著者
高木 伸之 王 道洪
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

冬季雷雲下の風力発電設備において上向きに開始する落雷の前兆現象を3つ確認した。一つは落雷開始の数秒前から数アンペアの電流が流れる前兆電流である。二つ目は落雷前に発生する微弱な発光を伴う放電現象で風車先端から数メートル程度進展して停止する現象である。三つ目は落雷前に風力発電設備周辺での地上電界強度が正または負の極性に偏る現象である。前兆電流については2秒前には落雷の発生を予測できることを確認した。
著者
王 道洪 高木 伸之
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

落雷の最終雷撃過程の観測に特化した高時間分解能・広ダイナミックレンジ・高感度・超ワイドビューを有する超高速光学イメージングシステムを開発した。このシステムをフロリダロケット誘雷実験場に4年間設置し、100個を超す雷撃の最終雷撃過程の観測に成功した。これらの観測データを解析して、最終雷撃過程、とりわけ、帰還雷撃の開始過程を明らかにした。これらの結果に基づき、帰還雷撃のモデルの改良を行った。
著者
河崎 善一郎 牛尾 知雄 森本 健志 高木 伸之 王 道洪 中島 映至 林 修吾 ARTHUR Jim MAY Peter CHRISTIAN Hugh WILLIAMS Earle HOELLER Hartmut
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、オーストラリア・ダーウィン地域において、雷嵐観測網を構築し観測を実施した。稠密と広域観測装置を併用した観測網を展開し、豪気象局とも連携して、雷放電開始位置とその領域に存在する降水粒子の分布が時々刻々得られ、正負両極性の電荷が蓄積される領域の境界付近に放電開始点が多く分布し、更に稠密観測からその放電路が境界を沿うように進展し、やがて落雷に至る様子が再現された。中和電荷量推定も行い、積乱雲が世界で他に例を見ないほど高くまで成長する巨大積乱雲ヘクターにおいて、ヘクターの成長と共に中和される電荷の位置も上昇する現象が確認された。
著者
王 道洪 高木 伸之 渡邉 貞司
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

雷の前兆現象の解明を目的に2005年と2006年の夏季にそれぞれチベット雷について総合観測実験を行った。それらの観測データを解析して、以下の知見が得られた。1.チベット雷雲は夕方から深夜にかけて発生することが殆どである。雷活動は雷雲によって随分異なる。雷が多い雷雲では一分間20回以上の雷放電が観測されており、少ない雷雲では全放電数が数回程度にとどまる。2.2005年度観測できた雷雲の殆どは地上で主たる正極性電界を示したが、2006年度観測できた雷雲の殆どが地上で主たる負極性の電界を示した。前者の場合、雷の9割以上が雲放電であり、落雷の数が極めて少ない。後者の場合、普通の夏季雷雲と同じ、落雷が2〜3割合を示す。普通の雷雲の下部に正極性のポケットチャージがあり、これが落雷を誘発するとされている。正極性電界を示すチベット雷雲の場合、このポケットチャージはむしろ主電荷領域であり、その下に落雷を誘発する逆極性のマイナスポケットチャージがない。これは正極性電界を示すチベット雷雲において落雷があまり発生しない原因と推測している。3.雷の開始場所は明らかに高度が高い層と低い層に分かれており、それぞれの場合、その後の雷放電リーダが異なる特性を示す。雷の開始に関して、負極性リーダが見かけ上最初に伸びるとの説が主流になっているが、今回の研究では始めて正極性リーダのものと負極性リーダのものと両方が存在することを突き止めた。4.雷雲の発達段階によっては落雷の割合が随分異なり、落雷しやすい電荷構造が明らかに存在すると考えられる。
著者
高木 伸之 王 道洪 ウ ティン
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では風力発電での落雷による被害を現状の数分の一に削減するための新たな安価な落雷の予知技術の開発を行った。この落雷による被害低減技術は風車先端からの放電に伴う電波を落雷の30秒前に検知して風車を停止させるという方法である。風車を停止させれば避雷回数を80%以上低減できる。風車先端からの放電に伴う電波を落雷発生の30秒以上前にほぼ100%検知できることを確認した。さらに開発した電波放射源3次元可視化システムを用いて多くの新たな知見を得ている。
著者
河崎 善一郎 山本 賢司 王 道洪 高木 伸之 RCICHRAD Gum HUGH Christi
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本年度の成果は,当該研究遂行のために設計・試作した「VHF波帯広帯域干渉計」が,仕様通りの機能を有する観測機であることを実証できた点である。すなわち雷放電に伴って放射されるVHF/UHF波帯パルスを,高い時・空間分解能で標定することに成功し,俗に「枝分かれ」と呼ばれほぼ同時に並行して進展する放電の様相が可視化できた点であると結論できる。通常放電路の可視化は,VHF/UHF波帯で,狭帯干渉法,時間差法を用いて具体化されてきたが,いずれの方法においても,樹枝状に進展する放電についての可視化は不可能で,本研究申請者等が,世界で初めて実現したといっても過言ではない。その結果,これまで先行する雷撃の放電路と同じ経路を取るものと,数十年来信じられていた多重落雷の後続雷撃が,時として異なる経路をとり,その結果,後続雷撃の落雷地点が,先行する雷撃の落雷地点と,数キロメートルも離れることのあることが明らかとされている。さらに雷放電の開始点についての詳細な理解や,多重落雷を引き起こす雷雲内の電荷構造,雲内放電の進展様相等々,電波観測という利点を生かして,数多くの観測的事実を見出している。一方,超高感度ビデオカメラにより,Red Spritesの観測にも成功し,共同研究者であるニュージーランド・オタゴ大学D.Dowden教授の,低周波電磁波観測結果との照合により,Red Spriteが,雷雲頂部から電離層下部への「放電」現象であるとの結論を得ていることも特筆すべき研究成果となっている。またこのRed Spriteの観測により,その発生が,地域や緯度に依存せず,きわめて一般的な現象であることが明らかとなり,その後北陸や地中海等でその発生が相次いで見出されるきっかけとなっている。なお上記の成果は,全て米国地球物理学会誌及び電気電子学会誌に公表印刷されると共に,「VHF波帯広帯域干渉計」は,特許申請中(出願番号 特願平11-170666)となっている。
著者
王 道洪 渡邉 貞司 高木 伸之 王 道洪
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

石川県内灘町の大型風車を対象に平成17年度から19年度にかけて雷総合観測実験を行った。観測したデータ総合的に解析し、以下の研究成果を得ることができた。1.風車・鉄塔への落雷はトリガー形態別に二つの種類に分け、タイプ別の特徴をいくつか発見した。タイプ別の発生割合はタイプ1が4割、タイプ2は6割となった。鉄塔と比較した場合、風車がタイプ1の雷を発生しやい。この結果から、風車の防雷対策の一つとして、雷雲が風車上空に来たときに風車を停止したほうが良いと分かった。ビデオカメラの映像から落雷の持続時間にはタイプ別で大きな違いが確認でき、タイプ1は平均約452ミリ秒と長いのに対し、タイプ2は299ミリ秒と短かった。また、落雷の進展角度を調べた結果、風車の避雷鉄塔側には防雷効果が確認できた。しかし、3割の雷は風車に落ちているのでまだその効果は十分とは言えない。それぞれのタイプの落雷について別々の対策を取るべきであることも分かった。2.発電施設への落雷直前の地上電界は全て±4.5[kV/m]あったことから、発電施設への雷撃開始条件を地上電界値のしきい値によって設定した結果、±5.0kV/m以下に設定した場合には、発電施設への落雷時、落雷前に必ずしきい値を超えていることが分かった。一方、しきい値を超えた場合において、発電施設へ落雷する確率は、設定値を下げれば減少していくが、±5.0kV/mで90%程度である。雷撃開始条件を地上電界値で設定し、何らかの防雷対策を行う場合、雷撃をなるべく避けつつも、成功率もある程度高くなければならない。よって、雷撃開始条件のしきい値は、±5.0kV/mが一番望ましいと思われる。3.風車に対する落雷電流に、落雷時前数秒前から、数十Aレベルの電流上昇を確認した。このような報告例は現在まで一例もない。一方、20m離れて隣接する避雷鉄塔に対する落雷電流には、このような現象がないことを確認した。