- 著者
-
高木 美嘉
- 出版者
- 待遇コミュニケーション学会
- 雑誌
- 待遇コミュニケーション研究 (ISSN:13488481)
- 巻号頁・発行日
- vol.20, pp.17-33, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
- 参考文献数
- 23
本稿は、現在、広く使用されている「やさしい日本語」の既存のガイドラインの中で、敬語はどのように取り扱われているかを検証した上で、「やさしい日本語」における敬語の取り扱い方の課題を提示するものである。このテーマを取り上げたのは、筆者が授業等で「やさしい日本語」を解説する際、一般書籍や資料の中では、敬語の使用に関して、「使わない」とただ書かれていることが多く、理論的な説明があまりなされていないことに気付いたことが契機になっている。敬語の運用に関する指針についても明確に作成することで、「やさしい日本語」がさらに使いやすいものになることが期待できると考え、現状を調査、整理することにした。調査と考察は次の手順で行った。まず、既存の「やさしい日本語」の中で敬語がどのように扱われているか、現状を整理した。現状を知る資料として、一般に販売されている「やさしい日本語」を解説した一般書籍6冊と行政組織がホームページなどで一般市民に公開している「やさしい日本語」の7つのガイドラインの中から、敬語に関する記述内容を検索、抽出し、整理した。その結果、全体的な傾向として、尊敬語と謙譲語は使わないこと、文末の「です・ます」は欠かさないようにすること、依頼表現は「〜てください」に統一することといった、一定の傾向があることがわかった。最後に、「やさしい日本語」における敬語の扱いについて、「丁寧さの原理(蒲谷2013)」と「敬語の指針(文化審議会答申2007)」などと照らし合わせて考察し、今後の「やさしい日本語」における敬語の使い方の検討課題を提示した。