著者
英保 すずな 内藤 裕子 渡嘉敷 恭子
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
no.24, pp.37-48, 2014

本稿ではまず、日本語教育用映像教材をいくつか紹介し、その問題点について論じる。著者らはどのテキストを使っていても利用できる、汎用性が高い映像教材を制作したいと考えた。その第一段階として国内外の日本語教育機関で使用されている初級教科書・補助教材に関しての実態調査とニーズ調査を行った。その結果、多くの現場で映像教材が使用されているにも関わらず、なお他の教材を求める声が高いことがわかった。本稿ではGoogle Driveによるアンケートの作成方法も合わせて紹介する。
著者
倉沢 郁子 Ikuko Kurasawa
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
no.29, pp.57-64, 2019

本稿は、留学生のメンタルヘルスの維持・向上のために、どのような支援ができるかを語学教師の視点から考えるものである。まず本学、関西外国語大学の留学生の受け入れに関する状況と体制を振り返り、留学生に精神的・身体的に何か不調をきたした時の「介入」の考え方、留学生の不適応の特徴、留学生の特殊性を先行研究から概観する。そして語学教師としてどのような支援ができるのか、「つなぐ」役目の理解、エンパワメントとしての環境づくり、そしてポートフォリオの活用について言及した。
著者
渡嘉敷 恭子 kyoko Tokashiki
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 = Papers in Teaching Japanese as a Foreign Language (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.47-60, 2006

多くの日本語教師が文法書やテキストの文法説明に違和感を持った経験があるのではないだろうか。実際に日本語教育の文法説明と日本語の母語話者の認識との間にずれがあることも多い。本稿ではその一例として自動詞使役の被使役者を示す助詞の選択に焦点を当てた。(1) 文法書、テキストでの文法説明について調査してみると、「を」をとるとしか説明していないもの、「を」または「に」をとり、その意味の違いについて説明がないもの、自動詞使役では「を」または「に」をとり、「を」の場合は被使役者の意思に関わらず被使役者がその行為を行い、「に」の場合は被使役者の意思が尊重されて行為が行われるという解釈のものと、大きく分けて三種類の説明があることがわかった。日本語の母語話者を対象に行ったアンケート調査の結果、「に」と「を」の持つ「強制」「許容」のニュアンスの違いについて認識し、使い分けている日本語母語話者は少なく、助詞が重複しないように感覚的に助詞を選択していることがわかった。
著者
宮内 俊慈
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
no.24, pp.49-69, 2014

関西外国語大学留学生別科の中級後期のクラスにおいては、2008年度より本校教員の髙屋敷(2012)により開発されたモジュール型教科書が使われてきた。当教科書は、ドラマを対象としたユニット7を除き全6ユニットから成り立っているが、2014年の夏にユニット1の改訂が行われ、秋学期からその試用が始まった。本稿は、変更されたユニット1を含め、この中級後期の教科書が学生間でどの程度受け入れられており、どのような問題点があるのかを確かめるべく学生にアンケートを実施したので、その結果を報告するものである。
著者
小村 親英 鹿浦 佳子
出版者
関西外国語大学
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.91-104, 2015-03-30

日本語初級の教科書には、イ形容詞の否定形活用「〜くない」が導入されているものが多い。しかし、日本語母語話者の実際の会話ではその形容詞の否定形活用を使った文はあまり使われず、代わりに対義語が使われるという調査結果がある。関西外国語大学留学生を対象にした調査でも対義語を使う頻度の方が高かった。本稿では、この調査結果に留意し、対義語を使った新しいイ形容詞の指導方法を提案する。
著者
大川 英明
出版者
関西外国語大学
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.21-36, 2012

本稿では日本語の複文における主節と従属節の時の関係について考察し、その関係を規定する要素を提案することにより特に中・上級の日本語を担当する教師が理解しておくべき要素を明らかにする。まず、日本語教科書における名詞修飾節と「とき」節における時の関係を日本語教科書がどのように扱っているかを分析し、そこで扱われている時の関係を明らかにする。それに基づいて、そこでは考慮されていない時の関係を指摘し、複文における時の関係の全体像を洗い出す。さらに、具体例を示し、複文における主節と従属節の時の間に実際に許される時の関係は従属節のテンス選択特性、従属節の特性、文の内容、等により決まってくることを主張する。日本語教科書には複文における時の関係の詳細な説明はないので、教師が特に中・上級を担当する場合には生教材に含まれる様々な複文における時の関係を扱う場合にこのような知識は役に立つであろう。
著者
福池 秋水 Akimi Fukuike
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 = Papers in Teaching Japanese as a Foreign Language (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-8, 2018-03-30

本研究は、首都圏方言の特徴の一つである「ラ行の撥音化」について整理するとともに、日本語教科書においてどのように扱われているかを調査したものである。ラ行の撥音化とは、ロを除くラ行音が、主にナ行、ダ行、ジャ行の前で、撥音「ン」に変わる現象である。首都圏方言において広く起きていることが先行研究から確認されている。日本語教材におけるラ行の撥音化の扱いを調査した結果、総合日本語教科書では、初級から中上級までほとんど取り上げられていないことがわかった。また、会話、発音教材ではスクリプトに積極的に取り上げる教材もあるが、体系的な解説が付されているものは少ないことも明らかになった。
著者
福池 秋水 Akimi Fukuike
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 = Papers in Teaching Japanese as a Foreign Language (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-8, 2017

本研究は、首都圏方言の特徴の一つである「ラ行の撥音化」について整理するとともに、日本語教科書においてどのように扱われているかを調査したものである。ラ行の撥音化とは、ロを除くラ行音が、主にナ行、ダ行、ジャ行の前で、撥音「ン」に変わる現象である。首都圏方言において広く起きていることが先行研究から確認されている。日本語教材におけるラ行の撥音化の扱いを調査した結果、総合日本語教科書では、初級から中上級までほとんど取り上げられていないことがわかった。また、会話、発音教材ではスクリプトに積極的に取り上げる教材もあるが、体系的な解説が付されているものは少ないことも明らかになった。
著者
髙屋敷 真人 宮内 俊慈 Masahito Takayashiki Shunji Miyauchi
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
no.26, pp.63-75, 2016

このプロジェクトは、2014年度に関西外国語大学国際文化研究所(以下IRI)のIRI共同プロジェクトとして採択され、以後、プロジェクト研究助成を受けながら継続して行われているものである。本プロジェクトの主旨は、関西外国語大学留学生別科の総合日本語コースのレベル6(中級後期)の教科書開発プロジェクトとして中級後期の会話用「モジュール型教材」を作成することである。開発教材は、2014年度秋学期から試用し、アンケート調査や授業評価の結果を分析し改訂を重ねている。本論は、過去三年間に渡る教材開発と改訂作業の実践報告である。
著者
平田 裕
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 = Papers in Teaching Japanese as a Foreign Language (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.1-28, 2007

本年夏期に関西外国語大学の中級レベル4(で使用している教科書の改訂作業を行った。これを機に、教科書作成の様々なプロセスについて考察を試みた。トピックは、ノウハウの蓄積について、役割分担とプロジェクト管理、学習プロセスにおける教科書の役割、音声教材、中級学習者の課題、教科書のまとめ方について、などである。実際に教科書を作成する機会は多くないかもしれないが、作成ノウハウを考えていくことは、様々な教科書を評価する際に有用な視点になったり、自分のクラス運営をどうするか考える際に役立つこともあるのではないだろうか。
著者
宮内 俊慈 Shunji Miyauchi
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 = Papers in teaching Japanese as a foreign language (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
no.25, pp.25-54, 2015

関西外国語大学留学生別科の中級後期のクラスにおいては、2008 年度より本校教員の髙屋敷(2012)により開発されたモジュール型教科書を使ってきた。当教科書は、ドラマを対象としたユニット7 を除き全6 ユニットから成り立っているが、2014 年の夏にユニット1 の改訂を行い、秋学期のユニット4 まで終了した中間試験の時点で学生の評価アンケートを実施し、前回の紀要にその結果を報告した。2015 年の夏にはユニット6 の改訂を行い、その秋から試用を始めた。本稿は、前年の報告に引き続き、今回変更されたユニット6 を含め、この中級後期の教科書に対する学生間の評価を調査し、どのような問題点やニーズがあるのかを確かめるアンケートを実施したので、結果を報告するものである。
著者
宮内 俊慈 Shunji Miyauchi
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
no.26, pp.41-62, 2016

関西外国語大学留学生別科の中級後期のクラスにおいては、2008年度より本校教員の髙屋敷(2012)により開発されたモジュール型教科書を使ってきた。当教科書は、ドラマを対象としたUnit7を除き全6ユニットから成り立っているが、2014年の夏にUnit1の改訂を行い、秋学期に試用を行い学生の評価を実施した。続く2015年の夏にUnit6の改訂を行い、その秋から試用を始め、この中級後期の教科書に対する学生間の評価を調査し、その結果を前回(25号)の紀要で報告した。さらに、2016年の夏にUnit4の改訂を行い、秋学期に試用し学生への調査を行った。本稿で、その調査結果の詳細の報告をする。
著者
高屋敷 真人
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
no.22, pp.119-133, 2012

関西外国語大学留学生別科の日本語クラスは、七つのレベルに分かれており、一学期15週間、週5コマ(一コマ50分)で行われる会話コースと週3コマの読み書きコースに分かれている。本稿は、筆者が2008年度より日本語会話レベル5(中級後期)の教科書開発プロジェクトを立ち上げ、教材作成と試用を行っている経緯について報告するものである。上記コースでは、学習者ができるだけ自ら教科書の各課で学ぶトピックを選ぶことを可能にし、教師側がそれに基づき「モジュール型教材」として教材を作成していくというアプローチを採用している。コースの立ち上げから3年半の実践を通して得られたこと、学生からのコース評価の結果などを分析し、学習者の自律的な学習を支援するためのコースデザインと「モジュール型教材」を作成する際の留意点やその可能性、また、今後の展望などについて報告する。
著者
田嶋 香織 Kaori Tajima
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 = Papers in Teaching Japanese as a Foreign Language (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.193-205, 2006

日本で生活しているとあらゆる場面でオノマトペ(擬音語、擬態語)表現と出会う。オノマトペ(擬音語、擬態語)表現は、他の語彙とは違い、外から受ける刺激を我々が感じ取った通りに文字にしているかのようで、学ばずとも自然に習得できていると思われがちである。実際にはその用法には様々な法則があり、日本語学習者にとって自然に習得できる語彙群ではない。この感覚の語彙群オノマトペについて考察していく。
著者
高屋敷 真人 宮内 俊慈 Masahito Takayashiki Shunji Miyauchi
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 = Papers in teaching Japanese as a foreign language (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
no.25, pp.55-68, 2015

本研究は、2014 年度の関西外国語大学国際文化研究所(以下IRI)のプロジェクト研究助成を受け、IRI 共同プロジェクトとして認定され、以後、継続して行われているものである。本プロジェクトの主旨は、関西外国語大学留学生別科の日本語会話レベル6(中級後期)の教科書開発プロジェクトとして中級会話用の「モジュール型教材」を作成し2015 年度秋学期(8 月~12 月)と2016 年春学期(1 月~5月)での試用を目指したものである。昨年度は、アンケート調査や授業評価の結果を分析し第一課(ユニット1)と第六課(ユニット6)の本文の改訂を行い、大きな成果を生んだ。
著者
小村 親英
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
no.20, pp.53-66, 2010

第二言語習得の評価法では、何の目的で、どのように、いつ、何を評価するかが重要な要素になってくる。なぜかと言えば、評価によって学習者の学習達成度を調べるということはもちろんのこと、教える内容、教え方、教科書の選択に至るまで全体のコースデザインの上で留意すべき点を明らかにできるからである。第二言語学習者の日本語の口頭会話能力の評価方法では、口答試験やインタビューを用いて会話能力を評価するのが従来からあるやり方である。本稿はそれら評価時現下の会話能力を評価する方法ではなく、学習者の将来の学習可能性に注目するダイナミック・アセスメントを取り上げ、その理論的特徴を考察するとともに、実践するときの問題点を挙げるものである。
著者
平田 裕
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 = Papers in Teaching Japanese as a Foreign Language (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.47-66, 2008

昨年(2007)夏期に関西外国語大学の中級レベル4で使用している教科書の改訂作業を行い、2007年秋学期と2008年春学期の二学期間使用した。本学の日本語プログラムで行われている正規の授業評価にも教材についての質問はあるのだが、さらに詳しく見るために任意のアンケート調査を行い、改訂版の教科書評価の一つとした。このアンケートの結果を見ると、改訂後の教科書はいい評価を得ていると言える。学生からのコメントと実際に使用した教員からのコメントも合わせて、今後の課題を考えてみる。
著者
大川 英明
出版者
関西外国語大学
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.37-70, 2011

本稿では大川(2008)に続き、日本語教師のための日本事情の知識のうち、日本の歴史、経済・財政、法律、政治・行政にかかわる情報を扱う。まず、これらの領域に関する基本的な情報をまとめ、次に日本語の教科書でこれらの情報を扱う例を調査し、分析を加える。社会科学の話題を扱う日本語教科書を分析すると、ここで扱う社会科学的な領域のうち、経済・金融や政治・行政が扱われる場合が多く、また歴史の話題はある程度扱われているが、法律関係の話題は少ないことがわかった。また、扱われている内容を分析すると、一時的な事象をニュース的に扱う内容、包括的・総合的に扱う内容、個別的な問題を扱う内容、啓蒙的内容、専門的内容、等、いくつかのカテゴリーがあることを示した。最後に教科書で扱われている話題の具体例をまとめた。
著者
西郷 英樹
出版者
関西外国語大学
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.89-114, 2011

終助詞「ね」及び「よ」は日本語教育の文法項目として広く認知されているが、その複合体である「よね」の日本語教科書での扱いは不十分で、改善の余地が大いにあると言える。本稿ではまず日本語教科書の中での「よね」の扱いに関する調査結果を報告し、後半で「よね」の意味機能が説明されない現状、言いかえれば、「よね」が文法項目として扱われない現状がどのような理由に起因しているのか思索した。
著者
渡嘉敷 恭子 Kyoko Tokashiki
出版者
関西外国語大学留学生別科
雑誌
関西外国語大学留学生別科日本語教育論集 = Papers in Teaching Japanese as a Foreign Language (ISSN:24324574)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.77-93, 2016

「口頭テスト」はプレースメントの際に行われるレベル分けのための熟達度テスト(proficiency test)とその学生がある期間にどのぐらいレベルアップしたかを測る到達度テスト(achievement test)に大きく分けられる。前者は、ACTFLが開発したOPIに代表される特定のプログラムや使用したテキストに準じていない能力を測る汎用性が高いものである。一方、後者はある特定のクラスまたはプログラムで使用され、主に限られた範囲内の会話力を評価するために使われる。筆者は2017年春学期に総合日本語3のクラスを担当し、中間試験の際に口頭テストを行った。本稿はその口頭テストの実践報告である。