著者
高田 肇 杉本 直子
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.91-99, 1994-05-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
16
被引用文献数
5 4

キョウチクトウアブラムシの京都における生活環およびその天敵昆虫群構成を明らかにするため,京都市内2か所のキョウチクトウで1990年から3年間サンプリングおよび発生状況調査をおこない,次の結果を得た。1) キョウチクトウアブラムシは,京都において不完全生活環を全うできる。有翅虫は5月上旬に分散をはじめ,その後6月上旬,8月上旬,9月にそれぞれ発生のピークがみられた。秋にキョウチクトウが剪定され,新梢が伸長した場合にはその個体群は冬期にも高密度で推移したが,新梢が伸長しない場合には低密度で推移し,死滅することもあった。2月から3月の厳寒期には,胎生雌は増殖を停止し,その体色は鮮やかな黄色から乳濁色に変化した。越冬虫は3月末から増殖を再開し,4月末に最初の有翅虫が出現した。2) 本種の天敵昆虫として,次の15種を確認した。テントウムシ3種,ヒラタアブ4種,アブラコバエ1種,クサカゲロウ3種,ヒメカゲロウ1種,アブラバチ2種,ツヤコバチ1種。5月下旬から9月中旬までは,ダンダラテントウ(幼虫・成虫)の個体数が最も多く,その捕食が,アブラムシ個体群に対する重要な抑制要因であると考えられた。9月下旬以降はヒラタアブ(幼虫)や捕食寄生バチ類が活動したが,アブラムシの発生量を低下させることはできなかった。キョウチクトウアブラムシの毒性が,その天敵昆虫に及ぼす影響について考察した。
著者
杉浦 清彦 高田 肇
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.7-14, 1998-02-25
参考文献数
25
被引用文献数
1 23

ダンダラテントウ(以下ダンダラと略記)の被食者としての適性を,ワタアブラムシ,マメアブラムシ,モモアカアブラムシ,ムギヒゲナガアブラムシ,ジャガイモヒゲナガアブラムシ,ヘクソカズラヒゲナガアブラムシおよびエンドウヒゲナガアブラムシの7種について,15L-9D, 18&deg;Cにおける産卵から羽化までの発育期間と生存率,蛹重,産卵前期間ならびに羽化後10日間の産卵数を指標として検討した.比較対象としてナミテントウ(以下ナミと略記)を用いた.<br>ヘクソカズラヒゲナガアブラムシでは,ダンダラ,ナミともに,供試したすべての個体が1齢幼虫期に死亡した.ダンダラについては,発育期間はマメアブラムシ(18.0日)で最も短く,モモアカアブラムシ(18.7日)を除く他の4種アブラムシ(20.1&sim;20.9日)との差は有意であった.生存率は6種(70.3&sim;91.3%)間に有意差はなかった.雌の蛹重はモモアカアブラムシとジャガイモヒゲナガアブラムシ(18.4&sim;18.5mg)において,エンドウヒゲナガアブラムシ(16.0mg)あるいはムギヒゲナガアブラムシ(15.2mg)より有意に重かった.雄の蛹重は6種(12.2&sim;15.6mg)間に有意差はなかった.産卵前期間はマメアブラムシ,ジャガイモヒゲナガアブラムシ,ムギヒゲナガアブラムシおよびモモアカアブラムシ(7.3&sim;8.0日)において,ワタアブラムシ(11.6日)より有意に短かった.産卵数はマメアブラムシ(172.5個)において,ワタアブラムシ(98.8個)より有意に多かった.<br>これらの結果を総合的に判断して,ダンダラの被食者としての適性は,ヘクソカズラヒゲナガアブラムシを除く6種については,マメアブラムシとモモアカアブラムシで最も高く,ジャガイモヒゲナガアブラムシ,ムギヒゲナガアブラムシ,エンドウヒゲナガアブラムシがこれらに次ぎ,ワタアブラムシで最も低いと評価した.各指標(発育期間と産卵前期間は発育率に換算)について,最大値を1としたときの相対値平均は最高のマメアブラムシで0.97,最低のワタアブラムシで0.78であるので,6種アブラムシ間の被食者としての適性の差異は比較的小さいと考えられる.ナミについても,被食者としての適性はマメアブラムシとモモアカアブラムシで高く,ワタアブラムシで比較的低いと評価でき,ダンダラと顕著な差異は認められなかった.
著者
高田 肇
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.71-76, 1991-02-25 (Released:2009-02-12)
参考文献数
6
被引用文献数
2 3

ヌルデシロアブラムシの虫えいの発育と有翅虫の虫えいからの脱出について,京都の山地および圃場のヌルデで調査し,次の結果を得た。1) 虫えいは5月中旬から6月上旬に形成され,10月中旬から11月初めに裂開した。3個の虫えいについて,最大長・幅・高を定期的に測定した。その値から求めた「表面積指数」は,虫えい形成後9月初めまで指数的に上昇し,その後増加率はやや低下したが,9月末まで上昇をつづけた。10月にはいると発育は停止した。幹母(虫えい内第一世代)は6月下旬に,第二世代無翅胎生雌は7月末にそれぞれ産子を開始し,最終世代の有翅胎生雌は9月中旬に3齢幼虫になった。8月中に少なくとも1世代は経過すると思われるので,虫えい内では4世代を経ると考えられる。2) 10月に調査した15個の虫えいは,最少1,343匹,最多8,438匹の有翅虫を包含していた。観察した2個の虫えいから,有翅虫はそれぞれ11日,13日間にわたって脱出した。脱出は9∼17時に見られた。時間別脱出虫数は調査した6日のうち5日については,12∼13時をピークとする一山型の消長を示した。
著者
佐藤 佳郎 高田 肇 片山 順
出版者
京都府立大学
雑誌
京都府立大学学術報告. 人間環境学・農学 (ISSN:13433954)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.75-86, 1998-12-25

コレマンアブラバチ(Aphidius colemani)とショクガタマバエ(Aphidoletes aphidimyza)が, ワタアブラムシの生物的防除素材として, 1998年4月に農薬登録された。京都府京都乙訓農業改良普及センターは京都市上賀茂のキュウリ栽培ビニルハウス(側面開放型, 網なし)において, これら2種天敵昆虫を1997年5月2日から1週間間隔で計4回放飼して防除試験をおこなった。著者らはワタアブラムシとその天敵昆虫の発生量, 特に捕食寄生バチ類の動態を調査した。ワタアブラムシは5月中旬に1か所(数株)で大発生し, 6月にはそこからハウスのほぼ全域に広がり, 天敵からのエスケープ状態となった。サンプリングしたアブラムシの捕食寄生バチによる寄生率は平均67%(解剖による), コレマンアブラバチは一次捕食寄生バチの81%を占めた。サンプリングした茶褐色丸型マミーから, コレマンアブラバチは13%しか羽化しなかったのに対し, 4科8種にわたる二次捕食寄生バチが39%も羽化した。黄色粘着板トラップにはコレマンアブラバチより在来のアブラバチLipolexis gracilisが18%多く捕獲された。本試験の結果から, 天敵昆虫を有効に利用する方法を考察した。
著者
高田 肇
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

施設作物を加害するアブラムシ類の生物的防除素材として、アブラムシ寄生性ツヤコバチ科の在来寄生バチの利用を検討した。わが国では4種のツヤコバチが、ワタアブラムシとモモアカアブラムシ(以下それぞれワタ、モモアカと略記)に寄生することを確認した。主要種はAphelinus gossypiiとAphelinus sp.B(nr.varipes)である。長日(15L-9D)における雌の平均発育期間は、A.gossypiiでは18℃で21.9日、25℃で12.3日、Aphelinus sp.Bでは18℃で23.3日、25℃で13.7日であった。長日18℃におけるA.gossypiiの平均産卵数は57、寄主体液摂取数は11、長日25℃におけるAphelinus sp.Bの平均産卵数は48、寄主体液摂取数は24であった。A.gossypiiはワタに対する適性は高いが、モモアカに対する適性は低い。Aphelinus sp.Bはワタ、モモアカのいずれに対しても適性が高い。さらに、大量増殖用の寄主として好適なマメにも適性が高い。Aphelinus sp.Bは北海道と京都個体群は長日型の休眠性をもつが、沖縄個体群はもたない。マミ-形成後の休眠幼虫を5℃で4週間保存する場合、生存率は順化処理を行った区(86%)のほうが、行わなかった区(39-63%)より高かった。Aphelinus sp.Bでは、大部分の蛹がマミ-内で頭部をマミ-の後方に、腹面をマミ-の背面に向けていた。成虫の羽化脱出率はマミ-の背面よりも腹面を張り付けたときのほうが高かった。A.gossypiiのLD50は、成虫施用よりマミ-施用のほうがマラソンでは16倍、ピリミカーブでは38倍、フェンバレレートでは6倍大きかった。これら3種殺虫剤の中では、本種に対する影響力はピリミカーブが最も小さいと考えられる。