著者
馬嶋 健一郎 古谷 直子 細川 直登
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.44-52, 2021-01-25 (Released:2021-07-21)
参考文献数
16

季節性インフルエンザワクチンの接種法は本邦では皮下注射(皮下注)であるが,海外では局所副反応が軽度で抗体価上昇が良好なため筋肉注射(筋注)が推奨されている.しかし,皮下注・筋注での発症予防効果の差までは明らかではなく,接種時の疼痛の差異は今まで検討されていない.当院は病院職員と看護学生への接種が皮下注・筋注の希望選択となっており,発症率,接種時疼痛,接種後副反応の接種法による違いを前向きコホート観察研究で調査を行った.病院への発症者報告は皮下注11.3%(65/574),筋注8.2%(258/3147)で,有意に筋注で少なく(P=0.02),性別,年齢,15歳以下と同居,感染予防のタイプを調整したロジスティック回帰でも有意に筋注で少なかった(odds比0.73,P値=0.04).接種時痛や接種後副反応は看護学生320名(皮下注77,筋注243名)で調査し,接種時の痛みスコア(0痛くない~10非常に痛い)中央値は皮下注4,筋注2であり,筋注群で有意に痛みが少なく(P<0.001),注射への恐怖心等で調整した多重回帰でも筋注の方が1.26有意に少なかった.接種後の痛みや腫脹についても,筋注群の方が軽度であった.筋注は皮下注に比べて,インフルエンザ発症の報告数が少なく,接種時疼痛,接種後疼痛腫脹も少なかった.筋注は優れた投与方法と考えられ,本法の用法として認められることが望まれる.
著者
山地 裕 馬嶋 健一郎 和田 亮一 光島 徹
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.666-675, 2017 (Released:2017-09-27)
参考文献数
19

我々は便潜血検査免疫法(IFOBT)1日法と同時に実施した大腸内視鏡検診の成績から, IFOBTの感度と無症候者における大腸腫瘍有病率について報告してきたが, このデータセットを用いて陽性反応適中度(PPV)の推定を行った。初回の内視鏡検診の結果を検診対象者の大腸腫瘍の有病率として適用し, また通常の検診で行われる2日法の場合の推定のため, 1回ごとの各病変の陽性率が1日法の成績と同一, かつ1回ごとに独立である, と仮定した。浸潤癌に対するPPVは, 40歳代男性では2日法1回のみ陽性で0.3%, 2回陽性では10%, 女性は1回陽性0.7%, 2回陽性19%と推定された。同様に50歳代男性1.7%と26%, 女性0.8%と15%, 60歳代男性4.1%と49%, 女性2.9%と44%と推定された。同じ便潜血陽性であってもPPVは年齢とともに上昇し, また2日法2回陽性者は1回陽性の場合に比べ格段に高リスクと考えられた。
著者
馬嶋 健一郎 平田 信人 村木 洋介
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.25-35, 2019 (Released:2019-01-21)
参考文献数
26

【背景・目的】右側大腸は,大腸内視鏡による大腸癌死亡抑制効果が左側より乏しいとされ,より注意した観察が必要である.大腸内視鏡検査中に右側大腸で反転観察を追加する事と前方観察を2回行う事の効果を調査する.【方法】無作為化比較試験を対象に,システマティックレビュー及びメタアナリシスを行った.エビデンスの質の評価をGRADEシステムを用いて行った.【結果】適格基準を満たす研究は2本のみであった.右側大腸で追加発見された腺腫割合の発見リスク比は0.76(95%信頼区間0.55-1.05, P=0.10)であり,反転群で追加発見が少ない傾向を認めたが有意差はなかった.エビデンスの質は低かった.【結論】右側大腸反転効果に対するエビデンスは極めて少なく,質も高くない事が判明した.限られたエビデンスからの判断だが,前方観察2回に比べ反転観察追加の優位性は認められなかった.今後さらに研究の蓄積が必要である.
著者
加藤 大地 馬嶋 健一郎 金山 美紀 抱井 昌夫 篠田 誠 村木 洋介
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.421-425, 2021 (Released:2021-12-01)
参考文献数
3

目的:海外からの人間ドック受診者が増加している一方,その後の精検受診結果が把握しにくく,全体の精検受診率にもマイナスの影響を及ぼす懸念がある.精検受診率向上は,人間ドックの精度管理において重要な要素である.本研究は,外国人の精検受診が未把握となっている現状を分析し,受診率向上の対策を考える際の基礎資料とするため,海外からの受診者が精検受診率にどのくらいの影響があるかについて調査した.方法:2018年度1年間に人間ドックを受診した8,504名(うち外国人受診者2.5%,210名)を対象とし,検査数や要精検者における外国人割合や精検受診率において外国人の受診未把握がどのように影響しているかを調査した.本検討における外国人の定義は,日本国籍を有しない者かつ海外に居住している者とした.結果:要精検者のうち外国人の割合が高かった上位3つの検査について,全受診者の外国人割合,要精検者の外国人割合を示すと,大腸内視鏡検査で6.3%(106/1,686),7.1%(12/170,要治療者含む),乳がん検査で2.8%(68/2,414),6.5%(3/46),PSA検査では6.1%(114/1,881),4.7%(5/107)であった.精検受診率を日本人,外国人,両方合わせた全体で示すと大腸内視鏡検査で91.8%(145/158),16.7%(2/12),86.5%(147/170),乳がん検査で93.0%(40/43),0.0%(0/3),全体87.0%(40/46),PSA検査では78.4%(80/102),0.0%(0/5),74.8%(80/107)であり,3つの検査すべてにおいて日本人と外国人で有意差を認めた(p<0.001,p=0.01,p<0.001).精検受診にカウントできない者における外国人割合は大腸内視鏡検査で43.5%(10/23),乳がん検査で50.0%(3/6),PSA検査で18.5%(5/27)に及んだ.結論:外国人の精検受診状況が追跡できていないことによる未把握分が,全体の精検受診率低下に影響することが明らかとなった.外国人の精検受診を把握するためのフォローアップ方法について対策を立てる必要がある.
著者
馬嶋 健一郎 藤原 正則 和田 亮一 村木 洋介 光島 徹
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.120-129, 2018 (Released:2018-03-17)
参考文献数
32

便潜血検査(fecal occult blood test:FOBT)陽性者に施行した大腸CT検査の診断精度を全大腸内視鏡検査を標準として検証した。当施設の任意型検診において, FOBT陽性者に対し同日に大腸CT検査と全大腸内視鏡検査を施行した120名を対象とした。前処置法は3%となるようにガストログラフイン®を混合したニフレック®液を使用した。大腸CT検査における患者ごとの感度, 特異度は, 6mm以上の病変で感度85.7%(30/35), 特異度95.3%(81/85), 10mm以上の病変で感度100%(17/17), 特異度98.1%(101/103)であった。FOBT陽性者に対する精密検査として大腸CT検査の精度は良好であり, 精検法となり得ると考えられる。
著者
馬嶋 健一郎 永田 浩一 松本 啓志
出版者
The Japanese Society of Gastrointestinal Cancer Screening
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.600-606, 2015

大腸CTの読影で使用する三次元画像は精度検証済みの仮想内視鏡像が世界標準だが, 本邦では大腸展開像も使用される機会が多い。今回, 両読影法の精度を比較した。内視鏡にて病変が診断されている大腸CT症例100例を, 初級者1名が, 大腸展開像+MPR像による読影と, 仮想内視鏡像+MPR像による読影を行った。100例は1-50症例を第1セット, 51-100症例を第2セットとした。6mm以上の大腸ポリープ・癌の病変別感度は, 展開群, 仮想内視鏡群の順に第1セット67.9%(19/28), 89.3%(25/28), 第2セット86.1%(31/36), 91.7%(33/36)であった。展開群よりも仮想内視鏡群で感度が高く, 大腸CTの標準化では, 精度検証が済んでいる仮想内視鏡像による読影方法を優先すべきと考えられた。
著者
馬嶋 健一郎 佐々木 美和 星野 絵里 島本 武嗣 村木 洋介
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.476-481, 2017 (Released:2017-12-22)
参考文献数
24

目的:健診の尿検査において,随時尿と早朝尿での尿蛋白陽性率,尿潜血陽性率および運用面での変化を検討した.方法:亀田メディカルセンターの健診受診者のうち,2012年6~10月までの随時尿群2,619名と,2013年6~10月までの早朝尿群2,512名を対象とした.主要な評価項目として随時尿群と早朝尿群の尿蛋白陽性率を比較し,尿蛋白を減少させる要因についてロジスティック回帰分析にて検討した.副次的評価項目として,尿潜血陽性率の変化を検討し,運用面の変化や受診者の流れなどを調査した.結果:尿蛋白陽性率は随時尿群3.9%(102/2,619),早朝尿群1.8%(45/2,512)であり,有意に早朝尿において低かった.また,ロジスティック回帰分析では,早朝尿は尿蛋白陽性率低下の独立した要因だった.尿潜血陽性率は随時尿群で陽性は6.2%(162/2,619),早朝尿群では1.8%(45/2,512)であり,有意に早朝尿において低かった.運用面では,早朝尿導入で看護スタッフの問診終了時間が早くなった.結論:随時尿に比べ,早朝尿検査は尿蛋白陽性率を減らすことができ,運営面では人間ドックの流れがスムーズになることが期待される.