著者
寺谷 清香 紀 雅美 村上 太郎 高取 聡
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.158-162, 2022-08-25 (Released:2022-08-30)
参考文献数
19

育児用の調製液状乳は,常温で一定期間保存でき,育児負担の軽減や災害時の利便性から平成31年3月に国内での製造・販売が開始された.AFM1は発がん性を有するカビ毒であるアフラトキシンB1 (AFB1)の代謝産物であって,AFB1に汚染した餌を摂食した家畜の乳に含まれる.現在,調製液状乳はもとより乳児用粉ミルク(調製粉乳)では基準値が設定されておらず,乳児では体重あたりの乳製品摂取量が多いため,摂取量には留意が必要である.本研究では,乳幼児の摂取量の多い乳製品についてのAFM1含有量の実態調査を行った.調査の結果,検出された乳製品のAFM1は0.001~0.005 μg/kgとなり,これまでに報告されている乳製品中のAFM1と比較して,極微量であった.乳幼児の栄養は乳製品に依存し,成人より多く摂取する可能性が否めないため,継続して調査を行う必要がある.
著者
福井 直樹 高取 聡 北川 陽子 起橋 雅浩 梶村 計志 尾花 裕孝
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.426-433, 2013
被引用文献数
3

農産物を主原料とした加工食品を対象として,迅速な農薬の一斉分析法を検討した.均一化した試料5 gに水5 mLを加えて室温で30分間放置後,アセトニトリル20 mLを加えてホモジナイズ抽出した.塩化ナトリウム1 gおよび無水硫酸マグネシウム4 gを加えて塩析・脱水した.分離した有機層をグラファイトカーボン/PSAカートリッジを用いて精製し,LC-MS/MSで測定した.93農薬について,白菜キムチ,マーマレード,レーズン,梅干しおよびウスターソースで添加回収試験(0.02および0.1 μg/g添加,5試行)を実施した.その結果,すべての食品において平均回収率70~120%(併行精度20%以下)を満たした農薬数は,61農薬であった.本法により市販の加工食品74品目について実態調査を行ったところ,2品目で食品衛生法の一律基準値を超過した.
著者
高取 聡 起橋 雅浩 北川 陽子 福井 直樹 岡本 葉
出版者
大阪府立公衆衛生研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

多岐にわたる加工食品を高脂質食品、低脂質食品、準農産物、ノンアルコール飲料及びアルコール飲料に分類して、これらに適用できる迅速かつ簡便な残留農薬一斉分析法を構築した。当該分析法を活用して市場に流通する加工食品中の残留農薬を分析した結果、食品衛生法の基準を超過する農薬を含む加工食品を検知し、販売者に自主回収を促した。また、消費者からの要請に基づいて風味異常を呈した食品から原因と推察される農薬を検出し、当該分析法の実用性を証明した。
著者
北川 陽子 起橋 雅浩 高取 聡 岡本 葉 福井 直樹 村田 弘 住本 建夫 尾花 裕孝
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.243-252, 2009
被引用文献数
1 9

GC/MS/MSを用いた加工食品中の残留農薬一斉分析法の検討を行った.試料に添加した農薬を酢酸エチルで抽出し,アセトニトリル/ヘキサン分配により脱脂を行った.さらにグラファイトカーボンブラック/PSA積層カラムにて精製を行い,GC/MS/MSにより測定を行った.258農薬について,5種類の加工食品(餃子,レトルトカレー,フライドポテト,鶏唐揚げ,白身魚フライ)を対象に添加回収試験(添加濃度0.02および0.1 μg/g)を行った.2濃度の添加回収試験において,両濃度で良好な結果(平均回収率70~120%,相対標準偏差 20% 以下)を示した農薬数は258農薬中184農薬であった.GC/MS/MSにおいては,試料由来の妨害成分の影響を受けにくく,低濃度においても精度の高い定量が可能であった.以上のことから,本分析方法は加工食品中の残留農薬を分析するうえで有用な方法であると考えられた.