著者
片野 あずさ 上里 博 内海 大介 大平 葵 粕谷 百合子 苅谷 嘉之 﨑枝 薫 眞鳥 繁隆 平良 清人 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.469-472, 2014
被引用文献数
1

16 歳,男性。生下時より右肩の皮下結節を自覚していた。結節は徐々に増大し,7 歳時には鶏卵大の皮下腫瘤となった。その後も腫瘤は増大を続け,16 歳時に当科を受診した。右肩に手拳大の表面常色,弾性軟,ドーム状に隆起した皮下腫瘤を認めた。下床との可動性は良好で,隆起部中央に瘻孔を有し,瘻孔内より数本の毛髪の突出がみられた。造影 CT 検査では右肩甲骨背側上方に周囲との境界明瞭な,86×44 ×67 mm の増強効果の無い単房性腫瘤であった。摘出された腫瘤は線維性の被膜を有し,その内部には多数の毛髪と粥状物質がみられた。病理組織学的所見では重層扁平上皮に裏打ちされた囊胞状構造を示し,囊腫壁には毛包,脂腺,平滑筋線維が付随し,皮下皮様囊腫と診断した。一般に皮下皮様囊腫は頭頚部,特に眼周囲に好発し,それ以外の部位に発症することは比較的稀である。囊腫の大きさが 5 cm を超える症例は本邦では自験例を含め 7 例のみが報告されているが,頭頚部以外に発症した報告は自験例のみであった。
著者
砂川 文 山口 さやか 宮城 拓也 岡本 有香 山城 充士 山本 雄一 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.336-339, 2018
被引用文献数
1

<p>13 歳,女児。3 カ月前より眉間部に線状の紅斑が出現し,次第に拡大した。臨床症状と病理所見より剣創状強皮症と診断した。ステロイド外用と紫外線療法を開始したが改善せず,ステロイドとメソトレキセート内服併用療法を行い,4 週間後に紅斑が改善し,2 年後には略治した。治療中,明らかな副作用はなかった。本邦において,剣創状強皮症に対するステロイドとメソトレキセート併用療法の報告例は少ないが,有効かつ比較的安全であり,治療選択の一つとして考慮すべきであると考えた。</p>
著者
屋宜 宣武 山口 さやか 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.552-557, 2017

<p>83 歳,女性。1 カ月前より外陰部の疼痛があり近医を受診した。悪性腫瘍を疑われ当科を紹介され受診した。初診時は外陰部全体に疣状局面があり,経過中に腋窩や口唇のびらん,舌の肥厚が出現した。病理検査では肥厚した表皮内に水疱が形成され,水疱内には好酸球が多数みられた。蛍光抗体直接法では表皮細胞間に IgG が沈着していた。血清抗デスモグレイン 1,3 抗体がいずれも陽性だった。臨床所見と病理所見,血清学的所見を併せて,本症例を増殖性天疱瘡と診断した。ステロイド内服のみでは皮疹のコントロールができず,免疫グロブリン大量静注療法を併用することで症状は劇的に改善した。</p>
著者
山口 さやか 高橋 健造
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.127, no.10, pp.2305-2311, 2017

<p>日本ではアタマジラミ症に対する治療薬として,ピレスロイド系薬剤のフェノトリン0.4%配合の市販薬のみが認可されている.欧米ではこのピレスロイド系薬剤の無効なアタマジラミが蔓延し,沖縄県でも蔓延していることがわかった.本稿では抵抗性の機序や海外のアタマジラミ治療薬,沖縄県内の取り組みや実際的な駆除法を解説する.</p><p>ノーベル賞受賞者の大野智博士が開発したイベルメクチンは,抵抗性アタマジラミにも有効であるが,日本では保険適応がなく使用出来ない.</p>
著者
屋宜 宣武 山口 さやか 佐野 文子 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.260-263, 2017
被引用文献数
2

<p>83 歳の女性,関節リウマチの診断で 20 年前からステロイドを含む免疫抑制剤が投与されていた。頭部に脱毛斑が出現し,近医皮膚科を受診した。頭部の皮疹はステロイド外用で悪化し,右手背にも落屑を伴う紅斑が出現した。頭髪の毛根部,頭部と手背の皮疹部鱗屑の直接鏡検で真菌成分がみられ,ケルスス禿瘡と手白癬と診断した。真菌培養にて <i>Microsporum gypseum</i> が原因菌であると同定した。テルビナフィン125 mg/日の内服を開始したが,瘙痒と疼痛が悪化し,頭部に厚い黄色の痂皮,いわゆる菌甲が生じた。テルビナフィンを 250 mg/日に増量投与したところ,症状は次第に改善し,内服開始から 5 カ月後に治癒した。関節リウマチの治療により免疫抑制状態にあり,通常量のテルビナフィンに治療抵抗性を示し,さらに菌甲を形成したと考えられた。</p>
著者
苅谷 嘉之 﨑枝 薫 眞鳥 繁隆 佐久川 裕行 仲村 郁心 高橋 健造 上里 博 宮城 恒雄
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.246-250, 2017

<p>69歳,女性。当科初診の 2 カ月前から急速に増大する右こめかみ部の紅色結節を自覚した。近医皮膚科を受診し,切除目的で当科に紹介された。当科初診時,結節は 14 × 13 mm で,弾性やや硬の表面が平滑な淡紅色のドーム状を呈していた。ダーモスコピー所見で結節は淡紅色を呈し,黄白色内容物が透見された。また,不整な白色線条や不規則に分岐する血管拡張がみられた。生検による病理組織像で毛母腫と診断したが,腫瘍成分に重層扁平上皮を伴っていた。一般に毛母腫は若年者に好発し,正常皮膚に覆われ硬く触れる皮内あるいは皮下結節が多いが,表面に突出する腫瘤など多彩な臨床像を呈することもある。 本稿では高齢者に生じた毛母腫の症例を集計し,また非典型的症例ではダーモスコピー所見が毛母腫の診断に有用である可能性が示唆されたので報告した。</p>
著者
高橋 健造
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本研究は、難治性の皮膚角化症であるダリエー病、ヘイリー・ヘイリー病に対する外用治療薬の開発を目標とする。ダリエー病およびヘイリー・ヘイリー病は、各々SERCA2遺伝子、SPCA1遺伝子の変異による比較的頻度の高い優性遺伝性の角化皮膚疾患であり、醜形・悪臭を伴う皮疹が思春期以降の顔や胸部などの脂漏部位、あるいは腋窩などの問擦部に発症するが、現在の所、有効な治療法が存在しない。両遺伝子より転写される小胞体、ゴルジ体のカルシウムポンプであるATP2A2、ATP2C1蛋白の蛋白量が低下し、表皮角化細胞が正常な角化プロセスより逸脱することで発症する。我々は、ハプロ・インサフィシエンシーと呼ばれるこの発症メカニズより、SERCA2あるいばSPCA1遺伝子の転写を亢進し、患者皮膚でのポンプ蛋白の発現量を変異体・正常蛋白ともに増加させることで、皮膚症状を改善しうると考えた。そこで培養ヒト表皮角化細胞を用い、SERCA2・SPCA1遺伝子の発現を増強させる薬剤を、脂溶性薬剤ライブラリーをスクリーニングすることで網羅的に探索した結果、カンナビノイドとバニロイドと呼ばれる作動薬の1群が、ヒト皮膚でのATP2A2蛋白の発現を亢進することを発見し特許を申請した。ln Vitroの解析結果より発見した各作動薬群の薬剤を今後、モデル動物を用いたEx Vivoの実験を通して、より効果的で安全性の高い薬剤を検討することで探索するとともに、近い将来の臨床治験などへ向けたより効果的な薬剤の選定を進めている。さらにヘイリー・ヘイリー病の治療薬となるべき薬剤のスクリーニングも継続している。