- 著者
-
杉山 淳司
馬場 啓一
- 出版者
- 京都大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1995
低温ホルダが納入されたことによって、水溶液を直接顕微鏡に持ち込み、観察することができるようになった。予備実験では、酵素分解の相乗効果に加えて、セルロースそのものの構造が、分解プロセスに影響与えることが示唆された。そこで分解過程のセルロース懸濁液を経時的にサンプリングし、高い分解能で観察することを試みた。ところが、低温ホルダと同時に納入された試料汚染防止装置のギャップ間の距離が、既存の電子顕微鏡のポールピースの磁極間距離にあわないことや、その電源から低周波の振動が冷却フィンに伝わることで、まともに高解像度の画像が取れない等の不具合が生じた。このような問題点を克服するためにかなりの時間を浪費し、いまだに未解決の問題もあるものの、現段階では試料ホルダを40度近く傾斜でき、低温の実験に用いることができるようになった。像室については未だに未解決の問題があるが、電子回折を得るには最高の試料観察条件を整えることができた。そこで当初の研究プロジェクトを一部修正して、セルロースが還元末端あるいは非還元末端のいずれから合成されるかを決定するテーマに取り組むこととした。これまでの研究で大きな進展がみられ、セルロースの分子鎖の還元末端が生体の外側に向くように、つまりできあがった分子鎖の非還元末端に、モノマーが付加重合されることを、実験的に初めて証明することができた。