著者
湯浅 直樹 石川 達也 徳岡 健太郎 北川 泰久 高木 繁治
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.422-425, 2008 (Released:2008-06-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1

症例は17歳男性である.1歳1カ月の頃左上下肢麻痺が出現し,某大学病院へ搬送され原因不明の急性小児片麻痺と診断された.麻痺は約2週間で改善し,原因不明のまま以後再発なく経過していた.17歳になり頭部外傷で当院へ搬送された.頭部CT施行したところ,右放線冠~基底核にかけて陳旧性脳梗塞をみとめたため精査をおこなった.その結果,メチレンテトラヒドロ還元酵素(MTHFR)欠損(V/V型)による高ホモシステイン血症と診断された.MTHFR欠損は先天性アミノ酸代謝異常の新生児マススクリーニングで検出されないため,診断が遅れることがあり注意を要する.
著者
篠原 幸人 高木 繁治 小畠 敬太郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.364-371, 1980-12-25 (Released:2010-01-22)
参考文献数
21
被引用文献数
2

非侵襲的脳血流測定法である133Xe吸入法により本邦成人の脳血流の正常値, 脳内部位別差異, 左右差などを測定し, また本法の臨床的応用が可能か否かを検討した.脳内に器質的病変を認めない19歳より92歳迄の右利き日本人成人20例, 男女各10名を対象とし, Novo社製32 channel cerebrographを用い一側脳半球平均および脳内32ヵ所のF1, ISI, FF1, W1を測定した.F1の右半球平均値は74.2±15.5ml/100g brain/min, 左74.3±15.3, ISIは右52.9±9.3, 左52.6±8.8であり, あきらかな左右差はみられなかった.平均脳半球血流の左右差の1.96σ2はF1 6.1, ISI 3.3であるが個々の検出器の左右差の1.96σ2はF1 21.6, ISI 8.7であり, 本法による脳内局所の左右差の検討には慎重を要すると考えた.本法による脳内部位別血流をみると前頭部では平均血流より高値を, 後頭・頭頂・側頭部の一部では低値を推計学的に有意に示し, 閉眼覚醒安静状態においでも脳血流は脳内で不均等分布を呈することが明らかとなった.1.本邦正常右利き成人20例 (平均年齢44歳) の脳血流を示す各種パラメータを133Xe吸入法により検討した。2.脳半球平均血流は脳灰白質血流を主として表わすF1で右半球74.2±15.5ml/100g brain/min, 左半球74.3±15.3, Initial slope index (ISI) で右半球52.9±9.3, 左半球52.6±8.8であり, 左右差はみられない.3.脳内各部位別にみると前頭部では平均血流より高値を, 後頭・頭頂・側頭部の一部では低値を推計学的にも有意に示し, 閉眼覚醒安静状態においても脳血流は均等な分布を呈さない事が明らかとなった.
著者
高木 繁治 小畠 敬太郎 篠原 幸人
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.93-98, 1991-04-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
9
被引用文献数
1

133Xe吸入による非侵襲的脳血流測定法では上気道内に分布する133Xeによるartifact (APA) の影響が大きく, Fourier法はこのAPAの影響を除去できる計算法とされている.正常人および各種神経疾患患者11例から得られた頭部133Xe減衰曲線から従来のObrist法 (VM法) とFourier法で脳血流を計算し比較した.脳半球平均灰白質血流量F1はVM法では69.2±13.2ml/100gbrain/min (mean±S.D.), Fourier法では64.4±13.5であり, この差はFourier法によってAPAが除去されるためと考えられた.しかし前頭部, 側頭部などでは, 副鼻腔等に停滞した133Xeによる, 呼吸気中の133Xe濃度曲線とは異なる形のartifactの影響を受け, その影響はFourier法を単に使用するのみでは除去できないと考えられた.以上よりFourier法においても減衰曲線の形, APAの大きさに注意し, とくにAPAの大きさが30以上の部位からの成績は検討から除外することがのぞましいと考えた.
著者
高木 繁治 篠原 幸人 小畠 敬太郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.434-441, 1984-12-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
34

非侵襲的脳血流測定法である133Xe吸入法と静注法を同一日に12例に施行し,その測定値を比較した.静注法の脳血流値は吸入法にくらべて,F1,ISI共に有意に高値を示し,W1は有意に低値を示した.12例の両側脳半球平均のF1は静注法71.5±10.8ml/100g brain/min(mean±S.D.),吸入法64.3±7.3であった.両法での差異の原因の一つは,動脈血中133Xe濃度を呼気から推定する点にあると考え,動脈血ガス分圧が正常である4例について吸入,静注後の呼気および血中濃度曲線を比較したところ,吸入法では全例に,静注法では3例に両曲線での差異が認められた.以上より,動脈血ガス分圧が正常で,臨床的に肺機能障害の認められない症例においても,動脈血中濃度曲線と呼気中濃度曲線の間には明らかな差が存在し,それが両方法の測定値の差に関与する可能性があると考えた.