- 著者
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飯田 知彦
- 出版者
- The Ornithological Society of Japan
- 雑誌
- 日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.3, pp.125-127, 1999-02-25 (Released:2007-09-28)
- 参考文献数
- 2
- 被引用文献数
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クマタカは日本の森林生態系の頂点に位置する動物である.従来,クマタカが出現した時のニホンザルの反応などから,クマタカによるニホンザルの捕食が考えられ,また,確認例もあった.今回,クマタカによるニホンザルの捕食と思われる事例を確認できたので報告する.死亡直後のニホンザルの死体の横から,クマタカの成鳥が飛び立ち,その後数日間にわたりクマタカがその場所に現れ,ニホンザルは白骨になった.死亡直後の状況から,ニホンザルは子連れの雌と考えられたが,骨格を採取し京都大学霊長類研究所に鑑定してもらったところ,7歳程度の雌の成獣と判明し,現場の状況と一致した.また,採取した骨格には,クマタカの爪で付けられたと思われる,通常はみられない複数の細い傷があった.これらを含め,以下の5つの点から,そのニホンザルを捕食したのは,クマタカの可能性がきわめて高いと判断される,(1)現場は,車が入ることのできる道はなく,交通事故死のニホンザルの可能性はなく,また,有害鳥獣の駆除も行なわれていないので,その可能性もない.(2)死体の状況から,栄養状態は良好であったので,衰弱死等の可能性はない.(3)また,現場に多数のニホンザルの毛が残されていたこと,また,子ザルの状況から,ニホンザルはその場で突然死亡したと考えられる.(4)死亡直後のニホンザルに出血がほとんど見られなかった点は,猛禽類に襲われた時の特徴と一致する.(5)鑑定結果の,頭骨に残された傷は,猛禽類の爪で付けられたものと思われ,また,ニホンザルに致命傷を与えたと考えられる.採取した骨格から,捕食されたニホンザルは比較的大型の雌の成獣で,体重は約9.4kgと推定された,以上のことから,クマタカは,ニホンザルを捕食しており,捕食可能な動物の大きさは,約10kg程度まで可能なことになる.