著者
加藤 千恵子 高岡 哲子 鹿野 友恵 小田 明美
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.17-25, 2010-03

本研究では、小学第5学年37名を対象に命の授業を行い、独自に作成した自己概念とジェンダー・アイデンティティに関連した質問紙を用いて、授業の前後における変化と男女別の特徴について調査した。その結果、授業前は「違う性別の方が幸せだ」「不満があると聞いてくれる人がいる」という2項目に性差が見られ、授業後は授業前の項目に加えて「この性別に生まれて良かった」、「将来赤ちゃんが欲しい」、「元気がないと気づいてくれる人がいる」、「私の存在を認めてくれる人がいる」の6項目に増えた。男女別の詳細を見ると、男子は女子に比べ有意に「この性別に生まれて良かった」とする割合が高く、自己の性別に関して肯定的であるという特徴があった。一方、女子は男子に比べ有意に「違う性別の方が幸せだ」、「将来赤ちゃんが欲しい」、「不満があると聞いてくれる人がいる」、「元気がないと気づいてくれる人がいる」、「私の存在を認めてくれる人がいる」とする割合が高く、母性意識の目覚めや周囲のサポートや尊重してくれる存在に気づくという特徴があった。すなわち、性別によって自己の性に関する認識の違いが明確になっていくことが示唆された。
著者
山口 智恵子 吉田 直美 高岡 哲子
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.41, pp.87-95, 2017-03-15

本研究の目的は,わが国の高齢者介護予防プランに関するケアマネジメントの研究動向の明確化と今後の課題を検討することである. 文献抽出は,医学中央雑誌web 版(2006 ~ 2015 年)で,keyword「介護予防ケアマネジメント」と「介護予防プラン」を単独で,「高齢者」「介護予防」「ケアマネジメント」でand 検索を行い原著論文の絞込みをした.分析対象は,得られた文献中19 件であった.文献はマトリックス方式を用いて整理した.この結果,文献の掲載年別では2011 年が最も多く,2006 年の介護保険改正法の全面施行に伴う介護事業効果の見直しに関連した研究などが行われていた.対象者及び協力者は「高齢者」が多く,次いで,「三職種(社会福祉士,介護支援専門員,保健師)」,「地域包括支援センターの職員」が多かった.文献の中心テーマは【実態把握】と【システムの構築】が抽出された. 本研究の結果,短期間に見直し改正が行われる政策動向に伴い,現状の把握を行いながらも,システムの構築をめざす状況が明らかとなった.今後も当事者である高齢者や多職種との調整などの中心的役割を担う看護職者を対象とした実態把握研究と,システムの構築に関わる介入研究が継続的に行われる必要がある.
著者
高岡 哲子 小塀 ゆかり 川端 愛子 片倉 裕子
出版者
北海道文教大学
雑誌
北海道文教大学研究紀要 = Bulletin of Hokkaido Bunkyo University (ISSN:13493841)
巻号頁・発行日
no.43, pp.79-87, 2019-03-20

目的:本研究の目的は,わが国の看護学領域におけるクリッカーに関する文献検討を行い,研究の動向と研究成果を明らかにし,看護教育実践に活用することである.方法:看護学領域におけるARS 機器に関する文献検索を行った結果,合計34 件が抽出され,重複した文献13 件を除外した21 件を対象文献とした.得られた文献をマトリックス方式で整理したのち原著論文のみを抽出して「使用教材」,「研究目的」などの視点で整理した.これらの結果をもとに,今後の課題の視点で検討した.結果:我が国の看護学領域におけるクリッカーに関する文献検討を行った結果,演習や実習においてはPF-NOTE,講義ではクリッカーが主に活用されていた.また,クリッカーやPF-NOTE を使用することで,授業に対して楽しく積極的に参加できること,気づきや動機づけになっていたことなどが報告されていた.考察:看護学における演習で自身の判断に自信が持てず,発言を躊躇する傾向にある者にとって,匿名性と自らの判断を客観視できるPF-NOTE やクリッカーの使用は有効であると考える.また,今後の課題として受講者の段階的な教育方法の工夫と適切な評価方法の検討の必要性が示唆された.
著者
深澤 圭子 高岡 哲子 根本 和加子 千葉 安代
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.63-68, 2010-03

本研究の目的は、終末期ケアを検討するための知見として、高齢者自身が終末期における「生死」に関してどのように考えているかを明らかにすることにある。10例の対象者へ半構成的面接を行い、データを質的に分析した結果7カテゴリーを抽出した。高齢者は〈痛みの回避〉や〈傍にいてほしい〉等《苦痛緩和》を望んでいることがわかった。《死の準備》では〈妻と対話〉〈身辺整理〉や〈遺言〉等を考えていた。《延命は望まない》では〈高度の医療は不要〉等をあげていた。《終の棲家》では、〈できれば自宅〉〈住み慣れた地域〉とする一方、〈病状悪化時病院〉とし、その裏には家族への遠慮もある。《平安なる死》では〈眠るが如き〉や〈自然死〉等を希求していた。《死の恐怖感》では、〈死への恐れ〉を抱き、それを抱く一方、〈死と共に〉生死は表裏一体と考えている。《死後の世界》には〈信じる〉〈肉親に会える〉等、死後の世界を希求していると考えられる。以上のような高齢者の気持ちを汲み取り尊厳・尊重した終末期の《苦痛緩和》ケアが重要であることが示唆された。
著者
高岡 哲子 紺谷 英司 深澤圭子
出版者
名寄市立大学
雑誌
紀要 (ISSN:18817440)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.49-58, 2009-03

本研究の目的は、高齢者の死生観に関する文献検討から、高齢者がどのような死生観を持っているのかを明らかにし、高齢者のみを対象とした死の準備教育を確立させるための基礎資料を得ることである。資料とした文献は、『医学中央雑誌Web(ver.4)(1998年-2008年)』で、「高齢者」と「死生観」の「AND」検索によって抽出した。これによって得られた文献は、160件であった。なお検索は、2008年5月に行った。この結果、高齢者の死の迎え方に関する希望が多岐にわたっていたこと、死を考えることで不安や恐怖と結びつくことがあること、死の準備が必要であることは高齢者にも認識されていることがわかった。しかし、実際に高齢者に対する死の準備教育を体系的に行っているという報告はなく、研究としても見当たらなかった。これらのことから、今後は高齢者の特徴をふまえ、死に対する過度の不安や恐怖から健康障害を起こすことがないような、死の準備教育が行われる必要性が示唆された。