著者
起橋 雅浩 小阪田 正和 内田 耕太郎 永吉 晴奈 山口 貴弘 柿本 健作 中山 裕紀子 尾花 裕孝
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.253-257, 2010
被引用文献数
1

加工食品中の農薬分析を対象とした,技能試験の試料調製方法を検討した.検討用試料としてレトルトカレーとパンケーキを用い,農薬を添加した試料の均一性を評価した.レトルトカレーは調製時と採取時に加温して均一化することが必要であった.有機リン系農薬およびカーバメート系農薬を中心に,15種類の農薬を添加したところ,14種類の農薬濃度で試料の均一性が確認された.パンケーキは生地に10種類の農薬を添加した.生地は農薬添加後に加熱調理したが,調製したパンケーキ中の農薬濃度はほとんど影響を受けず,添加したすべての農薬濃度で試料の均一性が確認された.また,-20℃ で保存した場合,約2 か月間は農薬濃度の大きな変化はなかった.以上の結果よりこれらの調製試料は,技能試験用試料として使用可能と考えられた.
著者
福井 直樹 高取 聡 北川 陽子 起橋 雅浩 梶村 計志 尾花 裕孝
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.426-433, 2013
被引用文献数
3

農産物を主原料とした加工食品を対象として,迅速な農薬の一斉分析法を検討した.均一化した試料5 gに水5 mLを加えて室温で30分間放置後,アセトニトリル20 mLを加えてホモジナイズ抽出した.塩化ナトリウム1 gおよび無水硫酸マグネシウム4 gを加えて塩析・脱水した.分離した有機層をグラファイトカーボン/PSAカートリッジを用いて精製し,LC-MS/MSで測定した.93農薬について,白菜キムチ,マーマレード,レーズン,梅干しおよびウスターソースで添加回収試験(0.02および0.1 μg/g添加,5試行)を実施した.その結果,すべての食品において平均回収率70~120%(併行精度20%以下)を満たした農薬数は,61農薬であった.本法により市販の加工食品74品目について実態調査を行ったところ,2品目で食品衛生法の一律基準値を超過した.
著者
北川 陽子 起橋 雅浩 高取 聡 岡本 葉 福井 直樹 村田 弘 住本 建夫 尾花 裕孝
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.243-252, 2009
被引用文献数
1 9

GC/MS/MSを用いた加工食品中の残留農薬一斉分析法の検討を行った.試料に添加した農薬を酢酸エチルで抽出し,アセトニトリル/ヘキサン分配により脱脂を行った.さらにグラファイトカーボンブラック/PSA積層カラムにて精製を行い,GC/MS/MSにより測定を行った.258農薬について,5種類の加工食品(餃子,レトルトカレー,フライドポテト,鶏唐揚げ,白身魚フライ)を対象に添加回収試験(添加濃度0.02および0.1 μg/g)を行った.2濃度の添加回収試験において,両濃度で良好な結果(平均回収率70~120%,相対標準偏差 20% 以下)を示した農薬数は258農薬中184農薬であった.GC/MS/MSにおいては,試料由来の妨害成分の影響を受けにくく,低濃度においても精度の高い定量が可能であった.以上のことから,本分析方法は加工食品中の残留農薬を分析するうえで有用な方法であると考えられた.
著者
尾花 裕孝 古田 雅一
出版者
大阪府立公衆衛生研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

食品の放射線照射は、食品の微生物管理や品質保持に効果がある。本研究では、照射時のラジカル反応により脂肪成分が変性して照射特異的に生成する2-アルキルシクロブタノン類(シクロブタノン)を検知指標とする食品照射履歴を化学分析により検知する分析法開発を第一目的とした。加熱溶媒による効率の高い抽出、低温下の脱脂、固相カラム精製を組み合わせた前処理法により、EU公定法ではGC/MS測定までの前処理操作に約2日を要するが、それを7、8時間に短縮することができた。牛肉、豚肉、鶏肉、鮭などにγ線を照射し開発した分析法によりシクロブタノンを分析したところ、すべての試料で、照射線量とシクロブタノン生成の用量一反応関係を確認した。シクロブタノン生成量は試料の脂肪含有量が影響したが、脂肪の多い試料で0.5kGy、少ない試料でも1kGy程度の線量まで検出できる感度であった。加熱加工・調理の影響を検討するために、照射食肉を加工・加熱調理してシクロブタノン分析を行った。その結果一般的な加熱・加工では食品の内部温度は100℃以下でありシクロブタノンは安定であったが、加熱温度を200℃に上げるとシクロブタノンは消失した。従って加熱加工・調理後の照射食肉類の照射履歴も検知可能であることが判った。食肉類の照射は冷凍状態で行われることが多いが、低温時のシクロブタノン生成は室温に比べると少ないことが明らかになり、低温時には元の脂肪酸構成を反映しにくいシクロブタノン生成比率であった。1年の冷凍保存を目安に冷凍保存後も照射の検知ができるかを検討したところ、生肉類ではシクロブタノンは若干減少したが照射検知には支障はなかった。加工食品では生肉類よりも大きく減少する例もあった。また、室温保存と比較すると、冷凍保存の方がシクロブタノンの安定性は高かった。