部の便塞栓を認めた.病歴から消化管アレルギーを疑ったため,開腹手術を回避するために全身麻酔下に大腸内視鏡を行ったが腸閉塞解除は不可能であり,最終的に開腹手術を施行した.S 状結腸下行結腸移行部の腸管壁を切開し便を摘出後,内視鏡を併用して口側腸管の減圧を行った.なお,術中に採取した結腸壁には好酸球浸潤を認め,消化管アレルギーが強く疑われた.経過は良好で術後18 日目に退院した.その3 か月後に再度同原因による腸閉塞を発症したが,保存的治療で容易に改善した.消化管アレルギーの多くは小児科で対応されるが,小児外科医が初期対応を行うこともあり,本症例のような病態に対しては開腹手術が必要になる場合があると考えられた.