著者
篠原 幸人 峰松 一夫 天野 隆弘 大橋 靖雄 mRS信頼性研究グループ
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.6-13, 2007-01-25 (Released:2008-11-14)
参考文献数
17
被引用文献数
6 8 2

脳卒中の概括予後評価尺度として頻用されているmodified Rankin Scale (mRS) の本邦の医療環境下における信頼性を検討した. mRSのグレード判定において参考にすべき点を明示した判定基準書と, それに対応した問診票とをまず, 作成した. 次に9名の神経内科医が問診票に従って脳卒中 (今回は46名の脳梗塞) 患者を診察している様子をビデオに収録した. そのビデオを約8週間の間隔を空けて2回, 評価者 (医師10名, 看護師6名, 理学療法士4名) に呈示し, 判定基準書に従ってmRSを評価させた. その結果, 評価者間一致性の級内相関係数は, 医師0.947, コメディカル0.963と共に良好であった. また, 8週間の間を置いた場合の評価者内再現性は各々0.865, 0.871と良好であった. 以上の結果より, 著者らが作成した判定基準書および問診票を用いたmRS判定は, 評価の質の確保が可能であり, 本邦の医療環境下における臨床研究などに十分使用できるものであることが示された.
著者
篠原 幸人 高木 繁治 小畠 敬太郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.364-371, 1980-12-25 (Released:2010-01-22)
参考文献数
21
被引用文献数
2

非侵襲的脳血流測定法である133Xe吸入法により本邦成人の脳血流の正常値, 脳内部位別差異, 左右差などを測定し, また本法の臨床的応用が可能か否かを検討した.脳内に器質的病変を認めない19歳より92歳迄の右利き日本人成人20例, 男女各10名を対象とし, Novo社製32 channel cerebrographを用い一側脳半球平均および脳内32ヵ所のF1, ISI, FF1, W1を測定した.F1の右半球平均値は74.2±15.5ml/100g brain/min, 左74.3±15.3, ISIは右52.9±9.3, 左52.6±8.8であり, あきらかな左右差はみられなかった.平均脳半球血流の左右差の1.96σ2はF1 6.1, ISI 3.3であるが個々の検出器の左右差の1.96σ2はF1 21.6, ISI 8.7であり, 本法による脳内局所の左右差の検討には慎重を要すると考えた.本法による脳内部位別血流をみると前頭部では平均血流より高値を, 後頭・頭頂・側頭部の一部では低値を推計学的に有意に示し, 閉眼覚醒安静状態においでも脳血流は脳内で不均等分布を呈することが明らかとなった.1.本邦正常右利き成人20例 (平均年齢44歳) の脳血流を示す各種パラメータを133Xe吸入法により検討した。2.脳半球平均血流は脳灰白質血流を主として表わすF1で右半球74.2±15.5ml/100g brain/min, 左半球74.3±15.3, Initial slope index (ISI) で右半球52.9±9.3, 左半球52.6±8.8であり, 左右差はみられない.3.脳内各部位別にみると前頭部では平均血流より高値を, 後頭・頭頂・側頭部の一部では低値を推計学的にも有意に示し, 閉眼覚醒安静状態においても脳血流は均等な分布を呈さない事が明らかとなった.
著者
高木 繁治 小畠 敬太郎 篠原 幸人
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.93-98, 1991-04-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
9
被引用文献数
1

133Xe吸入による非侵襲的脳血流測定法では上気道内に分布する133Xeによるartifact (APA) の影響が大きく, Fourier法はこのAPAの影響を除去できる計算法とされている.正常人および各種神経疾患患者11例から得られた頭部133Xe減衰曲線から従来のObrist法 (VM法) とFourier法で脳血流を計算し比較した.脳半球平均灰白質血流量F1はVM法では69.2±13.2ml/100gbrain/min (mean±S.D.), Fourier法では64.4±13.5であり, この差はFourier法によってAPAが除去されるためと考えられた.しかし前頭部, 側頭部などでは, 副鼻腔等に停滞した133Xeによる, 呼吸気中の133Xe濃度曲線とは異なる形のartifactの影響を受け, その影響はFourier法を単に使用するのみでは除去できないと考えられた.以上よりFourier法においても減衰曲線の形, APAの大きさに注意し, とくにAPAの大きさが30以上の部位からの成績は検討から除外することがのぞましいと考えた.
著者
篠原 幸人
出版者
一般社団法人 日本総合健診医学会
雑誌
総合健診 (ISSN:13470086)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.832-837, 2017 (Released:2018-03-01)

1954年に人間ドックが本邦で初めて産声をあげたのと同様に、脳ドックも1988年に本邦で初めて生まれたものである。脳ドックは、非侵襲的な頭部CTの普及に加えて、MRI、頸部超音波エコーなどの開発により、一般の人間ドック健診の盲点をカバーする部分ドックの一つとして広まりつつある。現在、脳ドック施設数は約600(学会認定施設255)で、更に増加傾向にある。 本講演では脳ドックの標準検査項目を紹介するとともに、演者が関係する山中湖ハイメディックの初期のデータ(対象3,780例、平均年齢55歳、男性2,417例)から、一見健常にみえる受診者に高頻度にみられるMRI・MRAの異常、特に最も多く発見される無症候性脳虚血性病変(いわゆる隠れ脳梗塞と白質病変)に対する各種人間ドック健診の検査成績の関係、また予後調査などについて概説した。 いわゆる隠れ脳梗塞は280例(7.4%)に観察された。また、白質病変は脳室周囲高信号(T2またはFLAIR画像)14.4%、深部皮質下白質高信号18.9%、無症候性脳出血0.1%、未破裂脳動脈瘤は4.2%で認められた。 無症候性脳梗塞発現に有意に関係する因子は、年齢、糖代謝異常、高血圧、性別(男性)などで、無症候の虚血性白質病変もほぼ同様の傾向を示していた。 これらの受診者を平均38か月観察した結果、1.3%に相当する27症例が各種の脳卒中を発症した。特に虚血性脳血管障害発症例の予知因子としては、統計学的には頸動脈狭窄、脳内血管の狭窄、無症候性脳梗塞などの存在とともに、糖代謝異常、高血圧、心房細動、喫煙などの因子が影響すると考えられた。 トータル・ヘルスケアの意味からも、人間ドックと脳ドックのコラボレーションは重要であり、今後は疾患の早期発見・治療のみならず、その発現予防すなわち一次予防にも力を注ぐべきである。
著者
高木 繁治 篠原 幸人 小畠 敬太郎
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.434-441, 1984-12-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
34

非侵襲的脳血流測定法である133Xe吸入法と静注法を同一日に12例に施行し,その測定値を比較した.静注法の脳血流値は吸入法にくらべて,F1,ISI共に有意に高値を示し,W1は有意に低値を示した.12例の両側脳半球平均のF1は静注法71.5±10.8ml/100g brain/min(mean±S.D.),吸入法64.3±7.3であった.両法での差異の原因の一つは,動脈血中133Xe濃度を呼気から推定する点にあると考え,動脈血ガス分圧が正常である4例について吸入,静注後の呼気および血中濃度曲線を比較したところ,吸入法では全例に,静注法では3例に両曲線での差異が認められた.以上より,動脈血ガス分圧が正常で,臨床的に肺機能障害の認められない症例においても,動脈血中濃度曲線と呼気中濃度曲線の間には明らかな差が存在し,それが両方法の測定値の差に関与する可能性があると考えた.
著者
端 和夫 児玉 南海雄 福内 靖男 田中 隆一 齋藤 勇 吉峰 俊樹 小林 祥泰 永廣 信治 佐渡島 省三 峰松 一夫 山口 武典 篠原 幸人
出版者
The Japan Stroke Society
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-11, 2010-01-25
被引用文献数
4 7

我が国における脳梗塞rt-PA静注療法の保険適用承認には,承認への要望の段階から日本脳卒中学会の医療向上委員会が緊密に関与してきた.適正使用講習会を実施することを前提として承認された後も,欧米諸国にも前例のない全国的な都道府県レベルでの適正使用講習会を実施し,rt-PA静注療法の実施担当者等を指導してきた.承認後3年間で講習会は189回,受講者は1万人を超え,結果として,約1万5千例の使用例のうち,非適応例への使用頻度は6% 程度に抑えられている.承認と講習会開催の過程と,3年を経過した時点での普及の現状を記載した.