著者
渋谷 健司 Rahman Mizanur 野村 周平 田淵 貴大 山本 依志子 坂元 晴香 齋藤 英子 米岡 大輔 井上 真奈美 永田 知映 西浦 博
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

死亡・障害を含む包括的かつ比較可能な保健アウトカム(Burden of Disease:疾病負荷)の分析は、保健政策立案や研究開発の優先順位決定に必須の情報であるが、我が国では政策への活用は未だ限定的である。本研究は、研究代表者らによるこれまでの日本における全国及び都道府県レベルの疾病負荷に関する研究成果をさらに発展させ、最新の疾病負荷推計を用いて、現在懸案事項となっている主な施策(地域医療構想、医療費、健康格差、医療の質、医師の働き方改革、イノベーション戦略)に直接資する分析を行う。さらに、分析結果をより多くの政策立案者や研究者、一般の方が利用できるように分析データのビジュアル化を推進する。
著者
小柳 愛 渋谷 健司
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

当研究は、Hard to reach populationであるMen who have sex with men(以下MSM)の、出来る限り代表性のあるサンプルを抽出し、HIV有病率とHIV感染に関連するリスク要因を抽出することを目的としている。平成23年度は、Feasibility調査を実施した。サンプル方法として、Venue Day Time Samplingを採用するが、そのための前調査・準備として、(1)対象地域で性的少数者の自助活動グループやMSMのHIV予防啓発活動グループ、他キーパーソンへ研究の説明をし、理解を求める事、(2)MSMの協力者を得て研究計画への助言・実行に参加してもらう事、(3)アンケート内容の吟味、(4)venueのマッピングなどを行った。当研究の必要性を理解するキーパーソンも複数現れ、二人の作業協力者を得ることができた。この協力者によって、アンケート内容の吟味と、venueのマッピングも行われた。沖縄県内に、約40軒のMSM対象の商業施設があり、大部分が那覇市に集中していることが明らかになった。これらは、今後、より多くのMSMの協力者によって吟味・検討される必要がある。本調査は、Venueの経営者に再度アプローチし、丁寧に説明を尽くすことにより実現可能であると思われる。調査は、東京大学医学部の倫理委員会の承認を得た。Palm top computerを用いるアンケート調査については検討の結果、i-Padを用いる事とし、唾液によるHIV抗体検査のためのOraQuickを輸入した。
著者
新 弘一 高崎 優 勝沼 英宇 佐藤 勝彦 渋谷 健 佐藤 成實 平山 八彦
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.29, no.11, pp.881-887, 1992-11-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

消炎・鎮痛薬 Alminoprofen アルミノプロフェン (ミナルフェン®錠) の高齢患者 (慢性関節リウマチ患者3例, 変形性脊椎症患者2例, 平均79±5歳) における血中濃度推移を指標とした pharmacokinetics の解析を行い, 若年健常者における調査成績 (Shibuya et al. 1989) との比較検討を行った.その結果, 最高血中濃度 (Cmax) は, 服薬第1日目が16.1±2.5μg/ml, 第3日目が25.2±1.6μg/ml, 第5日目では21.6±2.7μg/mlで, 最高血中濃度到達時間 (Tmax) は約2時間であった. また, 血中濃度曲線下面積 (AUC) は, 第1日目のAUC0-∞は58.5±6.3μg・hr/ml, 第3日目のAUC0-4はそれぞれ58.5±3.1, 58.1±8.5μg・hr/mlで極めて類似しており, 若年健常者のAUCと比較して著しい差異はなかった. 蓄積性に係わる消失相の半減期 (t1/2) は, 投与第1日目が2.45±0.35hr., 第3日目が2.09±0.82hr., 第5日目では2.49±0.63hr. であり, いずれも著しい差異はない. また, 本薬の高齢者における蓄積率は1.16±0.05で, 若年健常者での1.2と比べ差異は認められなかった. さらに, 血漿中の平均滞留時間 (MRT) は第1日目が2.31±0.03hr., 第3日目が2.15±0.09hr., 第5日目では2.15±0.07hr. であり, 分散時間 (VRT) は第1日目が0.95±0.05hr2, 第3日目が0.88±0.09hr2, 第5日目では1.06±0.07hr2であった.これらの pharmacokinetics に関する調査成績から, 本薬の高齢者におけるTmax, t1/2はやや延長するものの, AUCや蓄積率等は成人健常者と比較的類似しており, 高齢患者に連続投与しても若年成人健常者と同様に, 体内蓄積性はないか又は極めて弱いものと考えられた.
著者
野村 周平 田淵 貴大 橋爪 真弘 大田 えりか 渋谷 健司 坂元 晴香 鈴木 基 齋藤 英子 米岡 大輔 井上 真奈美 宮田 裕章 西浦 博
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、with/postコロナ時代の保健医療政策の課題に対する実証的分析に疾病負荷を活用する我が国で初めての試みである。具体的には、新型コロナウイルス感染症の疾病負荷および関連するリスク要因の寄与割合の推定(将来予測含む)、新型コロナ含む傷病別の疾病負荷の将来シナリオ分析、新型コロナウイルス感染拡大による保健医療ニーズ・保健システムへの影響(健康格差・医療費)の推定を行う。
著者
渋谷 健
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.119-134, 1997-09-20 (Released:2018-02-01)

It has been said there is a mutual understanding between doctors and patients, established through confidence in the doctor-patient relationship. As a result there are usually few medical conflicts on treatment and policies, despite the fact there is no actual formal informed consent. Recently however the position of the patient requires more consideration than previously when providing medical care. No doubt a portion of this increased sensitivity stems from the Nuremberg Principle of 1947 and "The Declaration of Helsinki" adopted in 1964. These credos require physicians to seek peace and give the highest priority to the well-being and happiness of human beings, and certainly their patients. I intend to bring forward in my philosophy of medical ethics issues of QOL (Quality of Life), Medical Ethics, Human Rights and Equality, and renewal. I will discuss the necessity of informed consent and the need to harmonize at a global level many of these issues. Reference will be made to historical considerations in the establishment and preservation of the Japanese view of ethics and philosophy, a comparison of Japanese and Western viewpoints, the purpose of the "Declaration of Helsinki", and these issues as they impact in new drug development during clinical trials.
著者
國井 修 喜多 悦子 渋谷 健司
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.853-859, 2001-10-15

【目的】 1994~97年に3度のエボラ出血熱(以下EHF)流行が発生したガボン共和国において,流行状況とその対策,また背景にあると考えられる文化的要因について検討した。【方法】 1997年1月3度目のEHF流行期間中,米国およびガボンにおいて関係機関を訪問し情報を収集した。また,EHFが流行中のガボンのBooue村において,20歳以上男女計20人に対しEHFに関する知識および意識について,伝統治療士2人に対し患者の治療方法について,それぞれ訪問面接調査を実施した。【結果】 3回の流行はすべてチンパンジーやゴリラとの関連が疑われ,特に第二の流行では12人の死亡例が村の祭りのため死んだチンパンジーの皮を剥いで調理し食していた。スーダンやザイールでEHF流行を悪化させた要因である病院での汚染注射針の利用は早期に予防されていたが,家庭内における家族の患者との濃厚な接触,葬式における遺体への抱擁などの伝統的風習が本流行での重要な伝播要因となっていたと考えられる。 訪問面接調査の結果は,流行地の村でありながら3割以上はその疾病の名前さえ知らず,知っていてもそれがどのような病気でどのように伝播するかを回答できない者が多かった。住民の伝統治療士に対する信頼度は高いが,患者の両腕にナイフで傷をつけ血液を皮膚に擦りつけるなどの伝統的治療が感染伝播に寄与していることも推測された。【結論】 EHF流行の背景には文化的要因が強く関連している可能性が示唆された。今後国際的な感染症対策において,人類学・社会学など保健医療以外の分野との協力体制が重要になってくると思われる。【Objective】The Republic of Gabon experienced epidemics of Ebola hemorrhagic fever (EHF) three times between 1994 and 1997. This study aimed at exploring cultural factors related to the outbreaks.【Methods】We collected information about EHF epidemics from the Gabon Ministry of Health, district hospitals and other facilities and conducted in-depth interviews with 20 villagers and 2 traditional healers in the village where the third epidemic occurred.【Results】All three epidemics were supposed to have direct or indirect relationship with great apes, the victims having cooked or eaten chimpanzees meat. Although the reuse of syringes and needles in hospitals which had worsened past EHF outbreaks in Sudan and Zaire did not contribute to the outbreak in Gabon, traditional practices as family members remaining close to the patient to nurse him/her, and hugging and touching the dead at funerals were suspected to be crucial sources of infection. Interviews with traditional healers revealed that traditional treatment methods as cutting a patient' skin with an unsterilized knife and appkling blood to the skin were risky and might have been contributory factors in the deaths of one traditionals healer and his assistant in the thir EHF outbreak. In one village where EHF had reached epidemic proportions, in-depth interviews were conducted with 2 traditional healers and 20 persons of mean age 33 (20~46) years with a sampling method of selecting every tenth household form the entrance. Even though they lived in a village suffering an EHF outbreak, only two thirds of them knew the name of the disease and about half of them could not explain what kind of thought it had been due to evil spirits; others responded the mosquitoes or patient's sweat/saliva were the cause.【Conclusions】This study showed that cultural factors might be very crucial to EHF outbreaks in developing counties. Quick intervention with health education is needed to disseminate appropriate knowledge and persuade people that traditional practices could carry a high risk of infection.