著者
片岡 園 本城 正憲 高畑 義人 由比 進
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.199-210, 2018 (Released:2018-06-30)
参考文献数
26
被引用文献数
1

ホウレンソウの加熱後の光照射による葉色変化に関する知見を得るため,48品種を用い栽培条件を変え,外観形質および品質成分について調査を行った.伸長性,Brix糖度,総ビタミンC含量について大きな品種間差異があったが,これらの形質と葉色との間には密接な関係は見られなかった.葉色とクロロフィル含量とはすべてではないが複数の栽培条件で有意な正の相関が見られた.品種の葉色は異なる栽培条件においても安定しており,栽培条件による葉色の変動は少なかった.寒締め栽培では秋播きよりも葉色が濃くなったが,クロロフィル含量には有意差がなく,葉は有意に厚くなったため,濃さは葉の厚みによる単位面積当たりのクロロフィル含量の増加と推察された.加熱・光照射後の葉色と生鮮葉の葉色との関係を調査したところ有意な正の相関が見られた.生鮮葉,加熱・光照射下ともに明度および彩度が低く,色相角度が大きい品種を官能で葉色が濃いと評価することが多く,生鮮葉で濃い品種は加熱・光照射下においても濃いと評価された.生鮮時に葉色が濃い品種を選択することで加熱後も良好な葉色を保持することが可能である.寒締めによりBrix糖度,総ビタミンC含量は増加したことから,寒締め栽培により葉色が濃くかつ内容成分が優れるホウレンソウを得ることが可能である.
著者
海妻 矩彦 高畑 義人
出版者
岩手大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

ダイズ種子タンパク質の栄養価向上のためには、タンパク質中の含硫アミノ酸含量を高めることが必要である。そのためにはダイズ種子貯蔵タンパク質の2つの主要成分のうち、7Sグロブリンの生成量を減少させればよく、7Sグロブリンのサブユニット(α',αおよびβ)の欠失をもたらす変異遺伝子を見出す必要がある。このうち、α'サブユニットの欠失遺伝子はダイズの既存品種の中に既に見出されているので、残る2つのサブユニットの欠失遺伝子をガンマ-線照射による突然変異誘発により見出すことを本研究の目的とした。品種ワセスズナリの種子にガンマ-線40KRを照射した後代の種子をSDS電気泳動法で調査したところ、M_4の種子からαおよびβの2つのサブユニットが同時に欠失した突然変異を選抜することに成功した。この変異遺伝子はホモ接合型になると、幼植物段階でクロロシスを起して致死すること、しかしながらヘテロ接合型では生存上異常は生じないので、この変異遺伝子の維持増殖は可能であること、ヘテロ接合型植物に着生する種子には正常:αおよびβサブユニット量半減:両サブユニットの欠失が3:4:1の比で分離していることが明らかにされた。これと同じ時期に品種ワセスズナリにガンマ-線40KRを照射した後代M_3種子の中に、11Sグロブリンの酸性サブユニットタンパク質の一部を成すグル-プIサブユニット(A_1,A_2,A_3)が欠失しているものが誘発されていることを見出した。この変異遺伝子は1遺伝子座の劣性遺伝子として働らき、正常:グル-プIサブユニット半減:同サブユニット欠失が1:2:1の比で分離を生じることが明らかにされた。この変異遺伝子はホモ接合型植物でも生育には何ら異常は示さなかった。