著者
駒野 宏人
出版者
岩手医科大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本研究は、ミクログリアの持つ血液脳関門(BBB:blood-brain barder)通過機能に関与する分子を同定し、その実態を明らかにすることである。作年度は、マウス由来株化ミクログリアRa2[澤田(名古屋大学)により樹立]よりレトロウイルスベクターとするcDNAライブラリーを作成した。本年度は、トランスマイグレイションアッセイ(平成17年度確立)を用いて、作成したcDNAライブラリーより、ミクログリアの血液脳関門通過機能に関与する分子のスクリーニングを実施した。まず、BBBを構成している内皮細胞株(MBEC4細胞:Drug Metab.Phamacokin.19:270、2004)をトランスウェルの上部チャンバーのメンベレン上、(孔サイズ:3μM)に3日間培養し、上部と下部チャンバーとの抵抗値がほぼ200Ωになることを確認した。その後、cDNAで感染させたRa2(全細胞数5X10^6細胞、1ウェルあたり4x10^4細胞)を上部チャンバーに培養した。さらに培養3日後、下部チャンバーに移行したRa2を数えた。その結果、下部チャンバーに移行したRa2細胞数は、cDNAライブラリー感染依存に高いウェルも存在したが、現在、正確に、それに関与する分子の同定にまでは至らなかった。これは、スクリーニングの培養時間が長く、その間、MBEC4細胞が部分的に破損し、ベクター感染Ra2細胞(background)においても、下部チャンバーに移行する細胞数が多数認められたため、関与する分子の同定を困難にしていると考えられた。現在、培養時間を短縮するためのスクリーニング条件をより詳細に検討を進めている。