著者
高屋敷 真人
出版者
関西外国語大学
雑誌
研究論集 (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.21-41, 2012-09

中上健次(1946-1992)は、自己形成において他者との同一化と自己同一化を廻る自己矛盾を感じ、それが自らの書くという行為の永続化の要因であると感じていた。書くという行為においては相反するものが同時に存在し複雑に絡み合いながら反復し続けることを「無間地獄」と名付け、敢えてそれを志向するために書くのだと宣言した。本稿では、中上健次が考えた、このような終わりのない「永続化する二項対立構造」と宮沢賢治(1896-1933)の「四次元芸術」の創作術、すなわち、唯一の決定稿を持ちえない今ここにしかない決定の連続の中で行う創作行為を比較し、賢治が「第四次元」の時間軸に沿って常に移動変遷していく世界から物事のすべてを眺め自覚的に確立したものと、中上健次が相対するものとは対立の果てに和合するのではなく、反復しながら永遠に終わりを引き伸ばすものであると考えたこととの相似について検討する。
著者
高屋敷 真人
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
no.22, pp.119-133, 2012

関西外国語大学留学生別科の日本語クラスは、七つのレベルに分かれており、一学期15週間、週5コマ(一コマ50分)で行われる会話コースと週3コマの読み書きコースに分かれている。本稿は、筆者が2008年度より日本語会話レベル5(中級後期)の教科書開発プロジェクトを立ち上げ、教材作成と試用を行っている経緯について報告するものである。上記コースでは、学習者ができるだけ自ら教科書の各課で学ぶトピックを選ぶことを可能にし、教師側がそれに基づき「モジュール型教材」として教材を作成していくというアプローチを採用している。コースの立ち上げから3年半の実践を通して得られたこと、学生からのコース評価の結果などを分析し、学習者の自律的な学習を支援するためのコースデザインと「モジュール型教材」を作成する際の留意点やその可能性、また、今後の展望などについて報告する。
著者
高屋敷 真人 宮内 俊慈 Masahito Takayashiki Shunji Miyauchi
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 = Papers in teaching Japanese as a foreign language (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
no.25, pp.55-68, 2015

本研究は、2014 年度の関西外国語大学国際文化研究所(以下IRI)のプロジェクト研究助成を受け、IRI 共同プロジェクトとして認定され、以後、継続して行われているものである。本プロジェクトの主旨は、関西外国語大学留学生別科の日本語会話レベル6(中級後期)の教科書開発プロジェクトとして中級会話用の「モジュール型教材」を作成し2015 年度秋学期(8 月~12 月)と2016 年春学期(1 月~5月)での試用を目指したものである。昨年度は、アンケート調査や授業評価の結果を分析し第一課(ユニット1)と第六課(ユニット6)の本文の改訂を行い、大きな成果を生んだ。