著者
飯野 修一 渡辺 正平
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.555-559, 1989-08-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
20

1. モロミ上槽時の圧力増加に伴う搾酒の成分変化は次のとおりであった。漸増するもの(日本酒度, 紫外部吸収及びpH), 漸減するもの (直糖及びMn), モロミタレ歩合80%以上の上槽末期から増加するもの(アミノ酸度, 着色度, Fe, Cu及びZn) 及び増減のないもの(酸度及び低沸点香気成分)の4つのタイプに分類された。2. 官能的には上槽末期から評価は落ち, 雑味と味の薄さが指摘された。なお上槽末期の官能低下にアミノ酸度, Cu及びZnの増加がよく一致した。3. 藪田式自動圧搾機に比べて, 水圧式圧搾機の場合にはFe, Cu, Znの増加及び官能変化は比較的緩慢であった。これは上槽時の圧力増加が緩慢であったからと推定された。終わりに本試験に協力していただきました清酒メーカーの2社に深く感謝いたします。
著者
恩田 匠 乙黒 親男 飯野 修一 後藤 昭二
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.407-417, 1997-06-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
29
被引用文献数
3

酵母により変敗した梅加工品の品質変化を調べ,さらに酵母汚染試料から酵母の分離を行い,得られた酵母菌株の同定と,その各種食塩濃度および各種pHにおける生育挙動ついて検討し,以下の結果を得た.(1) 酵母汚染した梅加工品は,主要成分である有機酸が減少しており,それに伴いpHが上昇していた.また,酵母汚染した梅漬は,硬度低下,あるいは組織崩壊を起こし,硬さを左右する構成ペクチンの分解が認められた.このペクチン分解にも産膜酵母が関与していることが考えられた.(2) 産膜汚染試料から分離した酵母25菌株は,Debaryomyces hansenii 4菌株,Pichia anomala 1菌株,Pichia membranaefaciens 3菌株,Torulaspora delbrueckii 1菌株,Candida jamata 1菌株,Candida krusei 3菌株,Candida pelliculosa 3菌株,Kloeckera apiculata2菌株,以下未同定の3菌種Candida sp. UME-A 2菌株,Candidasp. UME-B3菌株,Candida sp. UME-C 2菌株の5属11種に同定された.(3) 分離酵母の各種食塩濃度および各種pHにおける生育を検討した結果,P. anomala, C. famata, Candtda sp. UME-AおよびCandida sp. UME-Bと同定された菌株は食塩濃度20%のYM液体培地に良好に生育が可能な著しい耐塩性(中等度好塩性)とpH 2.0の梅酢液にも生育良好な低pH耐性を示した.(4) 低pH耐性を示す菌株,特にCandida sp. UME-B YITC 114株は,梅酢液中で高い有機酸の資化能を示した.これらの有機酸資化能の強い酵母が,梅漬類における主要産膜酵母であると思われた.