著者
新 弘一 高崎 優 勝沼 英宇 佐藤 勝彦 渋谷 健 佐藤 成實 平山 八彦
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.29, no.11, pp.881-887, 1992-11-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

消炎・鎮痛薬 Alminoprofen アルミノプロフェン (ミナルフェン®錠) の高齢患者 (慢性関節リウマチ患者3例, 変形性脊椎症患者2例, 平均79±5歳) における血中濃度推移を指標とした pharmacokinetics の解析を行い, 若年健常者における調査成績 (Shibuya et al. 1989) との比較検討を行った.その結果, 最高血中濃度 (Cmax) は, 服薬第1日目が16.1±2.5μg/ml, 第3日目が25.2±1.6μg/ml, 第5日目では21.6±2.7μg/mlで, 最高血中濃度到達時間 (Tmax) は約2時間であった. また, 血中濃度曲線下面積 (AUC) は, 第1日目のAUC0-∞は58.5±6.3μg・hr/ml, 第3日目のAUC0-4はそれぞれ58.5±3.1, 58.1±8.5μg・hr/mlで極めて類似しており, 若年健常者のAUCと比較して著しい差異はなかった. 蓄積性に係わる消失相の半減期 (t1/2) は, 投与第1日目が2.45±0.35hr., 第3日目が2.09±0.82hr., 第5日目では2.49±0.63hr. であり, いずれも著しい差異はない. また, 本薬の高齢者における蓄積率は1.16±0.05で, 若年健常者での1.2と比べ差異は認められなかった. さらに, 血漿中の平均滞留時間 (MRT) は第1日目が2.31±0.03hr., 第3日目が2.15±0.09hr., 第5日目では2.15±0.07hr. であり, 分散時間 (VRT) は第1日目が0.95±0.05hr2, 第3日目が0.88±0.09hr2, 第5日目では1.06±0.07hr2であった.これらの pharmacokinetics に関する調査成績から, 本薬の高齢者におけるTmax, t1/2はやや延長するものの, AUCや蓄積率等は成人健常者と比較的類似しており, 高齢患者に連続投与しても若年成人健常者と同様に, 体内蓄積性はないか又は極めて弱いものと考えられた.
著者
岩本 俊彦 赤沢 麻美 阿美 宗伯 清水 武志 馬原 孝彦 高崎 優
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.565-571, 1999-08-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
15
被引用文献数
2 3

暑熱による脱水症が誘因と考えられた高齢者脳梗塞例を通して暑熱, 脱水症と脳梗塞との関係を検討した. 対象は最高気温が連日概ね30度を越えていた2週間に当病院を受診した65歳以上の急性期脳卒中 (高齢猛暑群n=5) である. 対照にはその前後4週間に脳卒中で受診した高齢者の前群 (n=5), 後群 (n=3) を, また65歳未満の若年猛暑群 (n=1), 若年前群 (n=5), 若年後群 (n=2) を各々高齢対照群, 若年群として用い, 臨床所見, 画像所見を後方視的に検討した. 高齢猛暑群は全て脳梗塞で, その頻度は高く, いずれも活動した日の正午までに発症したのが特徴的であった. 1例 (78歳) は橋梗塞例で, 既往に多発性ラクナ梗塞があり, 嚥下障害がみられていた. 2例 (73,89歳) はラクナ梗塞例で, このうち1例は前立腺肥大症による頻尿を恐れて飲水制限をしていた. 他の2例 (76,83歳) は心原塞栓性梗塞例 (1例は再発例) であった. 高齢猛暑群では皮膚緊張度の低下, 舌の乾燥が全例に, BUN/Cr比≧25も透析患者を除く4例中3例に, フィブリノゲン上昇も3例中2例にみられ, 特にBUN/Cr比は若年群より有意に高かった. ヘマトクリット値の上昇はなかったが, 発症時の状況や臨床所見から脱水症が疑われ, 補液したところ, 皮膚緊張度は改善し, 3例の非塞栓性脳梗塞には抗血栓療法を施行して2例は軽快した. 以上より, 猛暑下での過剰発汗が高齢者の脱水症を助長し, 脳梗塞を惹起したものと考えられた. 高齢者は暑熱で脱水症をきたし易く, また脳梗塞が午前中に多かったことから, その予防には起床時の十分な飲水が重要であることが示唆された.